5話_旅をしてね★
この世界は酷く不安定である。それでも世界が在り続けるのは一故に皇帝という概念があるからだ。
皇帝がいるから、まだ世界は続く。続いてしまう。だが世界は終わらなければならなかった。
そうゆう定めであった。終焉から今まで決まっていた事だった。
しかし世界は皇帝によって支えられてしまった。
だから、世界は最後の抗いで…英雄を殺そうとした。
どうせ消えるのならば殺されても同じだと、全てを棄ててやってきた。
どうせ居なくなるのなら道連れにしようと、全てを抱えてやってきた。
さてはて、英雄が神になり皇帝が世界になり…代償のように消えた二人の仲間を見て、最後に世界は満足したのだろうか?
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「と、いう事で!君達には旅をして貰うね★」
「「「え"」」」
きました、いきなりの爆弾発言!
副神官長の後ろに黒い星が見えます…!
どうやら皇帝が引き篭もってる神塔にはドアが無く、塔に3つだけある窓からしか出入りができ無いんですと…おっかしーなぁ…ちゃんとドアはつけたはずなんだけど…
窓からロープを垂らして貰えば登れる…らしい。何処の髪の長い塔入り娘やねん!
なので、皇帝を説得する為に他の国の皇帝を連れて来て欲しいんですと。
「何故私達に頼むのですか?皇帝に会いに行くなら適任な人がもっと他にいるでしょうに」
「いや、会いに行って欲しい皇帝様には君達が一番適任だ」
「この世界には7人の皇帝様が居るのだけれど…みな500年間一度も塔からお出でになられない!」
おいっ!お前らもかよぉお!
引き籠もりやん!みんなそろって!皇帝ストライキでも起こしてんの?!
「けれども、獣人国の皇帝様だけは話ができるかもしれない。彼の方はまだ国民の話を聞いておられる。君達の居たチキュウとやらの話を持ち出せば此方の話も御耳に入れて下さるだろう!」
この世界には色々な種族がいる。そしてそれにそって7つの国があるのだ。
ティリベルは獣人や獣の住む獣人国である。ちょうど人間国のお隣さんだ。
「へ?どうして地球の話をすれば話を聞いてくれると?」
「あーそれは…いずれ分かるだろう。しかし、この世界の事が分からないと不便だね」
不便だろう。さっきから副神官長は説明ばかりしている。
そしてこの人…あんまり説明が上手くないな…
「お茶をお持ちいたしました」
「其処に置いておいてくれ。…良い所に来てくれたアーシャ、君は『クルト歴史書』を持ってるか?」
クルト歴史書、作者はクルト・ハーネス。
世界で初めて自動更新される歴史の魔法書を作った人物だ。
クルト自身が生きていたのは大分前になるだろう。クルト歴史書の作成には私も少し手を貸した覚えがある。
歴史書は更新されるたび守り人と呼ばれる管理人達が写し取り、世界中に配布されている。
「ええ勿論。いつも持ち歩いていますよ?教団で最初に支給される本ですから。…副神官長様、まさか無くされたのではないでしょうね?」
「…兎に角、読んであげてくれ。6章と7章のとこだ」
「この世界の基本情報ですか?分かりました。少し長くなりますけども、寝ずに聞いて下さいね?」
いや、もう数人は話に着いて行けずに寝てるぞ。どうりで静かだと思った…