↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/80

4人目の仲間

 ミミカのお蔭で発覚した衝撃の事実について考えるのは、残念だが後回しだ。

 取り敢えずは街の混乱を収める必要があった。

 俺達は中央部に戻って、魔物を駆除した旨を伝えることにした。

 まずは俺の店に非難してきた人々に伝えたのだが、誰もが半信半疑と言う体でなかなか出て行ってくれなかった。

 俺達が一緒に行くことを約束すると、ようやく数人が東部に向かうと言ってくれた。

 俺達はそれらの人々に事実を見せて、拡散してもらう様に頼んだ。

 少し時間は掛かるかもしれないが、これで騒ぎも収まっていくだろう。

 そして、俺達がそこまでやった時、ようやくガリアスの衛兵たちが10人ほど到着した。


「君達! 大丈夫か?」

「魔物が出たって聞いて急いで駆けつけて来たんだが」

 

  一体どこが『急いで』なのか。張り倒してやりたくなったが、それには俺よりも適任がいる。


「お前たち! 遅いぞ! 何をやっていた!」

「レ、レイラ様!?」

「な、何故ここに……」


 レイラの顔は一般市民にまで知れ渡っているわけでは無いが、流石に衛兵は知っている。

 その一喝の効果は絶大だ。


「そんなことはどうでも良い。

 魔物は私達が全て片づけた。本来ならお前たちの仕事だ。これは職務怠慢と言われても仕方があるまい」


 レイラに叱られた衛兵達は、皆一様に青ざめている。


「私とて、全ての責がお前たちにあるとは思っていない。出動には許可が必要だったりと、時間が掛かる理由もあろう。だが、それを差し引いても遅すぎる。現実に死人も出ているんだぞ!」


 レイラの言う通り。それ程大人数ではないが、死人が出ている。怪我人を含めればもっと多い。


「少しでもその汚名を雪ぎたくば、街の復興に全力を尽くせ。第一に怪我人の手当て。その後は街の修繕、魔物の死体の除去、及び死傷者への補償だ。さあ、急ぎ取り掛かれ!」

『はい!』


 衛兵達は、自分の仕事をこなすべく各地に散っていった。


「さあ、これでもう大丈夫だ。ガリアスの衛兵たちは、組織的な弱点として初動は遅いが、無能では無い。今言ったことぐらいなら、十分にやり遂げるだろう」


 レイラは、俺達の方を振り向いて笑った。


「でも良いのか? 命令系統とか崩れるんじゃ……」

「大丈夫だろう。私は暫定的な指示をしたに過ぎない。町が落ち着けば、衛兵たちも改めて上官に指示を仰ぐさ。そう言うところは臨機応変にやらないとな」


 そう言う物なのだろうか。


「えっと、話は終わった? ボク、帰っていいかな?」


 ノアがうんざりしたような顔で言った。


「はあ……ボクは自分の工房だけ守るつもりだったのに……」

「ああ、悪かったな。だが、助かったよ」

「うん。感謝してよね」


 ノアは偉そうに言って俺達に背を向けたのだが、


「でもまあ、ボクも助かったかな。ありがとね」


 と背を向けたまま言った。

 本当に素直じゃない奴……。


「あの人がノアさんですか?」

「なんかちょっと変な人だね」


 初対面のリネットとミミカは、やはり俺と同じ感想を持ったようだ。


「しかし、ノアは大丈夫だろうか?」

「大丈夫ってどういうことだよ? 魔物は全部倒したんだぞ?」

「いや、ノアの工房の話だ。これだけ街が壊れているんだ。ノアの工房も、多少の被害を受けている可能性があるのではないか」


 レイラの言う通りだ。元々あいつの工房はドアが吹き飛んでいたりする不用心な造り。猿に侵入されたとしてもおかしくは無い。

 もしノアの工房が荒らされたとしたら、そこから連れ出してしまった俺達に全く非が無いとは言えない。


「一応様子を見に行こうか」


 俺達は、別れたばかりだというのにノアの後を追った。

 そしてノアの工房の前に辿り着いたのだが……。


「うわ、これは酷い……」

 

ノアの工房は、周囲の建物の中でも、一際酷く崩壊していた。壁や屋根なんか吹き飛んでいるし、窓もすべて割れて……ってちょっと待て。崩壊し過ぎだろ。猿にここまでの破壊活動が出来るか?

俺達は詳しい事情を聞こうと、工房に入った。

ノアは、入り口付近に呆然と立ち尽くしていた。


「ノア?」

「あ、ハルイチさん。どうしてここに?」

「やっぱり心配だから様子を見に来たんだが……」

「うん。予想以上に酷いね」


 内部の様子を見て、リネットとミミカも悲痛な声をあげる。


「本当に酷いです……」

「うん。まるでガラクタの山だよ……」


 残念ながらそれは元からだ。

 しかし、それを抜きにしても内部は酷いことになっていた。

 床や壁も所々焦げていたりするし、灰を被っていたりも……これ本当に猿の仕業か?


