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8日目の夜

 ついに迎えた生誕祭8日目の夜。

 食卓には、四人が真剣な表情で向かい合って座っている。


「じゃあ、結果発表と行こうか」


 成り行き上、俺が司会のような役割を担う事になった。


「それぞれの売り上げを申告してもらう。ええと、順番はどうしようか」


 そこで、普段より五割増しで仏頂面をしていたノアが手を挙げた。


「まずはボクから発表させてもらっていいかな」


 俺は他の三人を見回してみた。

 頷きが返って来る。異論はないな。


「いいよ。じゃあノアから聞こうか」

「売り上げは金貨六枚、銀貨六枚だ」


 やはり……と言うべきか、少ないな。

 一日当たり金貨一枚を下回る利益と言えば、下手したらうちで働いてるアルバイトよりも稼ぎとしては少ない。

 はっきり言うと、ノアには商品開発をしてもらっていた方が遥かに利益は出せただろう。

 だがまあ、教育費の一環だな。これでこいつも、客の需要と言うものをわかってくれればいいのだが。


「はあ、散々大口叩いといてこの様……ボクは自分が情けないよ……」

「そ、その、何だ。そんなに落ち込むな、ノア」

「そんなこと言って。レイラさんは僕よりもはるかに売り上げ有るんでしょ?」

「まあ、お前より高いのは確かだけどだな」


 肩を落とすノア。

 恐らく、こいつは頭一つ抜けて売り上げが低い筈だからな。最初に申告したのは正解と言える。


「それじゃあ、この流れでレイラに発表してもらうか」

「私か。私は金貨にして156枚ほどだな」


 ゴンッ! とノアが頭をテーブルにぶつける音が聞こえた。

 流石にここまで差がつくとショックを受けざるを得ないだろう。

 一方、ミミカとリネットは顔色に変化が無い。恐らく、レイラと大差ない売り上げは出しているのだろう。ノアの悲惨さが一層際立つ布陣が形成されつつある。


「次はどっちが行く?」

「では私が。私は金貨にして137枚。レイラさんには負けてしまいましたね」


 リネットの店も繁盛してたんだけどな。

 やっぱり最後は商品の単価の差が出た、と言った所だろうか。


「それじゃあ、最後はミミカ」

「ミミカは金貨113枚。あーあ、結局二人に負けちゃったか」


 しかし、ノア以外の3人は金貨100枚越えか。俺の想像を遥かに超える利益を出して来たものだ。3人の売り上げだけで、シリスタにいた頃の店の売り上げの一月の売り上げの3倍を越えている。

 勿論これは準備に使える金が豊富にあった事、ビルヒジスタと言う立地条件、生誕祭と言う浮かれた空気、これらが合わさって可能になった事だが、凄い成長を感じるな。

 ノアはまあ、ドンマイ。


「えっと、じゃあ明日ハルイチさんと一緒に生誕祭を見て回るのはレイラさんって事?」

「そうなりますね。おめでとうございます、レイラさん」

「あーあ。残念。ミミカ結構自信あったんだけどな」


 しかし、祝われている張本人であるところのレイラは、妙に浮かない顔をしている。


「うーむ……本当に私が勝者という事でいいのだろうか?」

「何を言ってるんだよ、レイラは。実際に数字が出ている以上レイラが勝者に決まってるじゃないか」

「いや、だが、うーむ……」


 こいつは一体何を悩んでいるだろうか。


「レイラさんの言いたいこともわかりますけどね」


 それに賛同の意を示したのは、リネットだった。


「どいう事だい?」

「私とレイラさん、それにノアさん。この3人は、ミミカちゃんと違って、物を売るという方法をとりました。しかし、その仕入れに使ったお金はこの店の売り上げから出ているわけです。その点で、本当に平等な勝負なのかと思いました」

「そういう事だな。私は特に原価の高い商品を扱った。事実、商品の仕入れ値を引いて純利益だけで言うなら、金貨100枚を下回る」

「それは私も同様ですね。純利益の話をするなら、私も金貨100枚以下です」

「だがなあ……。そもそもが売り上げの勝負と聞いていたし、ルールに従って考えるならレイラの勝ちでいいと思うけど、俺は」

「それはそうなんだが、こう、プライドの問題と言うか……」


 いつの間にこんなに商売人としてのプライドが目覚めたのやら。

 だが、本人がそう言うならそれは考慮しないわけにもいかない。


「まあ、レイラが辞退すると言うのならそれは認めないわけには行かないな。

 じゃあ勝者は繰り上げでリネットという事に……」

「待ってください。この流れで私が勝ち誇れるわけないじゃないですか。勿論私も辞退しますよ」


 全員の視線が、自然にミミカに集まる。

 上位二人が辞退するとなると、必然的に勝者になる人物に。


「えっと、そうなるとミミカが勝者ってことになるのかなあ? うーん、なんか変な気分。

 アルの餌代とかだって店から出てるわけだし……」


 何だか変な流れになってきたぞ。


「こ、これはもしや、間を取ってボクが勝者になる流れ……?」

『いや、それはない(です)』


 四人の声は綺麗なハーモニーを奏でた。


「いや、勿論わかってるけどさ。それより、早く勝者を決めちゃおうよ。

 多分現状の流れだと、レイラさんかミミカのどっちかになると思うんだけど」


 レイラとミミカは互いに譲り合う様に黙り込んだ。


「……」

「……」


 しばしの沈黙。

 先に口を開いたのは、レイラの方だった。


「アルの餌代を考慮するなら、私達の食事代も考慮しなければならないことになる。流石にそこまで考慮し始めると訳が分からなくなるからな。ここは私が辞退するのが正解だろう」

「ううーん……。言われてみればそうかも……」


 ミミカは次の瞬間には、明るい笑顔を浮かべていた。


「まっ、これ以上何か言ったって仕方ないよね! 折角二人が勝ちを譲ってくれるんだもん! ミミカはありがたく勝利宣言させてもらいます!」


 どうやら、そういう方向でまとまった様だ。


「なら、明日は一緒に生誕祭を見て回るか、ミミカ」

「うん! よろしくね! ハルイチ!」


 こうして、俺の最終日のパートナーはミミカに決まった。


随分と更新に間があいてしまいました。

今までお読みくださった方、本当に申し訳ありません。

ちょっとリアルの方で忙しくなったため、思う様に書く時間が取れませんでした。

それに自分の仕事の都合上、別ジャンルの練習も始めなければならなくなり、更新速度は去年よりかなり落ちると思われます。

それでも完結はさせるつもりですので、気長にお付き合いいただければ幸いです。

追記 感想はログインしてなくても書けるように変更してみました。

   お気軽にどうぞ。

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