続 え?乙女ゲームの世界なんですか!
いつも読んで頂きありがとうございます。
この短編なんですが、物語の流れなど個人的に書き直したいと思っていますので、申し訳ないですがその内削除してしまうかもしれません。
精霊王や最高位の精霊達が住む桃源郷のように美しい天空に浮かぶ大地がある。
その場所は、精霊王が故郷を偲び想い四季に彩られた美しい大地、その天空に浮かぶ島の名を"幸福"であった。
そんな美しい島には、それぞれに特徴のある宮殿が建ち並んでいるがその中でも特に目立つのは一軒の寝殿造りの屋敷だった。
その屋敷の庭先には、野点傘が立てられ緋毛氈が敷かれている。その非毛氈の上に座りお茶を楽しむ人影が見えた。
「ああ、もう。
本当に夢みたいっ!
まさか、ロゼとお茶を楽しむことが出来るなんて!
・・・まじで、我が人生に悔い無しだわ。」
「お姉様ったら、大袈裟ですわ。
ですが、其処まで喜んで頂けるなんてとても嬉しいです。」
頬を染め恥ずかしそうにしながらも、微笑む乙女ゲームのライバル令嬢"マリーロゼ"に対し、精霊王"ゆうり"は緩みきった顔で幸せそうに笑い返す。
「いやいや、大袈裟じゃないよっ!
だって、ほんとに幸せだもん。」
「お姉様・・・。」
ゆうりの言葉を嬉しそうに受け止めて、ロゼは咲き誇る花のように幸せな笑みを浮かべるのだった。
うふふふ。ああ、幸せだなあ・・・。
異世界に強制的に連行されてから、幾星霜!
元の世界に変える方法なんて見付からなくて絶望したことも、今なら受け入れられる気がするなあ。
・・・ずっと、何で私がこの世界に堕とされたのか、どうして私だったのかなんて悩んでた。ずっと、納得できる理由を、意味を探してた。
・・・それを見つけられた気がする。私はきっと、ロゼと出会って、彼女を幸せにするためにこの世界に来たんだ。
戻ることが出来ない世界への未練は未だにあるけど、それでも何の意味も見いだせずに永劫とも言える永い時を無駄に生きていくよりは遥かにマシだよ。
永い時を生きる意味を感じることが出来ずに惰性に過ごしてきた私。やっと、もう一度真剣に自分の意志で"生きる"事が出来るんだもの!
「・・・お姉様。
こんなにも良くして下さるのに、これ以上の我が儘を言ってしまうことを申し訳なく思います。
でも、どうしても心配なことがありますの・・・。」
いつものように、日課のお茶の時間を楽しんでいると可愛らしい表情を歪ませロゼが言いにくそうに有利へ話しかけてきた。
「何、どうしたの!
もしかして誰かに虐められたっ!?
おにょれ、可愛いロゼを虐めるなどけしからんっ!!
私の力の錆にしてくれるわっっ!!」
ロゼの様子にただ事ではないと感じたゆうりは、殺る気を漲らせ両手の拳を握りしめて鼻息も荒く、その場に立ち上がる。今にも走り出しそうな雰囲気のゆうりをロゼは慌てて止めに掛かった。
「違いますわっ!
皆様、本当に私へ良くして下さっています!
虐められているなど、とんでもありませんわっ!」
「・・・え、そうなの?
良かったあ、さすがに見つけ出すのは大変だなあと思ったんだ。
それで、ロゼは何が心配なの?」
ロゼの制止の言葉に殺る気を霧散させ、その場に座り直しロゼの話しを聴く体勢にゆうりは戻った。
「・・・マルセル様のことなんですの。」
ゆうりから視線を反らし、小さな声で呟いたロゼに対して、ゆうりはロゼには決して向けることの無いものすごく嫌そうな顔をしてしまうのだった。
"人間の価値観なんて、私にとっては糞以下よっっ!!"
"少なくとも、その糞ガキやその血に連なるものとは契約など結びたくもないっっ!!!"
僕の世界は、"元"婚約者が精霊王と契約した日を境に変わってしまった。
僕は公爵家の次男としてこの世に生を受けた。魔法庁長官の厳格な父を持ち、その父に恥じぬ才能を持った兄が僕にはいた。母もいたけれど、母の興味は自慢の兄にしか無く僕を見てくれることはなかった。
貴族の習慣というのか、幼い僕にも婚約者が与えられた。その少女は、父や兄と同じ黒髪だった。僕にとって、黒髪はあこがれだった。才能有る父や兄と同じ黒髪、僕の色とは正反対だった。
悔しくて、悲しくて、少女に冷たくあたってしまった僕。
少しでも両親に振り向いて欲しくて、兄と同じように才能が有るのだと認めて欲しくて精霊を召還しようとした。それを止めに入った、少女に怒りにまかせて水晶玉を投げつけたのはやり過ぎだったと思う。
・・・その行為が精霊王の怒りを買ってしまった。
精霊王は僕と同じ血筋の者と契約を結びたくないと宣言した。それは、"父"や"兄"とも契約を結びたくないと言うことだった。・・・二人と契約していたはずの精霊達が、その精霊王の言葉に契約を破棄して離れていった。
母と兄は僕に激怒した、父は何も言わなかった。それからの僕は、まるで針の筵に座っているかのような生活だった。使用人達でさえも、僕を無視したり、僕の悪口を言ったりした。最初は、僕だって怒った。けれど、その姿を母が見て僕を叱った。
・・・僕の見方は誰もいなかった。
使用人すらも滅多に訪れることの無くなった僕の部屋で、僕は一人月を眺める。己の愚かさに涙さえ出なかった。
僕は、どうればいいのか分からなかった。
美しく輝く月が愚かな僕を照らす。部屋の窓を開けて、美しい月へ身を乗り出して手を伸ばす。
例え、窓から落ちても構わなかった。誰も僕の事を心配する者など…、いないのだから。
身体が傾き、窓から落ちそうになった僕。…そんな僕を抱き止める者がいた。
「まったく、見てらんないよっ!
何してんのさっ!危ないでしょっ!!」
抱き止めてくれたのは、僕を一番嫌っていたはずの精霊王だった。
「…なんで?」
どうして嫌いな僕を助けたのか、家族のように僕を無視しなかったのかわからなくて、思わず疑問を口にしてしまった。
「…何でって、子供が窓から落ちそうなのに助けない奴はいないでしょ?」
「…でもっ、嫌いな僕を助ける必要なんてっ!!」
夜の静かな屋敷に僕の声だけが響き渡る。
「それは関係ないでしょ。
まあ、一番の理由はロゼが心配していたからだけど。」
「…心配?」
精霊王の言葉を僕は、信じられない思いで聞き返してしまう。
「そう、心配してるんだよ。」
僕はその言葉を聴いて、流れることはないと思っていた涙が溢れ出した。
この世界中で、家族すら見捨てた僕を心配してくれていた存在がいたことが、ただ純粋に嬉しかった!
僕の涙はしばらく止まることは無かった。そんな僕に慌てながらも、抱き締めてくれた精霊王の腕の中はとても暖かかった。
その後、僕に対する屋敷での対応を見ていた精霊王は僕を引き取ってくる事となる。
もし、引き取られた場所で婚約者だった少女に出会えたならば、まずは心から謝罪したいと思う。きっと、すぐには許してもらえないと思うけど…。
例え、何年も謝り続けることになってもいい。…でも、いつか仲直りができるといいなあ、と想う。




