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死んでくれないか

 それから俺は、光井達と一緒に町周辺を何度か冒険していた。

 目的は路銀を稼ぐこと。しばらく滞在していても、この町に他の生徒の姿は見られなかった。それで、別の町を目指すことになったのだ。


 俺がダークブリンガーで敵を撹乱(かくらん)し、他の三人がとどめを刺す。魔物討伐の際は、自然とそのような役割分担ができあがっていた。


「ふっ、やるではないかお前達。わがダークブリンガーを活かした戦い方、見事な連携だと褒めてやろう」


 今日の討伐依頼が終わり、町へと帰る途中。俺は広い心で三人を褒めそやした。


「……いや、正直あんた邪魔なんだけど」


 ……が、赤江は冷ややかに言い放った。


「なっ……!? この俺が邪魔……だと!?」

「うん。下手に突っ込んだらこっちも暗闇に巻き込まれるからさ、タイミング取るの大変なんよ。あの程度の相手なら、普通に攻撃すれば倒せるし」

「馬鹿な……!? 互いに協力しながら戦うのが真の仲間だろう。お前、それでいいのか……!?」

「正論だけど、あんたに言われたきゃない」

「まあ待て、アカネ。ハルタの言うことにも一理あるだろ。いつか強敵が出た時には、ハルタの支援が必要になるかもしれん」

「そうだよ、アカネちゃん。たぶん佐藤君なりに頑張ってるんだから」


 光井と水戸が、赤江をやんわりとたしなめる。

 赤江はこれ見よがしに溜息をつきながら、俺を見た。


「はあ……。せめて、攻撃魔法とかないわけ?」

「貴様は馬鹿か。あれば使うに決まっておろう」

「堂々と言うなよ。……やっぱ、役に立たないわね」

「まだ本領を発揮していないだけだ。暗黒魔道士は大器晩成だからな。レベルが上がれば、いずれ最強になる」

「その自信、どっから来んのよ……。まあ、ハナっから期待してないからいいけどさ。ほんと、あの大人しかった佐藤はどこに行ったんだか……」

「はははっ、でもこのノリにも少しずつ慣れてきたな。最初はどうしたものかと思ったんだが……」


 光井がほがらかに笑った。そんな光井に、水戸と赤江が尊敬の眼差しを向ける。


「光井君は凄いよね。宿屋だと相部屋なのに……」

「それよね。ほんと、よく耐えられるわ」

「は、はは……。まあ、俺とハルタは幼馴染だしな」


 光井は乾いた笑いをもらすのだった。


 そんなこんなで冒険の日々は続いた。

 収穫はあった。三人のおこぼれに預かる形で、俺のレベルも上がっていったのだ。

 そう――この世界にはレベルなるものが存在する。魔物を倒せば倒すほどに経験値が溜まり、レベルが上がるのだ。

 レベルが上がれば、もちろん強くなる。さらには新しい魔法や特技を覚えることもあるのだ。


 そしてある日、俺は新しい魔法を覚えたのだった。


 *


「ふはは、もはや今日の俺は昨日までの俺ではない! 俺は究極の暗黒魔道士となったのだ!」

「究極って、前からずっと史上最強の暗黒魔道士って自称してたじゃん」


 赤江が何か言っているが無視だ。


「ふっ、俺を馬鹿にしていられるのも今のうちだ。俺は究極の魔法、ネクロマンシーを覚えたのだからな」

「ネクロマンシーって何?」

「死体を操り、不死身の兵隊を作り出す魔法だ。どうだ、恐ろしかろう」

「まじかよ……。それヤバい魔法じゃねえか?」

「えっ、ホントにそんなことできるの? 今までみたいな虚仮威(こけおど)しじゃないんだ?」


 光井と赤江がそろっておののいている。


「ふっ、貴様らも暗黒魔法の恐ろしさにようやく気づいたか」

「……ねえ、佐藤君。その死体ってどうやって調達するの?」


 その時、ぽつりと疑問を放ったのは水戸だった。


「…………」

「…………」

「そこに気づくとは……。なかなかやるではないか、水戸静香よ」

「いや、最初に気づこうよ」

「ふむ、しかしどうしたものか……」


 考え込む俺を見て、光井が口を開く。


「死体っていうのは、魔物の死体でもいいのか? それだったら、調達できないこともないが……」

「いや、人間限定だ」

「ダメじゃん。諦めなさい」


 赤江が即座に言い放った。


「なぜだ! 諦めたらそこで試合終了だぞ! 自分を信じて夢を追い続けていれば、夢はいつか必ず叶う!」

「そんな夢、叶えるなアホウ! 常識で考えろ! 誰があんたのために死体を提供すんだ!」

「こればっかりは、さすがに俺も賛同できないな。たとえ相手が悪人でも、殺して調達するってわけにはいかないだろう」

「だね」


 光井と水戸も否定的だった。


「くっ……。お前達も俺を否定するのか」


 頭を抱える俺だったが、


「――いや、待てよ。一つ方法がある」


 そんな俺の元に天啓が舞い降りてきた。

 俺は赤江へと視線をやり、その顔をまっすぐに見つめた。


「なに? どうせロクでもないこと思いついたんでしょ?」

「赤江朱音、死んでくれないか」

「お前が死ね」


 殺意すら感じる赤江の視線を受けて、俺はネクロマンシーを諦めざるを得なかった。

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