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冒険者のシリス2

 封印都市エルザ・スィール。

 円形の巨大な壁に囲まれた、私の住んでいる街だ。

 その名の由来は昔話にある。

 かつて国々を荒らしていた魔物の王を勇者たちが倒し、二度と復活しないようにと聖女エルザが封印の魔術を使って魂を四分割した。

 その魂のひとつが、この地に眠っているからだとか。

 前世でも聞いた覚えがあったものの傭兵に関わりがあるはずもなく、今生においても周囲の誰もが気にしていない程度の伝承だった。

 人々に注目されるのは、もっと身近な情報だからね。


 この街には特色のひとつとして、北に広がる大森林と連なる山々がある。

 大自然から恩恵を受けて生きる人間にとって、なくてはならない存在だ。

 まず大部分の食料が、南側の壁を越えた先で栽培されている穀物と野菜、商人が他所の街から仕入れる品を除けば、森の果実や山菜、獣たちを狩った新鮮な肉によって賄われていることからも重要性が理解できるだろう。


 食べ物だけに留まらず、生物にとって重要な水の恵みもあった。

 水源は特定されていないものの、北の奥地より流れる清流は街の中心を横断して南の農地を下って行く。というより川を中心に街ができたと言うべきか。

 ともかく、この綺麗な水が豊富なのと、各所に貯水しているのも相まって、日照りによる被害は過去に一度も報告されていない。

 通常では沸かさなければ飲めない生水を気にせず使えるのもありがたい。街のお年寄りは精霊様のおかげだと感謝していた。

 そのせいか、下水処理に関しては厳しい決まりがあるのも納得できる話だ。


 他にも、火を起こすのに必要な薪は森を伐採して調達している。

 冬場となれば需要も一気に高まるため、広大な森でもなければあっという間に更地になってしまう。

 実際そうなるには、まだ数百年ほどかかりそうなので現状は安心していい。

 むしろ、さっさと森を切り開かないとドンドン生えてしまい、逆に人間の生活圏が脅かされてしまう有様なので木こりのみなさんには頑張って貰いたいね。


 などなど様々な恩恵が得られる大自然だけど、人間に優しいだけではない。

 狩猟対象である獣は人を喰い殺すこともあれば、果実や草花だって毒という名の牙を剥く。深い森は人間を迷わせるし、山道と降り注ぐ雨が体力を削って命を奪うのも日常茶飯事だ。最近は減ったけど。

