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第十三話 『回想するG 中編』

生まれて初めてレビュー頂きました!

本当にありがとうございます!

 今、私の目の前にはナイフを振りかざす男の人がいる。

 キラリと光るその切っ先は私の方を向いていて、殺されるってわかっていたけど、私は何もしなかった。

 知りたいことはみんな虫さんから教えてもらった。もう、この世界で知りたいことなんて、何もなかった。


 でも、その人は現れた。


「ちょっと待ってよ、おじさん」


 まだ視界がぼんやりしていて姿ははっきりと見えないけれど、そんなに背は高くない。

 声からして、多分中学生か高校生くらいの男の子だと思う。

 あんまり怖い感じはしないし、おにーちゃんって呼ぼう。

 

「何の用だ? ガキは大人しく家に帰ってろ。殺されたくなかったらな」


 男の人たちがおにーちゃんを脅す。

 でも本当に、何がしたくて出てきたんだろう。私を助けるため?

 でも、あんな声の人が大人の男の人二人を何とかできるわけがない。

 バカな人だなーって私は思った。


 でも、その考えは三十秒後に驚きに変わった。

 

「ガキが一人で俺たちをどうにかできるわけないだろう? ヒーロー気取りは身を亡ぼすんだよ。死ね」


 ナイフを持った男の人がそう言うと、もう一人のおっきな男の人がバカなおにーちゃんに襲いかかった。


 バカなおにーちゃんは何にもしなかった。でも、


 突然、バカなおにーちゃんの目の前、何もなかった場所に真っ黒い渦みたいなのがたくさんできた。

 それだけでも意味が分からないのに、その渦の中から黒くて小さな何かがたくさん出てきた。

 

 驚きではっきりした目でそれをみつめ、その正体に私はもっと驚くことになった。


 黒い渦から出てきた黒い物の正体、それはゴキブリだった。

 

 そこから先は余りにも早かった。

 ゴキブリさんたちはおっきな男の人に群がって覆い尽くし、いつの間にか私のそばによってきて、私にくくりつけられていた紐を噛み千切った。

 ゴキブリさんたちは勢いそのままに私を殺そうとしたナイフの人にも飛びかかり、私はなにが起きているのか全くわからないままに、気づいた時にはおにーちゃんにおんぶされていた。


 その背中はとっても温かくて、私はいつの間にか眠ってしまっていた。


 

 目が覚めたら、私の顔から五センチのところにおにーちゃんの顔があった。

 逃げました。


 そりゃあ逃げたくもなるよ。

 でも結構あっさりと捕まった。おにーちゃんはひょろっとしている割に意外と動けるらしい。

 おにーちゃんは優しかった。

 温かいご飯を食べさせてもらって、お話をした。

 おにーちゃんは敬語じゃなくても良いって言ってくれたけど、お父さんとお母さんの『しつけ』で私は誰と話すときでも敬語になってしまう。あんまり完璧じゃないけど。敬語じゃなくなるのは勢いがついたときだけだ。

 

 おにーちゃんとのお話には助けてもらったときよりもびっくりした。

 おにーちゃんは『虫を呼び出してお願いを聞いてもらう』という不思議な力を持っていた。

 私と似た力を持った人に出会うのは生まれて初めてだった。

 

 その後、おにーちゃんが『隊長』と呼ぶゴキブリさんとお話した。

 隊長さんはとっても頭が良くて、記憶力も良かった。

 普通の虫さんだと、大体二、三週間くらいのことしか覚えていない。だから旅の話とかを聞くのはとても大変なのだ。

 でも、隊長さんはおにーちゃんと出会ってからのことを全部覚えていて、色々なことを教えてくれた。

 おにーちゃんの料理のれぱーとりーとか、全財産がいくらなのかとか、あとは……おにーちゃんの昔の話とか。


 持っている能力のせいで、私と同じような辛い生活をしていたみたいだけど、正直、私の生活なんかよりもよっぽど辛かったんだと思う。

 友達はいても話すことができなかったのだから。

 昔の話はしないことにしよう、そう決めた。


 三十分くらい話したところで、おにーちゃんが立ち上がって言った。


「ハルカちゃん、そろそろここを離れた方がいいと思うんだ。あの男たちを倒してから結構時間が経ったし、誰かがこの山に探しに来てもおかしくない」


「そんなわけで僕は街に降りるけど、ハルカちゃんはどうする?」


 私は返答に困ってしまった。お父さんとお母さんは私が死んだと思っているだろうから帰ってもまた捕まって殺されるだけ。

 かといって友達もいない私には行くあてもない。

 

 だからおにーちゃんが、


「行く当てがないんだったら僕についてくる?」


 って言ってくれた時、私はすぐにその言葉に飛び付いた。

 

 どうせもう、帰るあても行くあてもない。一度は殺されかけて、死ぬつもりでさえいたんだ。

 今更出会って数時間の男の子に付いていったってこれ以上悪いことにはならないだろう、そう思ったのだ。


 手ぶらで山を降りながら私はふと、気になったことをおにーちゃんに聞いた。


「そう言えば、おにーちゃんって名前はなんていうの?」


 おにーちゃんは少し考えてから名前は無いと言った。


「ただの、通りすがりのホームレスさ」


 私には何を思ってそう言ったのか、分からなかった。



 


 



 

いつも読んでくださり、ありがとうございます!

思ったよりも回想が長くて書ききれなかったので、もう一回分けました。


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