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第二十五話 『交渉するG』

「久方ぶりだな」


 部屋のどこかに取り付けられたスピーカーから聞こえてきた声。


「白木、真一……」

 それが数センチのガラス板の向こう側の男の物であると気づくのに二秒とかからなかった。


「僕に何の用? そっちが勝手に放り出しておいて、今更こうやって連れ戻すなんて」


「少し事情が変わってな。お前の力が必要になったのだよ」


 冷たい瞳で見下ろしてくる男を僕は睨み付ける。


「僕の力を死ぬほど憎んでいるあなたが? 僕の力が必要? 一体何の冗談だ?」


「冗談ではない。お前達もすでに知っているのだろう? お前のような忌々しい力を持った連中を保護しようとするフェルグラント騎士団という集団を」


「それって……あのゼクスの」


 脳裏に不敵に微笑む細身の男の姿が浮かぶ。だが実際はあの姿は変装で、金髪であることしか分からない。


 ただ、一つ白木の言葉に引っかかるものがあった。


「あの人が僕たちを、保護……?」


「そうだ。あれは『セクトニアの忌み子』を保護、監視するための組織だからな。捕らえられれば異世界に送還されて一生籠の鳥だろう」


「は? 異世界?」


 唐突に出てきた耳慣れない単語に僕は目をしばたたいた。


「そうか、お前にはまだ話していなかったな。同じ話を立て続けに二回も、というのは面倒だが……まあ、致し方ない」


「二回? 何の話だ?」


「お前の知る必要のないことだ。話を元に戻そうか。フェルディナント騎士団。あれは異世界から来た集団なのだよ」


 そう言って白木は語り出した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「そうしてできたのが、フェルディナント騎士団。と言うわけだ」


 あらましを語りきった白木が口をつぐむと少しの間、二人に沈黙が流れる。


「……異世界、か」


 やがて僕は呟くように言った。


「信じる信じないはお前の勝手だ。ただ、一つ言えるのはフェルディナント騎士団は我々日本政府と敵対していると言うことだ。そして、全面戦争に際して問題の中心にあるお前がこちらにつけば、我々はとても戦いやすくなる」


「一つ聞きたい。あなたはどうして僕を殺さずに引き込もうとするんだ? 殺してしまえば良いものを」


 最初から今まで、ずっとあいつの僕を見る目は殺意で染まっている。それなのに生かそうとするのは僕に利用価値があるから。


「殺したいのはやまやまだが、上からの命令でな。お前の身体を調べたいらしい。あの方達はお前の能力を応用した人間兵器でも作りたいのだろう。魔法もないこの世界でそんなことができるはずがないだろうがな」


 それに、と白木は続けた。


「お前は俺が殺すんだ」


 白木はにこりともせずそう言い放つ。その目には執念を超えた何かがあった。


「それってさ、僕があなた達に協力するメリットがないよね」


「ああ、確かにないな」


「だったら――」


「だが我々につかないデメリットはある」

 そう言って白木は、部屋に取り付けられた機械のボタンの一つを押した。


 すると、僕のいる部屋の右の壁が機械的な音を立てて上に上がっていった。


「君が我々につく理由。これだけあれば十分だろう?」


 登り切った壁の向こう側にいたのは、武装した集団に囲まれた、ハルカの姿だった。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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