 そんな中でも、特に脅威とされるのが……『魔獣』の存在である。

 魔力を含んだ結晶『魔石』を体内に持つ獣であり、見た目もさながら怪物のようで飢えた獣よりも獰猛かつ凶暴だ。

 詳しい発生原因は不明ながらも魔石を宿していることから、なんらかの要因で魔力を得た獣が石を生成し、魔獣へ変じるのではと考えられている。

 これだけでは害しかなさそうだけど、魔獣の素材は魔力を帯びているせいか頑丈だったり丈夫だったりで重宝され、よく商人から討伐依頼が出されるのだ。

 山に入ったら襲われたなどという事案も減るので、一石二鳥でもある。

 そして今回の討伐対象、ブレードベアもそんな魔獣のひとつだ。




 街の北側にある大門を通り、木材集積所の横を通り抜けて森へと入る。

 途中で木こりのオヤジさんたちと軽く挨拶を交わすのを忘れない。彼らが危険な伐採をしてくれるおかげで街は成り立っているのだから。

 打算的な話をすれば、森で困った時に助けてくれるのも彼らなので、仲良くしておいて損はないのだ。

 森の入口付近はまだ木々も閑散としており、他の初級冒険者が活動する姿もちらほらと見られる。この辺りなら迷うほどでもないので危険は少ない。

 目的の魔獣たちがナワバリとする地域は奥地にあるので先を急ぐ。

 もちろん、このままでは装備的に無謀なので少し寄り道するけどね。


 三十分ほど歩いて辿り着いたのは、そこそこ広い泉だ。

 木々の開けた場所にひっそりと澄んだ水を湛えており、地理的な事情から人が立ち入ることも少なく、私が気に入っているポイントのひとつだった。

 泉の傍には大きな古木が立っており、遠目では気付けないが近寄ると根元の辺りに子供が入れるくらいの樹洞が口を開いているのがわかる。

 先に少し覗き込んで異常がないかを確認してから、私は手を突っ込んで入れておいた物を引っ張り出した。

 それは一抱えほどの大きな麻袋だ。

 深い森と山々を散策し、どこにいるかも不明瞭な魔獣を数日がかりで討伐するのだから、どこかで野営しなければならない。

 この袋には、必要な道具が揃っているというわけだ。

 ちなみに冒険者ランクが中級に上がる最低条件が、この野営を完璧にこなせる技術を身に着けることだったりする。

 それくらい冒険者と野営は直結していた。


 肝心な私の野営スキルだけど、実は前世の傭兵時代で散々やっているので慣れたものどころか、現在はいい道具が揃っているので楽なものだった。

 特にここだと、川や泉で汲めば水は使い放題だし、食料すら現地調達ができてしまうので、あとは保存の効くパンと塩を少量持ち込めば飲食に関しては十分だ。

 時には肉が恋しくなるけど、そこは我慢しよう。

 道具もある程度は即席で作れなくはないけど時間と手間がかかるので、あらかじめ用意しておく方が楽だ。

 しかし、そうすると必然的に重量もちょっとしたものとなるわけで、持ち歩くのが面倒になった私は森に隠しておくようにしたのである。

 街の大門近くには荷物預かり所、なんて店もあったけど、あそこは手数料を取られるので利用するのは躊躇われた。

 楽と節約できるところは、とことんするのが私の信条だ。


 とはいえ、必ず使用前の確認だけは怠らない。

 自分の命に繋がる物だからね。これだけは面倒などと言っていられない。

 ひとつずつ不備や不足がないか取り出しながら点検していく。

 まず基本として、防寒具は必須だ。

 昼間は日差しが暖かい時期でも、山では夜から朝にかけて冷え込む。

 本当なら毛皮のマントでもあれば冬季でも使えていいんだけど、そんな余裕があれば、もうちょっといい装備を用意している。

 残念ながら厚手の安物マントで代用だ。

 あとは調理用の小鍋と水を入れる革袋、大きめのシート数枚にロープが一本、予備用の小型ナイフが数本に、なにかと便利なシャベル、発火石と乾燥させた小枝と木炭は別々の袋に小分けしている。

 他に、身だしなみを意識して手ぬぐいとクシ、歯ブラシまで用意していた。

 よく冒険者が野生児のような有様で山から下りる姿を晒しているけど、それは年頃の少女たるシリスの精神が許さないのだ。

 できれば水浴びもしたいというのが、この泉がお気に入りの理由でもあった。


 本当ならテントも欲しいところだけど……。

 そこは様々な観点から見て諦めていた。

 獣のみならず魔獣が闊歩する山奥での野営は通常、それらが寄りつかないよう常に火を燃やし続けるものだ。

 暖も取れて一石二鳥なのだが、私の場合はパーティを組んでいないので火の番をする者がいなかった。

 寝てて山をうっかり焼いたけど、ごめんね。では許されないのだ。

 それに明かりは獣を遠ざけるけど、逆に人間を誘い込む。

 道に迷った者ならまだしも、悪意ある者であれば寝込みを襲われかねないし、特に私はこんな見た目なのでなおさらだった。

 そういった事情から、火を起こす時は窪地や大岩の陰を探すし、周囲に黒塗りのシートをロープで張ったり、枝葉を被せたりして光を遮るよう心掛けている。

 就寝時は完全に火を消すと、身を隠すようにマントに包まって木の陰、場合によっては太い枝に登って安全を確保し、常に襲撃を警戒していた。身軽で小さな体ならではの芸当だ。

