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第八話 『出立するG』

いつも読んでくださりありがとうございます!

「……うん、うん。へええ、そうなんだ。……うん。うん、ありがとう、隊長さん。このお話はまた後でね」


 五分ほどして、とりあえず一区切りついたのか、それでもまだ名残惜しそうにハルカが顔を上げた。


「どう? 何か話せた?」


「…………うん」


 ハルカは何かを考えるように少し沈黙した後、こくりとうなずいた。


「どんな事?」


「おにーちゃんの好きな食べ物とか、おにーちゃんの料理のれぱーとりーとか、あとはおにーちゃんの全財産がいくらか、とか。えっと、たしか……」


「うわああああ! そう言うのは言わなくていいから! ……悲しくなってくるから」


 十五歳男子としてはあまりに恥ずかしい所持金額なので、僕は全力でハルカを止める。まあ、着の身着のままで追い出された十五歳男子にしてはそこそこのものだと思うけどね。

 って、そんなことはどうでもよくて、


「コホン、えーっと。とりあえずこれで、ハルカちゃんが虫と話せることがはっきりしたから、僕たちは不思議な力を持った仲間同士ってことになるわけだけれど。ハルカちゃんはどうしてあの男達につかまっていたの? やっぱりその力のため?」


 僕が尋ねるとハルカは首をプルプルと横に振った。


「分からない……です。お父さんとお母さんに命令されて一人で公園に言ったらそこにあの男の人たちがいて……いきなり、殴られたんです。それで、こっちに来いって言われて……」


 その時のことを思いだしたのか、ハルカの顔が歪む。その表情に僕の心がチクリと痛んだが、僕にもきっと関係してくる話だ。可能な限り深く知っておきたい。


「ごめん、嫌なこと思い出させちゃったね。でも、これは大事なことだからもうちょっとだけ頑張ってくれないかな? ハルカちゃんの親はその時何か言ってなかった?」


「ん、たしか……お金がもらえて、くちべらし?……ができて、一石二鳥だって、あの人に感謝しなくちゃ、って言ってた、です。……たぶん」


「あの人っていうのは誰?」


「分からない、です。でもたしか、お父さんたちは『ベネットさん』って言ってた、です」


「ベネット? 外国人……なのか?」


「分からない、です」


 そうってハルカは首を横に振った。

 結局、それ以上のことをハルカから聞き出すことはできなかった。


 残念だが、もう時間もないしこの辺にしておこう。


「ハルカちゃん、そろそろここを離れた方がいいと思うんだ。あの男たちを倒してから結構時間が経ったし、誰かがこの山に探しに来てもおかしくない」


 騒ぎのにおいを嗅ぎつけてあいつらまで来るかもしれないしね。


「そんなわけで僕は街に降りるけど、ハルカちゃんはどうする?」


「あ、えと……」


「行く当てがないんだったら僕についてくる? とりあえず、食べ物は何とかしてあげられると思うから。衣と住は微妙だけどね」


「いいの?」


 不安そうな顔でハルカが見つめてくる。


「乗り掛かった舟っていうのかな? 僕と君には似たところが多いみたいだし、何より、君はみんなと話せるしね」


「うん、ありがとう、おにーちゃん!」


 そう言うとハルカは満面の笑みを浮かべて飛び上がった。


「さて、それじゃあ行こうか」


 持っていく物など何もない。隊長を肩に乗せ、僕たちは手ぶらで小屋を出る。

 この小屋を離れなきゃいけないのは正直辛い。一か月地獄を生き抜いてようやく手に入れた安寧だ。でもまあ、その平穏を壊すことを決断したのも自分なのだから、諦めないとね。


 一度だけ小屋を振り返り、僕は歩き出した。


 追いついてきたハルカが唐突に僕に聞いてきた。


「そう言えば、おにーちゃんって名前はなんていうの?」


「名前か……」


 名前はとうの昔に捨てた、ことにしている。親のことを恨む気にはならないが、こればかりはどうしようもない。あの名前で呼ばれると自分が自分じゃないような気がしてしまったから。


「どうしたの?」


「いや、何でも。そうだね……名前は無いよ。ただの、通りすがりのホームレスさ」


執筆が間に合わない……

ストックが尽きてしまいそうです……

このままでは毎日投稿がっ!

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