親友(とも)に別れを
どちらが長く生きられるか、そんな下らない勝負をした。
傭兵である俺達は、雇い主である主人の気持ち一つで簡単に死ぬ。
作戦が失敗しても、しなくても、死ぬ時は死ぬ。
死ぬことよりも生き抜くことが大変な仕事だというのに、あいつは俺にそんな下らない勝負を持ちかけ、勝ってみせると豪快に笑った。
負けるのが怖いのかと挑発するあいつこそ、本当は自分を含めて知っている人間が死ぬのを怖がっているように見えて、なんでこんな世界にいるんだと呆れと哀れと悲しみに似た何かが心の底に溜まってた。
だから、俺達の一時的な主人が今回の争いで生き残った奴の中から一番腕が立つ奴を自分の護衛を選ぶと聞いた時に、裏切ろうと決めた。
この争いが終われば、世界が変わる。
そんな野良犬みたいな、獣のような本能が告げた。
不思議な事に、大概変化を感じ取った人間の直感は外れない。
なら、最後の最期は大勝負に出ないとつまらないだろう。
こんな人殺しを「親友」と呼ぶような馬鹿こそ、争いがない世界はお似合いだ。
だから、しっかり殺してくれ。
勝負はお前の勝ちで良いからよ。
最後の最期でカミサマなんてのに縋るなんてらしくないと思いながら、今にも泣きそうなあいつの顔を眺めて心臓を差し出した。
「あばよ、相棒。勝負はお前の勝ちだから、俺の所に来たきゃ土産話を山の様に作ってからにしろよ」
そんな言葉を口に出さず、俺はあいつともこの世とも別れを告げた。
ああまったく、いい人生だった。