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リザードマン殲滅戦

俺達は再び採掘場の近くまでやって来た。

 カンテラは持ってきているが、今度は火を灯していない。

 今度はこちらが奇襲を仕掛けてやる立場だ。極限まで注意を払い、存在に気が付かれないように気を付ける。

 今回は俺達の他に、12匹ものダルウルフを連れて来ているが、一切鳴いたりしなかった。ミミカの調教のセンスが素晴らしいおかげだな。

 そのおかげで、リザードマン達は俺に気が付いていないらしかった。こちらにも採掘場の中の様子はわからないのだが、間違いなくリザードマン達はそこにいるはずだ。

 自分たちの巣への侵入を防ぐのが目的なら、ここに見張りを置かないはずがないからだ。

 俺は暗闇の中、全員の顔を今一度見回した。

 当然よくは見えないのだが、全員が頷く気配を感じる。

 言葉を発するわけには行かないので、俺はノアの肩を叩いて指示を送る。

 ノアは最近新しく作ったマグネシウム弾を取り出す。

 アルが極限まで小さく抑えた炎を吐き、その導火線に火をつける。

 ノアはそれを確認するなり、採掘場の中心に向けて転がした。

 火が付いているので、流石に爆弾の存在は気が付かれただろう。だが、リザードマンの連中はこれを今までの爆弾と同じだと思うはずだ。

 俺達は、爆弾が爆発するタイミングで、目を瞑る。そう、目だ。今度の攻撃は耳では無く目に仕掛ける。

 爆弾が爆発した。しかし、今度は以前の物とは違い、大きな破壊力は無い。

 代わりに、内蔵された大量のマグネシウムが燃焼し、恐ろしいほどに強い光を放つ。


「ギャウ!?」

「ギャア!?」


 リザードマン達の悲鳴が聞こえる。

 俺達とは違い、リザードマンの連中は太陽の様に眩しい光を直視してしまった。しかも、暗闇に慣れきった状況でだ。

 連中が、行動の際に視覚に頼っているのは分析ずみ。事実上、これで一定時間無力化で来たといって良い。


「ミミカ!」

「うん! アル! お願い!」


 ミミカの指示に従い、アルがカンテラに火をつけて行く。

 これはノアが作った小さいカンテラで、12匹のダルウルフ、全ての首につけられている。

 全部のダルウルフの首のカンテラに火が付いたことを確認し、ミミカが号令をかける。


「じゃあ、行ってみんな! 弓を持った奴を狙うんだよ!」


 ミミカの号令一下、12匹のダルウルフが、採掘場の中に飛び込んだ。

 彼女の指示に従って、ダルウルフは弓を持ったリザードマンに飛び掛かり、その喉笛を噛みちぎっていく。

 平素の状況ならダルウルフではリザードマンに勝てないだろうが、今のリザードマンは全員目が見えていない。ダルウルフのなすがままに、どんどん数を減らしていく。

 そして、それに伴って採掘場の中に光が灯る。

 散会したダルウルフ全ての首にカンテラがつけられているからだ。一つ一つの光は弱くても、それだけもの数に照らされば、採掘場全体の様子はわかる。

 今度こそ、俺達はその全景を把握することが出来たのである。

 残るリザードマンはあと15ほど。弓を持っているのがあと3匹ぐらいか。


「任せて!」


 ダルウルフが倒しきれない弓持ちのリザードマンは、ノアが正確な射撃で倒した。

 これで弓を持ったリザードマンは全滅だ。あと、残るは剣を持った奴のみ。

 だが、リザードマン達もようやく閃光の衝撃から脱したらしく、こちらに向かって進んでくる奴もいる。


「みんな、戻って!」


 こうなってはダルウルフに出来ることは少ない。ミミカは後退の指示を出してダルウルフ達を下げる。

 しかし、仲間を殺された怒りからか、リザードマンの中には近くにいるダルウルフに剣を振るう奴もいる。


「この!」

「えい!」


 そんなダルウルフをカバーするようにノアが矢を放つ、リネットが錬成した短剣を投げる。その援護で何匹かのダルウルフを助けることが出来たが、結局無事に撤退できたのは半数しかなかった。


