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2話_知ってる…神殿だ

さて、そんなクラスメイト達を横目に私は現状確認を進める事にしよう。

このまま私達が落ちていくと、墜落するのはちょうど王宮の庭のど真ん中になりそうだ。

…いやいや、このまま落ちたら確実に死んじまうわ。まさか落ちても死なない落下耐性MAXの奴しか要らないとかなのか…いや、そんなわけ無いだろう。そもそも落下耐性とか何に使うんだ。紐無しバンジージャンプの実験台か?…そういえば昔旅仲間のバカが紐無しバンジージャンプで敵地の拠点に飛び込んでたっけ…

あのバカがやらかしてくれたおかげで私達は三日三晩走り続ける羽目に…っと、話が逸れてしまった。

でもどうやら私達が庭に叩きつけられる事にはならなそうだ。うっすらと見えてきた庭の薔薇園の上に、金の魔術陣が浮かび上がっているのが見える。

魔術陣というのはその名の通り、陣に魔力をこめて描いた効果を表すというものだ。

この魔術陣の効果は色々混じっているが大まかに分けると、「世界を越えた召喚」「指定座標へのテレポート」とそのための莫大なエネルギーを「暴発させ無いための制御魔法」だ。

その魔術陣はもう眼下すぐである。指定座標へのテレポート、ということはつまり___


____ヒュッ!

先を落ちていたクラスメイトの手が魔術陣に触れた瞬間、空を飛んでいたはずの私達は硬い地面に尻餅をついていた。


あー、うん。知ってる神殿だ。この国で一番大きい、見渡す限りモノクロの神殿である。

私が知ってる神殿より少しガタがきているようだがそれ以外はとくに記憶と変わりない。

白と黒のチェス盤のような床に、上にかけて白くなる黒い大理石の高価そうな柱。天井は少し黒ずんではいるものの元は雪のように綺麗な天井だった筈だ。

驚いたように私達の目の前に突っ立ってる神官の服も白に黒の装飾が入っているものだ。

このホール?で見れる黒白以外の色は天井に描かれている天井画と私達が座っている祭壇の周りを一周するようにある装飾だけ。どちらも金色だが派手ではなく落ち着いた色合いの金で、それがいっそう部屋を神秘的に見せている。

…そしてあんぐりと口を開けた神官様

たぶん意図して呼んだのでは無いだろう。周りの空気がそう言っている。

並んで立っているところと手元にもつ魔術陣の紙を見るかぎり、どうやら一人ずつ召喚テストでも受け途中だったらしい。

やっちまった感満載の神官の周囲の人達もどうすればいいのかわから無いようだ。

…嫌な沈黙が続く…うわー気まずい…


「ここ…どこ?」


沈黙が15分ほど続いたところでやっと冷静になったクラスの、中でもまだ真面なクラスメイトの凛土さん__特技は勇気__が声を上げる。

そしてその声にビクリとする神官達…駄目だこりゃ。



「…ここ、何処ですか?」


答えない神官に凛土さんがもう一度声をかける。

そんな勇気100%な凛土さんの前に、何処からともなくモノクロな女性が現れた。

正確には服の裏についた転移の魔術陣で飛んできたのだが。ちょっと服が光っていたから丸分かりだった。

モノクロは神官と変わら無いが、服の黒い装飾がちょっと豪華な感じの服だ。…この場にいる神官の上司だろうか?

上司さんは神官達をパッと見ると、床に膝をつけて__


「本当に…すみませんでしたっ!」


おーっと!モノクロ上司さん渾身の土下座だー!

だが上司よ…それ…土下座ちゃうよ…土下座は祈りながらするもんじゃないよ…

大体は土下座と同じなのだが、手は顔の前で祈るように組んだままだ。


そんな何かが違う土下座を見せてくれた上司さんが慌てる神官達に咎めるような視線を向ける。あれは、そう。サッカーをしてて窓ガラスを割ってしまった子供達が担任と共に校長先生に謝りに行った時に担任に向けられる視線と同じだ。

おまえ達も謝れよ!…みたいな


「「「すみませんでしたぁぁぁあ!!!」」」


ぎゃあああ!!鼓膜が破れるわっ!

クラスメイト達も耳を抑えて呻いている…あ、一人気絶してる。

ただでさえ煩い大声は天井が高く響きやすい神殿内に響き渡る。これは数分は止まないなぁ…


__数分後、何とか鼓膜粉砕の危機を逃れた私達に上司さんはなぜこんな事になったのか説明してくれた。


簡単にまとめると、どうやら今は神官見習いの召喚の真っ最中だったらしい。

本当は使い魔にできる小動物をこの世界の何処からか呼び出す筈だったのだが、違う世界の人間を呼び出してしまった…と。

何故かというのは上司さんが神官が持っていた紙を見てすぐわかった。

呼び出すための紙を「小動物呼び出し用」では無くこの国の皇帝様が作った「異世界召喚」の魔術陣の紙を使ってしまっていたのだ。

何故異世界召喚の紙を持ってきてしまったのかは不明だ。厳重に管理されていて持ち出す事は不可能だった筈らしい。

世界を越えるためにはここにいる神官の魔力全てを持っても不可能なのだが、異世界召喚の紙には既に魔力が召喚ギリギリまで入った状態だったようだ。確かにこれだったら神官見習いのちょっとした魔力でも召喚出来たわけである。


説明が終わった後上司さんは私達を大きな客室まで案内してくれた。

クラスメイト達はまだボケーっとしている。現状がまだよく分からないようだ。そりゃあいきなり空に放り出され、神殿でモノクロに土下座された後ここは異世界だ。なんて言われてわかる筈がないな。

生憎クラスメイト達はみなバンジージャンプ大好きなので空に放り出された事にはなにも思っていないようだが…

客室の窓から見える町__説明は難しいがカラフルな中世の様な町__を見て、やっとここが地球でない事に気づいたみたいだ。


「ここ…本当に異世界なんだね…」


と、クラスメイトの誰かが呟く。

それを機にどっとみんなの声が溢れ出す


「私達…帰れないのかな…」

「お家に帰えりたいよぅ…」

「ママー!僕は今!異世界だよー!」

「ぎゃぁぁああ!電波が飛んでない!」

「グヘヘ…あの姉ちゃん綺麗だったなぁ…」


…うん。後半は聞かなかった事にしよう。





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