4話_在り得無い事など何も無い
「出てこない…?」
なんとまあ。出てこられない。出てこない!
驚きのあまりつい声に出してしまったよ
出てこられんとかなんとか言ってるけど、それってつまり塔に引き籠もってるって事だよね?皇帝から自宅警備員に進化してるんだよね!?
「そうなんだ…あの悲劇からずっと…一度も」
"あの悲劇"?
残念ながらその悲劇とやらは私の記憶の中には無い。
私が居なくなった後に起こったのだろう。
「何時から塔にひ…塔から出てこないのですか?」
「500年と5年前からだ。あ、今年は5年に一度の"皇帝への貢"の年だね。」
「ごひゃっ!?」
おふ。美馬さんの驚きようも分かるで、ごひゃく…ね
死んでは無いだろうが(精神的に)大丈夫なのだろうか。
「そんなの死んでるじゃないですか!505年も生きられる訳が無いですよ!」
「生きているさ!この国が続いている限りはね」
この国が続いているのは皇帝というものが居るからである。
「でもそんなに生きれるなんて在りえません!」
「いーや。お嬢ちゃん。在り得無い事など何も無い。」
在り得無い事など何も無い。この国の人達が皇帝に抱く想いだ。
そんな事、ある訳が無いのに。
「皇帝様は英雄だ。死ぬ事も老いる事もない。いつの時も同じだ」
「死ぬ事も老いる事も…?」
ただ、死ぬ事も老いる事も無く。永遠に生き続ける。
「ああ、英雄は我らの神だ。皇帝は国そのものだ。英雄がいたから我らには信じるものがある。皇帝が居るから国はこの不安定な世界でも続いている。そうゆうものなのだよ。」
死にたくても、死ねず。精神だけが壊れてゆく。
「そうゆうもの?全くわから無いです!」
「まだ分からなくていい。その方がやり易いだろう」
それでも、彼等はまだ壊れず生きているのだろうか?
「やり易い?」
「そうだね。君達に頼みたい事があるんだよ」
話し合う仲間も、一緒に生きてきた親友達とも会わなくなった…この世界で