「みんな、ごめんね……」


 ミミカが痛ましい声をあげながら、ダルウルフ達を撤退させる。

 ダルウルフの死は残念だが、彼らが死んでもその首のカンテラは戦場を照らし、俺達を助けてくれる。決してその死を無駄にはしない。

それに彼らがリザードマンを引き付けておいてくれた間に、ノアとリネットの攻撃でさらに敵の戦力を削ぐことが出来た。

 残るリザードマンは8匹ほどだ。


「後は俺らの仕事だ! レイラ!」

「ああ、任せろ!」


 俺とレイラは、近づいて来るリザードマン達の中に突っ込んでいった。

 8匹と言うのは相手として多いが、こいつらは万全の状況では無い。

 歩き、剣を振るうことが出来る状況とは言え、こいつらの脳裏には未だに強すぎる光がフラッシュバックしているのだ。

 動きが鈍いし、間合いも微妙に取れていない。

 俺達は攻撃を簡単に捌き、逆にその胴体を切り裂いていく。

 そして、それでも生まれてしまう俺達の隙は、ノアが、リネットが援護して埋めてくれる。


「はっ!」

「せいっ!」


 俺とレイラは、最後に残った二匹のリザードマンを同時に斬り倒した。


「終わったな……」


 深々と息を吐くレイラ。リネット達三人も、笑顔で駆けよって来る。

 だが油断してはいけない。


「この採掘場で待ち構えているリザードマンを全滅させただけだ。気を抜くな」


 俺の言葉で、全員が表情を引き締める。

 そう、まだほかにもリザードマンがいる可能性はあるのだ。流石に一番強力な陣形を破ったとは思うが、油断はできない。


***


 その後俺達は、五人纏まって金山の散策を続けた。

 採掘場からはいくつもの小道が伸びており、一つ一つを警戒しながら調査していく。

 どの小道も一本道の上、短くすぐに行き止まりになるので調査は簡単だった。

 そして、残るは最後の一本となったのだが、今まで経った一匹のリザードマンにも接触していない。

 消去法で行くとここにいることになるのだが……。


「もしかして、採掘場ので全部だったんじゃない?」

「ボクもそう思うな」

「一応最後まで気を抜くな」


 ミミカとノアに注意を促す。

 俺もだいぶ気が抜けて来ているのは確かだが、こういうときが一番危ないのだ。

 俺達は警戒しながら最後の小道を調査し……想像だにしない光景を見ることになった。 

 なんと、最後の小道は外に通じていたのだ。

 そして、その出口の付近には、剣や弓などが無造作に散らばっていた。

外に顔を出してみると、入り口付近と同じような荒野が続いていた。その道の向こうには、また同じような小山が一つ。


「もしかしたら、あちらが連中の本当の巣なのではないか?」

「じゃあ、生き残ったのはこの道から慌てて逃げたって言う事かな?」

「有り得るね。ここに散らかっている武器は、その時に落としていったんだと思う」

「もし生き残りがいたのなら、それしかとれる行動はありませんし……」


 俺も四人に同意見だ。

 もしかしたら、本当に採掘場のリザードマンが全部だったのかもしれないが、それを調査する必要は無い。


「じゃあ、ここを埋めてしまえば。こっちの金山は安全だ。ノア、頼む」

「はいはいっと」


 ノアは俺の指示に従って爆弾を使い、外に通じる道を爆破して埋めた。

 これだけでは掘り返される可能性があるから、採掘場に戻ってその小道自体も破壊して埋めた。

 これで、リザードマン達が金山に再び侵入することは出来ないだろう。


「終わったね!」

「ああ。私達の勝利だ」

「や、やりました!」

「お疲れさんっと」

「それじゃあ早速みんなの下に戻るぞ! 金山の復活だ!」




 結局、リザードマンがどれだけいたのか、何処から来たのか、何しに来たのかはわからなかった。その事が少し不気味だったが、それは後で考えればいいことだ。

 今俺達にとって大切なのは、リットン商会との勝負。

 この金山を復活させ、起死回生の策となすのだ!

戦闘終了です。

そしてリットン商会との戦いもいよいよ大詰めです。

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