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第六話 『包囲するG』

「……ん、んんーっ。あれ? 僕寝ちゃってた?」


 僕は机から体を起こし大きく伸びをした。どうやらいつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。

 そうだ、女の子は?

 ベッドを見ると女の子は僕が寝かせた時と変わらない状態で寝息をたてている。

 ただ――


「あれ? みんな、どうしたの?」


 

 女の子が眠るベッドの上はみんなの黒い背中で埋め尽くされていた。

 まさか、食べようとしている⁉ などという考えが一瞬頭をよぎったが、どうやら女の子に対して敵意は持っていないようだ。むしろ愛情のようなものを感じる。僕はみんなが僕や仲間以外にこんな態度をとってのは見たことがなかった。


 それにしても、百匹以上のゴキブリに囲まれて眠る少女。……実にシュールな絵面だ。

 さすがの僕もちょっと抵抗あるかも。


 なんて少し思ったけれど、僕もこの小屋を見つける前に冷たい廃工場の床とかで寝てた時はみんなに温めてもらってたんだった。僕の場合は体の上にもみんな乗ってたから、客観的に見るとむしろ僕の方がシュールな絵面だったかもね。


「この女の子、一体何なんだろう?」


 僕は安らかな寝顔を浮かべる少女をのぞき込む。みんなの彼女に対する好意的な態度や、男たちに殺されかけていたという事実。

 おそらく彼女には何かがあるのだろうが……どう見ても普通の女の子にしか見えない。少し長めの黒髪はツインテールに結い、服装も一般的な女子小学生といった感じのピンク混じりの服。

 あ、でもよく見たら結構可愛い。普通の範疇から頭一つ抜け出るくらいには可愛いんじゃないかな。まあ僕はそういう趣味じゃないけれどね。


「ん、んぅ……」


 と、そんなことを考えながら女の子の顔をのぞき込んでいると、突然女の子が目を覚ました。

 ぱちりと開かれた女の子の目と僕の目が合う。


「……」

「……」


 あまりに突然だったので、僕は思わず硬直してしまう。そう遠くない距離で見つめ合ったままの二人の間に、気まずい沈黙が流れる。

 女の子にしてみたら気を失って、目が覚めたら近くに男の顔があるという状況だ。これじゃあ僕って間違いなく変質者だね。


「……え、ええっと……初めまして?」

 

 とりあえずこの何とも言えない空気をどうにかしようと僕は精いっぱいの笑顔を浮かべて挨拶してみた。

 すると、女の子はパチクリと瞬きをして、引き攣った笑みを浮かべているであろう僕にニコッと何とも言えない笑みを浮かべ――


「……」


「ちょッ! 待って! 逃げないで! 話を聞いて!」


 女の子は無言で逃走という選択を取った。



――15分後――


「とりあえず……落ち着いた?」


「うん」


 椅子に座った女の子はコップの水を飲み干すと小さく頷いた。


 あの後、狭い小屋の中を縦横無尽に飛び回る女の子を追いかけ、追い詰め、OHANASHIして何とか納得してもらったわけだが、部屋中を全力で跳ねまわったためお互いへとへとになってしまった。



 僕もあんまり体力のある方じゃないしね。


「それじゃあまず――『グウウウウウウゥ』」


 その音は女の子の方から聞こえてきた


「……」


 気まずい沈黙が流れる。


「まず、ご飯食べる?」


 女の子はコクコクとしかし勢いよく頷いたのだった。


読んでくださりありがとうございます!

昨日と今日のPVがおとといまでと比べてとても伸びていました! どうしてなんでしょうか?

私としては嬉しいばかりです。皆さん、ありがとうございます! 


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