第十九話 『すれ違うG』
昨日は投稿できなくてすいませんでした!
「くそ、くそっ!」
人通りの全くない暗い道。僕は立ち止まり、横の塀に拳をたたきつけた。
口から勝手に悪態が飛び出してくる。荒れる心を抑えられない。悔しい。悲しい。腹が立つ。忌々しい。憎い。――殺してやりたい。
家を焼かれ、仲間を殺されて、みんなをけしかけて、何匹も何百匹も犠牲にして、やっとの思いで捕まえたと思った相手は余裕の表情でするりと抜けだし、逆転され、あろうことか見逃された。
「クソッ、クソッ、クッソオオオオオオ!!」
やり場のない怒りを発散させるように僕は叫ぶ。でも、その声は静まりかえった夜の闇に吸い込まれるだけで何の変化ももたらさない。
うねる感情のままにすべてを壊し尽くしてしまいたい衝動に駆られる。
この怒りを爆発させて思うがままに振る舞うことができたならどれほど楽なことだろう。
でも、
――暴走
その単語がかろうじて僕を正気の状態に留めていた。
抑えろ、落ち着け。こんなところで暴走なんてするわけにはいかない!
そんなことになったら……
僕は肩に乗った隊長にチラリと視線を向ける。
隊長はそんな僕の視線に気づいたのか、大丈夫だと言わんばかりに長いヒゲをゆらゆらと揺らした。
そうだ。暴走なんてしたらみんながどうなってしまうかも分からない。ハルカを巻き込むかもしれない。ハルカを、悲しませるかもしれない。
だから、みんなのためにも、ハルカのためにも、そんなことはできない!
そう思うとやっと、僕の心は少しばかりの平静を取り戻すことができた。
塀に手を突いて、足を引きずるようにして、僕は廃工場への帰り道を歩く。
「ねえ、僕ってこの世界にいちゃいけないものなの?」
ぽつりと、独りでに呟きがこぼれ落ちる。
その呟きは多分、僕が生まれてからずっと繰り返し自問し、答えを出すことをためらって、心の奥底に沈めていた疑問。
僕がずっとため込んできた、不安と葛藤と焦燥、そして恐怖を煮詰めてこした、絞りかすのようなものだろう。
「僕は、どうして生まれてきたの?」
消え入りそうな小さな声の、その呟きに、答える者などいるはずもなく。
ただ、月とまばらな街灯の光だけが、僕に重苦しくのしかかってきた。
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眠れない!
私はベッドの中でパチリと目を開けた。
今日はいろいろなことがありすぎたからかも。
とっても疲れているのに、むしろ目は冴えて頭もはっきりとしている。
目をつむってもやっぱり眠れないので、私は起き上がって窓の外を見た。
これでも一応都会の街だから、至る所に明かりがある。そのせいか、あんまり星は見えなかったけれど、三日月が逆になったみたいな月が明るく光っていた。
月を眺めながら、私は思った。静かだなって。
部屋の中で聞こえてくる音は、時計がカチカチと動く音と、私が呼吸する音だけ。
まるで世界の真ん中に私一人しかいないような、そんな気分。今この部屋には私一人しかいなくて――
――あれ?
唐突に、もしくはやっとと言うべきか、私は気がついた。
「おにーちゃん?」
狭い部屋をぐるりと見渡す。ソファーをのぞき込む。でも、そこにいたはずの人物は、どこにもいない。
そこにあるはずの温もりは、すっかり冷たくなっていた。
何で? おにいちゃんは? どこに行ったの? 何をしに? 私をおいて?
たくさんの疑問符が頭の中を駆け巡る。ふと、数時間前に見た、おにーちゃんの怖い顔を思い出した。
なんだかすごく嫌な予感がする。
どうしよう? 探しに行こうかな? それとも待ってた方が良い?
そんなことを考えていた矢先、私のいる部屋の前の廊下で、物音がした。
人の足音がこちらに向かってくるのが聞こえる。
おにーちゃんが帰ってきた? でも、もし違う人だったらどうしよう? 隠れた方が良い?
期待と不安がごちゃ混ぜになって、私はすぐに動けなかった。そして足音は、私のいる部屋の前で止まった。
ドアノブが回る。私はとっさに布団をかぶって寝たふりをした。
扉が開く。私は薄目を開けて、部屋の前に立っている人を見た。
そこには――
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なんだか、とてつもなく虚しい気分になって、僕はハルカの待つ廃工場まで戻ってきた。
今日はいろいろなことが一度に起こりすぎた。きっと疲れていることもあるから、こんな憂鬱な気分なんだろう。ハルカを怖がらせないためにも、戻ったらさっさと寝て、気持ちをリセットしよう。そうしよう。
そう思いながら僕は廊下を歩き、宿直室の前に立つ。
ハルカを起こさないようにゆっくり、静かにノブを回し、ドアを開けた。
そこには――
「ハルカ?」
――誰もいなかった。
読んで下さり、ありがとうございます!
今週は失敗しましたが、できる限り毎週日曜日に投稿したいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします!




