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魔物の有効活用法

「馬を買いたい」


 夜。俺達4人を集めたレイラは、そう切り出した。


「むしろ、今まで買わなかったことの方が不思議だと思うんだ」


 まあ、確かに。郊外を見て回る仕事なんだから、機動力は必要だよな。


「ボクは、レイラさんが馬も持ってなかったという事実の方が驚きだけどね」


 しかし、ノアの言う事も一理ある。今まで気にしてこなかったが、侯爵令嬢であるレイラが馬の一頭も持っていないのはおかしい。


「仕方がないだろう。馬は父上の持ち物だ」

「でもあんたさ、確か家出したんだろ? その時馬に乗っていかなかったの?」

「父上の物を勝手に持ち出せるものか。家出と言っても仁義がある」


 なら服や剣はどうなのか、と言いたくなったが、キリがないのでやめる。


「そ、それは兎も角必要ならば購入するべきだと思います。馬ってどれくらいするんでしょうか?」

「金貨50枚から、良いもので100枚くらいか。勿論もっと根を張るものもあるが」

「そういうのは毛並みが良いとかの観賞用だろう? レイラ、頼むから現実的な馬を選んでくれよ」


 言わなくてもレイラならわかっているとは思うけど。


「うーん……」

「ミミカ、どうした?」


 さっきから黙り込んでいると思ったら、ミミカは何かを考え込んでいる様だ。


「上手くいくかわからないけど……一つ提案があるんだけど」

「どんなのだい?」

「本当に上手くいくかわからないよ?」

「別に構わないよ。実現の可能性は、みんなで吟味した方が良い」

「じゃあ、言うね。この前シムの屋敷でレイラが言っていた、ブリンドル王国式の車を作ることが出来ないかな?」


 ブリンドル王国式……何だっけ? 

 そんな俺の様子を察してくれたのか、すかさずレイラが解説してくれる。


「ラオネルでは一般的では無い、狼型の魔物に引かせる車だな」


 ああ、そういえばそんなことを言っていた気もする。


「ミミカ。それはつまり、今ミミカが調教している魔物の中に、車を引かせられそうな物がいるという事だな?」

「うん」


 レイラの問いに頷くミミカ。言いたいことはわかるが、そうする必要はあるのか?


「でもさ、ミミカ。魔物は売り物になるじゃん。そりゃ、馬を買ったらお金は減るけど、差額で見れば馬を買う方が安いとボクは思うよ」


 俺と同じことを考えていたらしいノアが指摘する。


「それはそうなんだけど……馬って、馬だけで終わる物じゃないでしょ?」


 ……え? ちょっと意味が分からない。

 レイラやリネットも首を捻っているが、ノアだけは意味を汲んだようだ。


「つまり、馬を買うなら、馬車もいつかは買うことになるってこと?」

「うん」


 ああ、ちょっと理解できた。馬は単体で利用しても便利だが、馬車を持っていれば利便性はさらに広がる。ならば、確かにいつかは俺達も購入するだろう。


「ミミカは、そこまで考えて欲しいの。確かに一人で乗ることを考えれば、馬の方が便利かもしれない。でも、今ミミカが調教している狼たちは優秀だよ。荒れた土地、密林の中、寒冷地、何処でも行けるよ」


 確かに、馬より狼の方が優秀な点と言うのはあるのだろうな。


「だがミミカ。言っただろう? このラオネルではそのようなやり方は一般的では無い。魔物に引かせるような車は手に入らないぞ」

「待ってください。レイラさん。それならきっと何とかなります」

「リネット。何かいい案があるのか?」

「はい。……ノアさん。お願いできませんか?」


 期待のこもった眼差しを向けられ、ノアは頭を掻いた。


「やっぱりボクに回ってくるわけ?」

「そんな車が作れるのはノアさんだけです。私も精一杯お手伝いしますから」

「リネットさんが手伝ってくれるのはありがたいけど……」


 ノアは俺に視線を向けた。


「お金掛かるよ、お金。許可してくれるの? 店長さん」

「難しい所だな。利便性で勝ったとしても、既存の物を買う方が時間も金も掛からない」

「でも、ハルイチ。もしその車が量産出来たら、魔物を売った人に合わせて売ることが出来るよ?」

「量産って……僕を過労死させる気?」


 だが、ミミカのアイデアは悪くない。


「量産は出来なくもない。車なんて、結局は部品を繋げたものだ。街の技術者たちに、部品だけ作るのを依頼すればいい。そうすれば車全体の技術は流出しないし、量産も可能だ」

「その部品を繋げるのにどれだけの苦労が掛かると思ってるんだか」


 うんざりしたような声を出すノアだが、先程よりも声は明るい。


「ま……リネットさんを借りていいなら、やってもいい」

「私は構いませんけど……」


 リネットは俺の方を見る。俺の許可が必要だと思っているのか。


「いいだろう。リネット、頼むよ」

「わかりました」

「じゃあ、決まりだな。ノアとミミカは連絡を十分に取り合う様に。車を作るのはノアだが、売り込むのはミミカだ。商品の事が理解できていないと、売り込みも出来ないからな」

「わかったよ!」

「りょーかい」


 と、これで話は丸く収まったのだが。


「何か……とんとん拍子で話が進んでしまったな……」


 そう言えば、この話を切り出した本人の発言があまりなかったな。


「乗りたかったな、馬。格好いいんだよな、馬。いや、魔物が格好悪いわけじゃないけど。侯爵令嬢なんだし。格好良さを追求してもいいと思うんだ。馬」


 何かぶつぶつ呟いてるけど、他の三人はまるで聞いちゃいない。


「どんな車にしようか?」

「今回はお金持ちに売り込むから、ちょっと派手なくらいがいいと思うの!」

「それなら、私が装飾を作りますね」


 既にこれから作る車に思いをはせている。

 その明るい表情とのギャップで、余計にレイラが暗く見える。


「まあ、その、元気出せ」

 

 俺の言葉は、言っても言わなくても同じなレベルで意味が無かった。

ここまでお読みくださった皆さんに、忌憚なき意見をお伺いしたいのです。

ぶっちゃけ、ヒロインでは誰が好みでしょうか? それとも、ハルイチの方が好きでしょうか?

出来れば理由なんかも教えていただけると助かります。

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