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決着の日までの過ごし方

 それから先、俺達は目まぐるしく働いた。

 まず、金山で採掘を始めるまでがなかなか大変だった。

 鉱夫たちは、俺がどれだけ『魔物達は殲滅した』と言ったところで信じてくれず、結局鉱夫達ともう一度炭鉱の中を回ることになった。

 鉱夫たちはリザードマンの死体や蝙蝠の生き残りに一々おっかなびっくりするために、それだけでも時間が掛かった。

 金山に脅威が無いことが分かったからすぐに作業開始、ともいかない。

 次は鉱山の整備だ。具体的には道に明かりを設置すること、その道を業務用の一輪車で移動できるように小石などを取り除くこと。

15年間放置されてきただけのことはあり、金山の中は荒れ放題。整備にも手間はかかる。

加えて、リザードマンの死体を運び出す事。これは鉱夫達が怖がってやってくれなかったので、俺とレイラ、それにダルウルフ達で行う羽目になった。

リザードマンを殲滅してから二日後。やっと金の採掘が始まった。


 採掘が始まった後の1か月間、俺達五人は大きく2グループに分かれて活動した。

 まず、俺、レイラ、ミミカのグループ。

 こっちは金山及び、ガリアスへの運搬の監督。

 鉱夫達はサボらないか、運送の最中に金をくすねる奴はいないか、常に誰かが見張っていなければいけない。これを3人で交代で行うのだ。

最初の数日は本当に3人だけで行っていたので死にそうなほど大変だったが、作業が進むにつれて、優秀な者、誠実な者は見極められるようになってきた。

俺はその者達の給料を上げる代りに、俺達のすべき監督の仕事を一部任せる様にした。そうすることで、俺達3人にも少し余裕は出来るようになってきた。

 そして、もう一つのグループ。それがリネット、ノア。

 こちらは金の加工が主な仕事だ。

 この国に置いて金は非常に貴重な物で、それを使った装飾品などはかなり珍しい。

『「金貨」が流通しているのに貴重なのか』と思うかもしれないが、俺達がよく使う『金貨』は金の含有率が言うほど高くないので、それを加工して装飾品にしてもそんなに綺麗な物にはならない。ついでに貨幣に手を加えるのは法律違反である。

だからやっぱり金は貴重なのだ。

 俺はそんな国の状況をレイラから聞いて知っていたので、金は基本的に装飾品に加工することに決めた。

 リネットと、彼女が雇った多くの錬金術師が金の純度を高める。

 そして、ノアがデザインした装飾品の形に作り替えていくのだ。

 ノアは意外なことに、女性が好みそうな装飾品のデザインをするのが得意だった。侯爵令嬢として色々な装飾品を目にしてきたレイラが認めたのだから、間違いはあるまい。

 そして出来上がった商品は、一旦店の倉庫で保管しておく。

 最初の一か月間はこんな流れだった。


***


 そして、採掘開始から二か月目。

 俺とミミカの仕事は変わるが、他の3人は変わらない。

 俺達2人が抜けることによってレイラの負担は少し増えるが、一月も採掘を続ければ流石にノウハウも身につくし、他の監督との信頼関係も築ける。何とかレイラ一人で回せるだろうと判断した。

 そして俺達が何をするかと言うと、今まで加工した装飾品の販売だ。

 前述した理由により、この国において金を使った装飾品は非常に貴重だ。当然値段も恐ろしく高くなる。指輪一つで金貨何百枚と言う値段をつけることだって出来る程だ。

 だが、そこまで値を張る商品をポンと買えるような資産家が、このガリアスの街にいるだろうか? 答えは否だ。

 この街だって十分大きいとは思うのだが、そこまでの資産家はジェフリー卿やデリックなどごく一部だ。幾らなんでも、その2人に売り込むに行くほどの度胸は俺には無い。

 だから俺はこの国の首都、ビルヒジスタを目的地として選らんだ。


 俺とミミカは交代で車を走らせ、3日近くもかけてビルヒジスタへと到着した。

 ビルヒジスタは人口50万人もの規模を誇る、ラオネル最大の都市だ。

 ガリアスと比べても尚、活気があることが一目でわかるのだから凄まじい。


「ほえ~。本当に大きいねえ」


 隣でミミカが呆けたような声を出すのだが……


「いや、待て。ミミカはこの街に来るのは初めてじゃないだろう」

「そうなんだけどさ。来るたびに思っちゃうんだよ」

「気持ちはわかるが……」


 一瞬どきりとしたから、そういうのは止めて欲しい。何せ、今回の商売はミミカ頼りの部分が大きい。

 何故ミミカ頼りかと言うと、俺達の中で一番資産家に人脈があるからだ。彼女は魔物の販売を通じて、ビルヒジスタの資産家にある程度顔が聞くようになっていたのだ。

 金持ちへの人脈と言うだけなら、本当はレイラの方が強い。だが、侯爵令嬢である彼女から、自分より身分が高い人間から装飾品を買いたがる人間が何処にいるだろうか? 少なくとも、プライドの高い資産家のマダム達は、そんなもの欲しくは無いだろう。

 それに対して俺とミミカなら『商人に金を恵んでやる』ぐらいの軽い気持ちで買ってもらえるだろう。 

 俺達は、ミミカのコネを使って会うことが出来た資産家に、金の装飾品を売っていく。

 さらに、俺達の商品を買ってもらってマダムから、その友人や取引先なんかを紹介してもらう。

 やはり資産家には資産かなりの人脈と言うのがある物で、俺達の装飾品を買ってくれる人は次から次へと表れた。

 そうやって装飾品をすべて売り切ると、再びガリアスの街に戻るのだ。

 俺達がビルヒジスタに行っている間に、リネットとノアは新しい装飾品を作っておいてくれる。俺達は再びそれを持って、ビルヒジスタに向かうのだ。

 

 本当に忙しい日々だった。

 3つのグループに分かれた俺達は、常に自分の仕事に専念し続けた。そのせいで、俺はリネットやノア、レイラとは二か月間で数えるほどしか顔を合せなかった。

 ミミカはそのことを寂しがっていたし、俺だって本当は少しはゆっくりしたかった。

 だが、とにかく時間が無い。

 全員がそのことを認識している為、各々疲労は感じていても、黙々と働き続けた。

 俺達は結局、期限ぎりぎりまでこの流れを繰り返した。


 そして勝負の約束から1年。ついに決着の時を迎える。


ちょっとダイジェストっぽいですけど、長々書いても仕方ないかと思ったのでこのような形になりました。

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