 テントに関しては物理的に、持ち運ぶのに苦労するのも理由のひとつか。

 最近は軽いのもあるらしいけど値も張るし、やっぱり必要ないかな。


「……よし、ちゃんと揃ってる」


 最後に虫除けの薬が詰められた小壷を確認する。

 中身はすべて無事だったので手早く片付け、口紐を閉じた。

 あまりのんびりしていると誰かが訪れるかもしれない。

 別に泉を発見するだけなら、すでに把握している人もいるだろうし、ひとりが占有していいものでもないから構わない。

 だけど私がいるところを目撃されると、あとから隠した荷物を盗まれる可能性があった。他にいい隠し場所も見つからないので、それは避けたい。

 できれば移動してから中身を点検するべきだったのだが、この泉は見通しが良いこともあって安全面を考慮すれば難しい判断だ。

 もちろん、こうしている間も周辺に誰かが潜んでいないか警戒はして……。


「おっと」


 つい口から出てしまい手で押さえる。

 視線の先に、草むらを激しく揺らしながら掻き分けて来る者がいたからだ。

 それも見覚えがある、ヒゲ男の二人組である。

 やっぱり早く移動するべきだった。


「や、やっと見つけたぜ! おい、こっちだ!」

「おおう! いきなり消えやがって覚悟しろよ!」


 もしかして尾行されてた?

 でも、そんな気配は微塵も感じなかった。

 たぶん今のやり取りから推測するに、気付かれないほど距離を開けて尾行していたのだろう。そのせいで私を見失ったけど当てずっぽうに探し回り、どうにかここまで辿り着いた……ってところか。

 それで見つかる私も運が悪いな!

 ここは逆に、広大な森で私を探し当てた二人を褒めるべきか。


「へへへ、ここならジャマは入らねえぜ」

「さっきはよくもコケにしてくれたなぁ嬢ちゃん」


 ようやく茂みを抜けた二人は、私を前にして凄んでみせた。

 わかってはいたけど目的は報復のようだ。

 こちらは荷物を後ろに放って、すでに準備万端である。


「それで、私をどうするつもりかな?」

「物分かりがいいじゃねえか。まずは持ってるもんを出しな」

「身ぐるみを剥ぐってこと?」

「そうだなぁ、服くらいはカンベンしてやっても……」


 そこで男の相方が舌舐めずりをして口出しする。


「いいや、嬢ちゃんには大人の恐ろしさってのを味わって貰うぜ。服もみんな脱いで素っ裸になって帰るんだな!」

「ガハハハッ! そいつはいい! 名案だぜ!」

「他には?」


 馬鹿笑いしていた二人が、途端に呆けたように静まった。


「他ってなんだよ……」

「うん。他にはなにかしないのかなぁって」

「なにマセたこと言ってやがる! ガキに興味あるかよ!」


 なるほど。この前のあいつよりはマシかな。

 腐りきった生魚が、苦味しかない緑の野菜になったくらいには。


「勘違いしているみたいだから訂正するけど、私がどうされたいって言いたいんじゃなくて、どれくらい罰を与えるべきか検討しているんだよ。……というわけなので、二人にはすっぽんぽんで帰って貰うよ」

