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第十四話 『回想するG 後編』

ハルカちゃんの回想シーン回、ラストです

「じゃあ、私がおにーちゃんに名前をつけてあげる!」


 名前がないのだというおにーちゃんに私はそう言った。

 どんな名前がいいかな?。

 私は十分ぐらいうなりながら考え続け、そして一つの答えを出した。


「決めた! ヒカゲさん!」


「ひ、ヒカゲさん!?」


 おにーちゃんは私の決めた名前を聞いて、驚いた声を上げた。私の天才的な名付けの才能にびっくりしたのかな?


 私は得意になって名前の由来を説明する。


「昔読んだ本でね、陰陽師っていう人たちが、虫さんと一緒に悪い人をやっつけるっていうのがあったの! すっごくかっこよかったから、そこからとったんだよ!」


 オンミョウさんだとなんか変な感じだから、陰陽師の陰と陽のを入れ替えて、ヒカゲさん。我ながらいいセンスだと思う。


「……う、うん。ありがとね」


 おにーちゃん、もとい、ヒカゲさんにも好評のようでなによりだ。少し間が開いたのが気になるけれど。


「どーいたしましてっ! ヒカゲさん!」



 そうこうしている間に私たちは山を下りきり、街へと戻ってきていた。


「さて、これでまた家なし生活に逆戻りしたわけだけど……どこを寝床にしよう」


 人通りがまばらな道を歩きながら、ヒカゲさんがつぶやいた。

 成り行きで山小屋を出てきたわけだし、特に行く当てがあるわけでもないだろう。


「あのっ、私なら――


「――となると、公園でゴキブリ布団ってのは……さすがに無しか」

 

 どこでも大丈夫だから、と言おうとしたらとんでもない独り言が聞こえてきた。

 多分口ぶりからするにヒカゲさんは体験済みなのだろうけれど、ものすごい選択肢がナチュラルに入っているようだ。


「仕方ない。またちょうどいい物件を探すとしますか」


 ヒカゲさんは、人が見ていないことを確認すると私を連れて路地裏へと入った。

 もう一度、誰も見ていないことを確認すると、二百匹くらいのゴキブリを呼び出して言った。


「じゃあみんな、ちょうどいい物件を探してきて」


 どうやらゴキブリさんに頼んで私たちが寝る場所を探してきてもらうらしい。


「ゴキブリさんたち、お願いします!」


 私が声をかけるとゴキブリさんたちは、「頑張ります!」とか「任せとけ!」とかって返事をしてくれた。


 その後、急にヒカゲさんが、


「そのヒカゲさんっていうのやっぱりやめにしない?」


 なんて言い出して口論になったりもした。



 でも、そんなつかの間の平穏はすぐに消えてなくなった。

 近くにいた虫さんが私に話してくれたその一言で。


「山小屋が、燃えてる……」


 少し前まで私たちがいた山小屋が、どうやら誰かに燃やされたらしい。

 それを聞いた時のおにーちゃんの顔を、私はきっと忘れられないだろう。


 おにーちゃんは笑っていた。笑顔を浮かべて、私に話しかけてきた。

 でも私には、その言葉が全く耳に入らなかった。だって……


 そのときのおにーちゃんの笑顔は私を殴るときのお父さんとお母さんの笑顔と同じだったから。


 おとーさんとおかーさんにあの笑顔で殴られても、今はもう全然怖くない。でも、おにーちゃんがあの笑顔を浮かべているのは、とっても、とっても怖かった。


 少ししたら、元のおにーちゃんに戻ってくれたし、おにーちゃんも自分が笑っていたことに驚いて、私を怖がらせたことを謝ってくれたけど、それでもなんだか、おにーちゃんに近づきにくくなってしまった。



 寝る場所を見つけて、温かいご飯を食べたらだいぶよくなったけど。おにーちゃんのご飯はほんとにおいしくて、なんだか安心する。



 今日は本当にいろいろなことがあったなあ。

 私は部屋の天井を見つめながら改めてそう思う。

 近くのソファーではおにーちゃんが寝息を立てている。

 今までつらいことがたくさんあったし、多分これからもたくさんあるんだと思う。でも、まだ知らないことはたくさんあった。知りたいことができた。それに、人から謝られたのは何年ぶりだろう。ありがとうって言ってもらったのは何年ぶりだろう。


 まだ、生きる意味はあるのかもしれないな。そう思いながら私は目を閉じた。


いつも読んで下さりありがとうございます!

ハルカちゃんの回想シーンは今回がラストで、次回からは主人公視点に戻ります!

戦闘シーン上手く書けるか心配ですが頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

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