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クリームシチュー  作者: 小鳥遊 刹那
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ただいま

「お母さん!お父さん帰ってきたよ!お帰り、お父さん!」

一年ぶりに自宅マンションの扉を開けると娘の実月が飛び込んできた。

「実月ただいま。元気だったか?」

「うん!超元気!」

実月は俺が覚えてる限りでは小学2年生だったはずだ。とすればもう3年生か。

「長く留守にしてごめんな。」

そう苦笑いすると満面の笑みで平気だよ、と言う実月。二人でたわいもない話をしながらリビングへ向かうとキッチンから椿が顔を出した。

「お帰り、悠真。ずいぶん長いこと寝てたねえ。」

ふわふわと笑う椿は自慢の奥方だ。高校生時代からの付き合いである。そんな二人を一年間も待たせたのかと思うと心苦しい。

「二人とも、一年も待たせてごめんな。待っててくれてありがとう」

いいんだよ、と椿は夕食の準備をしながら言った。

「待つのは当たり前。家族なんだから。ねー、実月。」

実月もそれを聞いて、ねー、お母さん、とニコニコしている。

ああ、こんな幸せがいつまでも続くと良いな、と心の底からその時の俺は思った。

「はい、じゃあお父さんの退院を祝って・・・乾杯!」

その日の献立はクリームシチュー。実月の好物で寒くなると出てくる頻度が高めだ。スプーンですくって口に入れたときだった。

「っ・・・」

激しい頭痛が走った。

何だ、何だこの気分。

何か、何か大切なことを忘れている気がする。二人に伝えなければならない何かが。


「お父さん、大丈夫?お父さん?」

「あ、うん・・・大丈夫。ちょっと待ってね・・・」

妙に何かが引っかかる。何かを思い出せそうで思い出せない。思い出そうとすればするほど出てこない。

気分が悪い。苦しい。


しかしその激痛も一瞬の出来事だった。結果思い出せはしなかったけれど、もう二人に心配はかけたくなかった。

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