「……舐めやがって!」

「このガキィ!」


 頭に血が上ったらしく、山刀と斧と思しき刃物を抜き放つ二人。

 こうなっては果たして裸になる程度で済ませられるのかどうか。


「先に抜いたのはそっちだから、文句は聞かないよ」


 迫る暴漢に応じて私は片手に剣を構え、相手の出方を窺う。

 ほぼ同時、等速で駆ける男共。二人とも右利きみたいだから、右側にいる男は相方がジャマをして思いきり武器を振れないだろう。

 複数相手の戦いでは、相手の手数をいかに減らすかが重要だ。

 まずは左側の男の腕を斬りつけつつ、その大きな体を盾にする。続けて足の腱を断ち切れば、これで残りはひとり。

 一対一なら、負ける気はしない。

 頭の中で迅速に手順を整理し、あとは行動に移すまで。

 と、膝を曲げて中腰になった時だった。


「なっ!?」

「ひぃっ!?」

「っ!」


 まるで地面から生えた白木のように、そいつは現れた。

 ちょうど私と男たちの中間地点。待ち構えていた私は咄嗟に飛び退いたけど、すでに全速力に達していた二人は成す術もなく突撃してしまい……。

 そいつは男たちなど物ともしない背丈でそっと包み込んだ。


「ぎゃああああああぁああぁっぁあぁぁ!!」

「イルジィ!」


 悲鳴はひとつ。どうやら片方は寸前で横っ跳びに回避できたみたいだ。

 だけど、もうひとりは白く、薄く、冷たいそいつに捕らわれていた。


「まさか死霊……?」


 私は思わず、そう呟いていた。

 そして取り込まれた男を見て、あのままでは死ぬだろうけど私が危険を冒してまで救出するべきかと冷徹に判断する。

 答えを出す前に、避けた男がどうにか助け出そうと手を伸ばしかけ……。


「やめろ! 触れればお前も取り込まれる!」


 大声で止めると同時に、私は駆けていた。

 どうせ言っても、あの男は手を出すだろう。顔を見ればわかる。

 あれは戦場で臓腑が飛び出た親友を担いで逃げ出すような、あるいは急所を傷付け血が止まらない戦友の手当てをして必死に励ますような……。

 つまりは助からぬと理解し、なお救おうと足掻く者がする顔である。

 まったく忌々しい。

 どうして最後まで悪者でいられないのか。ただの外道であれば、なにも感情を動かされず見捨てられたというのに。

 だけど、あの顔を見てしまった私は助けるべく駆けてしまっていた。

 ならばもう迷わず、ただ剣を振るうのみ!


「てやああああぁぁぁああぁぁッ!!」


 気合を込めた咆哮をもって、意識を強く保つ。

 精神がやられぬよう全身全霊でなければ、奴は斬れない。

 勢い余って男諸共、なんてならないよう注意して薙ぐように振るう。


「――――ッ、――――ッ!」


 声にならない声、耳障りな音を発しながら白い影とも呼ぶべきそいつは、男を解放すると揺らめきながら後退した。

 素手では厄介な相手だが、鍛えた鉄であれば切り払えるのだ。


「す、すげえ……死霊を斬っちまった……」

「まだ油断するな。完全にやったわけじゃない」


 そう、この死霊とは、すなわち死した人間の残滓。

 強い思念や感情、恨み、憎しみ、恐怖……そういったモノの集合体である。

 この場を退けて追い払うくらいならまだしも、完全に消滅させるには装備も準備も足りなかった。


「おい、イルジ! しっかりしろ!」

「気絶しているだけだから大丈夫」


 死霊に取り憑かれると生者が持つ生命力を吸い取られ、果てには命をも奪われるという。やがて虚ろとなった肉体には死霊が入り込むそうだ。しかし死者が蘇ることなどできるはずもなく、屍人となって現世を彷徨い続けるのだとか。

