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愛のかたち。  作者: 塩ぱぴこ
1/1

出会い。

過去から始まります。




いつからだろう。

私の愛が冷めたのは。


_____________



私と彼、古木悠が付き合ったのは今から五年前、高校3年生の時だった。きっかけは同じ委員会になったというどこにでもあるようなことだ。最初こそ私は彼を毛嫌いしていた。というのも、彼はいわゆる美青年というやつで学年の女子からは絶大的な支持を得ていた

そして彼と同じくらい顔の整った結城という男は性格がかなり悪くて有名だった。そういうこともあり私の中では顔の整った人は性格が悪いというイメージがあったのだ。


けれど、彼は見た目とは裏腹にとても真面目な人だった。任された仕事は丁寧にしっかりこなすし誰かが困っているとその人がどんな奴であろうと手を差し伸べていた。そんな彼を学校の女子が放っておくわけがなかったのだ。


そしてかくいう私も彼に惹かれ始めていた。

けれど私は彼とは話したことがなかった。

私が毛嫌いしていた、というのもあるが

彼の周りには女子が沢山いて近づけなかった。



しかしある日遠くから見ていた私に転機が訪れた。


彼と掃除当番が同じになったのだ。うちの学校の掃除当番は同じ委員会から2人1組で選出される。そして一週間委員会場所の掃除をするのだ。

これをきっかけにたくさん話せるように頑張ろうと昼休みに少しだけリップを塗った。


我ながら控えめすぎると思ったけれど。


放課後、掃除の場所に向かった。掃除場所は図書室という少女漫画の告白シーンで使われることが多々ある場所だった。好きな人と2人きり、しかもそこが告白の名所となればドキドキしない人はいないだろう。


図書室の前まで来て私は深呼吸をした。

高校では珍しい引き戸ではないドアをあけると

本独特の古臭い匂いがした。


図書室はそこまで汚いというわけではなかったがよく見るとところどころにホコリがたまっていた。先生曰くだいぶ前から掃除をしていなかったという。



私が図書室をキョロキョロしながら見ていると優しく、低めな声が聞こえた。


「あ、君が笹原沙織さん?」


それは私よりも先に来ていた例の彼だった。

私は彼よりも先に来ていたくて早めに来たつもりなのに彼はもっと早くここに来ていたらしい。


「あ、うん!えっと、古木くんだよね?」


彼と初めて会話する緊張と自分より早くに彼が来ていたという驚きで声が少し裏返ってしまった。

そして彼のことを知らない人などいないはずなのに質問系で返してしまったことに後悔した。


けれど彼はあまり気にしていない様子で


「ふふ、緊張しなくていいよ。うん、古木悠だよ。今日からよろしくね。」


ふわりと笑った。

初めて見る彼の笑顔で胸がきゅんとしてしまった。

これから一週間彼の顔を見れるのかそう思うだけで心が弾んだ。


「うん、よろしくね!」


彼との自己紹介も終わり私たちは掃除を始めた。本の整理、溜まったホコリの掃除などを終えて窓拭きの準備をしていると彼に声をかけられた。

「笹原さんって俺のこと苦手だったでしょ」

突然彼に話しかけられた事は嬉しかったけれど彼が私の気持ちを知っていたことに驚いた。私の気持ち、というより前の私の気持ちだ。

「た、確かに前は苦手だったけど今はそんなことないよ!」

好き、そう言ってしまいそうな口を抑えて別の言葉に言い換えた。はじめて会話して早々告白だなんてそこらの女子と同じではないか。

「ふーん、ほんとかなぁ?」

彼は意地の悪い笑みを浮かべながら私に近づく。

顔がとても近く男に免疫のない私は顔が熱くなり沸騰してしまいそうだった。

「ほ、ほんとだし!早く掃除しよ!」

私が窓を拭くための雑巾を絞り、立ちあがろうとした。けれど運悪くバケツのそばに少しだけこぼれていた水で足をすべらせてしまった。このまま床に倒れるのかと目をつぶったがいくら待っても衝撃は来ない。そのかわりに私の腰には誰かの腕が回されていた。

「もう、危ないんだから。大丈夫?」

私をしっかりと抱きとめてくれたのは彼だった。

いや、彼と私しかいないのだから当たり前なのだろうけれど。突然のことでパニックになった私にはそんなことを考える余裕もなかった。

想像以上にゴツゴツした腕と人の体温が私の心を熱くさせる。きっと今の私はりんごのように真っ赤になっていそうだ。

「あ、ありがとう!大丈夫!ごめんね!」

目が回ってしまいそうなほど頭がクラクラした。

私は彼から離れて頭を下げる。離れたところが妙に冷たいのは気のせいだろうか。

「あ、うん大丈夫。続きをやろう?」

私は頭を上げて彼の顔を見た。そして私は目を見開いた。そこには私と同じくらい顔を赤くした彼がいたのだ。

「あの、古木くん顔……」

つい口からポロ、と出た言葉はきちんと彼に聞こえたのか彼は更に顔を赤くして手で口元を覆った。

「恥ずかしいからこっち見ないで……」

さきほどまで余裕だった彼とは全くの別人だった。意外と彼はピュアなのかもしれない。

「うん、その、始めようか。」

楽しみにしていた掃除はなんとも言えない空気のまま終わった。

過去編はまだ終わらなさそう……

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