ミミカの提案
済みません、投稿する章を間違えたので、無理やり見やすくするためにガリアスは前後編に分けました。
「この魔物達、ミミカに任せてくれないかな?」
俺は一瞬、ミミカが何を言っているのかわからなかった。
「任せるって、どういう事だい?」
「アルと話あってみたんだけどさ。この魔物達の中には、何匹か調教すれば人が飼えるようになるのがいるの」
「本当か!?」
「うん。ここにいる魔物は今、誰からもどんな教育も受けていない状態。いわば、野生と大して変わらないの」
恐らく、シムはあえて調教しなかったのだろう。殺し合いをさせる時、盛り上がる様に。
「勿論、もう無理だっていう魔物もいるよ? 例えば、そこの犬みたいな魔物、あっちの鳥も駄目かな?」
「そんなに簡単に見分けがつくのか?」
「やって見ないとわからないのが大半かな。でも、絶対に無理な魔物はすぐわかる。だって、今ミミカが言った二匹……」
ミミカは言い辛そうに続けた。
「人の味を知ってるの」
リネットが顔を青ざめさせた。俺だって気分のいい話じゃない。
だが、本当だろう。チャールズは、使用人が何人か殺されたと言っていたし。
「人の味を知ってしまった魔物は、絶対に人が飼うことは出来ないよ。もう、人のことを『餌』としか認識できなくなるから」
「いや、もうそれ以上はいい」
あんまり説明されて嬉しい話では無い。
「でもさ。仮にミミカが調教できたとして、どうすんの? 餌が必要で、金がかかることは変わらないんだよ?」
ノアの意見ももっともだ。こいつらを大人しくしたところで、意味があるのか?
「本当に大人しくなった魔物はペットとして売れないかなーってミミカは思うんだけど……どうかな?」
「無理なんじゃない? 少なくとも、ボクは嫌だなあ、魔物と一緒に住むのは」
ノアは何気なく言った一言であろうが、それに抗議するようにアルが「ギャウ!」と鳴いた。
「そう言えば、アルも魔物と言えば魔物だよな」
「そうだよ。ね、ノアもさ。アルと一緒に暮らすのは嫌じゃないでしょ?」
「そりゃ……嫌じゃないよ」
「ほら。人と魔物は、必ずしも敵対する存在じゃない。仲良くなることも、一緒に暮らすことも出来る」
そう言われるとノアにも返す言葉は無い。実際に自分が魔物と暮らしているわけだし。
だが、俺には感情的な問題は兎も角、他の事が気になった。
「レイラ。その、魔物を売るっているのは法律に抵触しないのか?」
これだ。この世界にワシントン条約みたいなものがるとは思わないが、魔物の所有は法律で禁止されていてもおかしくは無い。
「特にないな。大体、馬を普通に所有している人間はいるだろう?」
「馬は魔物じゃないだろう」
「だがな。『魔物』には実は定義が存在しない。人以外の生き物の中で『人間に危害を加える可能性がある生物』の総称として『魔物』と呼んでいるに過ぎない」
何だか、随分と曖昧な基準だな……。
「だからな。国家間によって『魔物』と類されたり『動物』と類されたりが違う生物すら存在する。特に、このラオネル公国は『魔物』の幅が広い。
例えば隣のブリンドル王国では、狼のような『動物』に車を引かせる文化もある。ラオネルではその生物の調教技術が確立されていないので『魔物』だがな」
そう聞くと、なんだかラオネルが随分と遅れた国に聞こえるな。
「でも、そうなると結構大変ですね。ミミカちゃんが調教に成功しても、それを信じない人は多いでしょうし……」
「そうだな……」
リネットの言う通り。問題は販路の確保だ。魔物に対する抵抗感が根強いこの国で、魔物を欲しがる人を探せるのか?
「あの……さ。それについても、ミミカに考えがあるんだ!」
「何だい?」
「ミミカがいたサーカスの団長を頼るの」
「団長を?」
あの男が何か役に立つのだろうか。
「サーカスっていうのは、ラオネルでは珍しく多くの動物……ラオネルでは魔物って呼ばれてる生き物を持っている団体なんだよ」
それはそうだろうな。実際、アルもそこにいたわけだし。
「サーカスを見に来てくれたお客さんの中にはさ、その魔物を凄く気に入って『売ってくれ』っていう人もいるんだ。金額によっては団長も売ってたみたいだけど、やっぱり数が足りなくて……」
つまり、供給が需要に追い付いていないわけだ。
「団長は見た目通り守銭奴なところがあるから、自分に『売ってくれ』って言って来た人はきっと全員覚えてるよ」
「成程……魔物を欲しがるような人を把握しているわけだ」
「そう言う事!」
何処でどんな人脈が役立つかわかったもんじゃないな。
俺はあの団長は好きじゃないし、団長も俺のことは嫌いだろう。だが、利害が一致すれば手は組めるはず。
あとは、最後に確認だ。
「そうなると、ミミカは当面魔物の調教に時間を使うことになる。店の売りあげにはかなりの影響が出る。その不足分は補えるか?」
ミミカはドン、と胸を叩いて答えた。
「勿論! 調教された魔物っていうのは、ラオネルではかなり貴重なんだから! 大きな利益になるよ!」
頼もしいな。だが、今回は事情が少し違うので、それだけでは足りない。
「だが、これは本来チャールズさんの所有物だ。彼は処理してほしいって思うだろうが……全く配当しないわけには行かない。もし彼が受け取りを拒否したとしても、東部の被害を受けた人々に補償として渡す金は必要だ」
「大丈夫だよ! ここにいるのは珍しい魔物ばっかりだから! 1匹あたり金貨200枚から300枚は固いよ」
それは凄いな……。それだけあれば、被害者の補填も出来るし、俺達も利益が出せる。
「チャールズさん。うちのミミカがこう提案しているんですが、どうですか?」
随分勝手に話を進めてしまったが、やっぱりこの人の許可は必要だ。
「あ、ね、願ったり叶ったりと言うか……お願いします!」
チャールズさんは深々と頭を下げた。
「と言う訳だ。みんなもいいな?」
俺は最後に、仲間たちに問いかける。
「ミミカちゃんが決めたことですから」
「私は応援するぞ」
「ま、いいんじゃないの?」
反対する者は誰もいなかった。
「それじゃあミミカ、頼んだぞ!」
「うん!」
こうして、ミミカによる魔物の調教が始まったのである。
RPGのゲームとかで、犬とか牛もいる癖に『犬型の魔物』とか『牛型の魔物』がいるゲームってあるじゃないですか。あれってちょっと疑問だったんですよね。魔物と動物を分ける定義は何なんだろうって。
それを自分流に解釈してみました。そんなお話です。