 実際に目の当たりにしたわけじゃないので眉唾だけど、試したくもないね。

 この男の場合、急速に生命力を奪われたショックで気を失っただけだろう。


「それより、動けるなら引きずってでも逃げて」

「お、おお……だけどよ」


 動きが緩慢である死霊からは、通常であれば容易く逃げられる。

 だが肉体がないため、本来なら迂回するべき藪や木々といった障害など死霊は一切無視して目標まで一直線に向かって進む。

 崖も山道も関係なく、疲れもないとすれば一転して人間は不利となる。負傷者を担いでいるならばなおさらだ。

 それを知っているからこそ躊躇ったんだろうけど……。

 殿として誰かが残るのなら話は別だ。


「私がここで食い止めているから、その間に行って」

「な、嬢ちゃんがか!?」

「足止めくらいなら、なんとかなるし……他にないでしょ」


 あとは気絶した男を見捨てるか、私が二人を見捨てるかくらいだ。


「……なんでだ? なんで、そこまでしてオレたちを……」

「話ならあと!」


 急かすように怒鳴ると、ようやく慌てて相方を背負って走り出した。

 体格通りの膂力があるらしく、軽々と運んでいるのが幸いだ。


「さて……」


 二人が安全な場所へ到達するのに十分……いや、二十分は必要か。

 せめて、その半分は堪え凌がなければ格好が付かないね。

 いざとなれば撤退するけどさ。

 覚悟を決めて、最も近くにいる生者である私に取り憑こうとする死霊と対峙し、もう一本の剣を抜いて構える。


「さあ、かかって来い! ……ってあれ?」


 見間違いだろうか。いや、私の目は正常だ。

 ただ信じたくない光景が映ったので、疑いたくもなる。

 どこに潜んでいたのか、それとも同類に引き寄せられたのか。

 死霊の後方、そこには無数の死霊がぞろぞろと集まっていた。

 十や二十ではない、もっといる。

 奴らの狙いは……紛れもなく私だ。マジか。


 うん、逃げよう。


 恥も外聞もない、大事なのは己の命だ。

 だから決断するのに迷いは微塵もなかったけど、どうやら遅かったらしい。

 すでに背後からも死霊の群れが迫っていたからだ。

 どうせなら私も一緒に逃げるべきだったか。

 この分だと、男たちも逃げ切れるかは怪しいけど……。


 死霊とは、言わば魔力の塊だと聞いた覚えがある。

 魔力がなくなれば形を保てずに霧散してしまう。だから攻撃するなら死霊そのものに効果が見込める聖なる魔法か、魔法の武器が望ましい。

 だけど、どちらも用意できなければ気合を入れて逃げるしかなかった。


 しかし本来なら人間は、死霊に負けないほど強い力を持っているそうだ。

 生きている、それだけで死者とは大きな力差があるのだと。

 だけど精神が弱った人は身を守る力を失ってしまい、死霊たちはそれを狙って恐怖を煽るのだという。

 つまりは心を強く保っていれば、そう簡単に死霊にやられたりはしないのだ。

 前提として、相手が一体の話だが……。


 ――さっきは上手くいった。けど、この数ではいずれ押し負けてしまう。

 ――なら、数が少ない場所を斬り抜ければ?

 ――数秒くらいなら触れられても大丈夫なはず。私の脚なら逃げ切れる。

 ――失敗すれば、屍人のウワサが真実か判明するね。


 ほんの数秒で、決意を固める。

 これ以上は不利になるばかり、行くなら、この瞬間だ!

 腰を沈め、下半身に溜めた力を解放して飛び出そうとし……。


「なっ!?」


 今度こそ私は自分の目がおかしくなったと焦った。

 なにせ、死霊が次から次に消滅していくのだから。

 原因はどこからか降り注ぐ白銀の槍であり、それに命中した死霊は浄化されたように槍もろとも消え去ってしまうのだ。


「……えー」


 先ほどまで決死の覚悟でいたというのに、拍子抜けというか……。

 助かったからいいんだけどね。うん。

 問題は、この槍がなんなのかだ。

 すべて寸分違わず、死霊だけを貫いていることから害はなさそうだけど。

 私は茂みの奥から飛来しているようだと目を凝らす。

 すると暗い緑に囲まれた中で、明らかに自然物ではない白銀色が見えた。

 あれは甲冑か?

 だとすれば、私は何者かに助けられたのだろう。

 そう思って声をかけようとしたのだけど……。


 いつの間にか槍による攻撃は止んでおり、死霊も白銀色の誰かも消えていた。

 わけもわからず佇む私ひとりを残して。

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