「あ、原因が分かった」


 ノアは、工房の中に入り、ガラクタの山から何かを引っ張り出した。

 それは、先程の猿の死体だった。その死体は体が焦げていて、結構悲惨な有様だ。


「こいつ……ボクの爆弾を誤って爆発させたな」

「お前……まだ爆弾持ってたのかよ」

「うん。いつか誰かに売れるかと思ってそこら辺に転がしといたのに……」


 転がしとくな、そんなもん。


「あーあ……猿のせいで工房が滅茶苦茶だ……」


 半分は自業自得だと思うんだけど。

 とは言え、この状況には同情しなくもない。こんな工房じゃ、雨も防げないし、はっきり言って家として機能しない。

 俺はリネット達に小声で相談した。


「なあ、みんな。ノアを俺達の店に誘ってもいいかな?」


 俺がそう言ったら、反応は三者三様だ。


「ハルイチ……本気で言っているのか?」

「えっと、私はどちらとも言えないです……」

「ミミカは賛成! 仲間が増えるのは嬉しいよ!」


 レイラを説得すれば何とかなるか。


「あいつの技術者としての腕は確かだ。雇えば絶対戦力になるぞ」

「それはそうかもしれないけど……」

「家を爆発させるような人はちょっと……」


 やっぱりそれが一番の問題か。


「じゃあ、家の中では火薬の取り扱いを禁止にするから」

「しっかり約束させることが出来るなら、いいぞ」

「私もです」

「わかった」


 俺は、頭を抱えるノアに近づいた。


「ノア」

「何?」


 すごく不機嫌そうな顔で乃はこちらを向いた。


「君を雇いたいんだけど、どうだろうか?」

「それ、今する様な話?」

「今だからするのさ。俺の店は、基本的に衣食住支給だ。君は住む家を無くしたわけだし、悪くない話だろう」

「へえ、確かに。悪くないね」

「ただし、二つ条件がある。一つ目、俺は住処を無償で提供するわけじゃない。ちゃんと働いてもらう」

「働くって……何をすればいいのさ? 確かあんたの家って飲食店でしょ? 給仕でもすればいいの?」


 こんな不愛想な変人にそんな仕事させられるわけがない。


「君の仕事は商品の開発だ。一般市民が欲しがるような、便利な道具を作ってくれ」

「設備さえ揃えてもらえれば、やるよ」

「よし、後二つ目の条件。当面火薬の使用は禁止だ」

「えっ……」


 何故かノアは深刻な顔になった。


「火薬を使えない代わりに屋根のある家……火薬を使えるかわりに屋根の無い家……」

 

 ぶつぶつ呟きながら葛藤している。こいつの人生で火薬はそこまで重要なものなのか。

再び顔を上げた時、ノアはまさに断腸の思いと言う顔をしていた。


「わ、わかった。受け入れる……」


 ……本当に火薬を使わせないかどうか、当面は見張る必要がありそうだな……。


***


 その日の番、俺達はささやかながらもノアの歓迎会を催した。

 いつもよりちょっと豪華な材料を使い、リネットが腕を振るった。


「へえ、美味しいじゃん。リネットさんって料理上手いんだ」

「そう言ってもらえて良かったです」


 当然お互いの自己紹介なんかは終わっているので、今は名前で呼び合っている。


「お前は普段の食生活が終わってそうだったからな。今までどんなもの食って来たんだ」

「うーん。大体が豆、乾パン、水。これで生きてきたかな」

「よくそれで生きてこられましたね……」

「ほんと。ミミカなら絶対死んじゃうよ……」


 まあ、これからこの家に住むのなら、食生活は改善されるだろうが……。

 やはり話題の中心はノア。彼女の変人すぎる私生活は、中々話としては面白かった。

 そんな話をしながら食事も終えて、俺達はそろそろお開きにしようかと思った時、ノアがこんなことを言い出した。


「そう言えばさ。みんなの名前は聞いたけど、まだ役割とか聞いてないな。みんな、普段はどんな仕事してるの?」


 一番近くにいたリネットが最初に答える。


「私は調理がメインでした。最近は錬金術も始めたので、商品開発もしています」

「ああ。今日はありがとね。リネットさんの錬金術のお蔭で助かったよ」

「いえいえ」


 次はレイラだ。


「私は主にこの周辺の流通ルートを確保する仕事だな」

「まあ、侯爵令嬢だしね。土地勘はあるよね」

「そう言う事だ」


 続いてミミカ。


「ミミカは接客が主な仕事かな。ミミカ、サーカスにいたからお客さんを呼ぶのは得意だよ!」

「それは凄いね。いつか見てみたいよ」

「ノアの頼みならいつでもいいよ!」


 そして、満を持して俺だ。


「俺は店長だ。仕事は全体の統括かな」

「ふーん」


 何か俺の時だけ反応が薄すぎるぞ……。


「おい。俺は店長だぞ。もっと関心したらどうだ」

「だってよく分かんないんだもん。その仕事が。

 リネットさんは錬金術。レイラさんは優れた土地勘。ミミカは大道芸。みんな自分の長所を活かしてる。ハルイチさんの特技って何……?」

「俺の特技……?」


 そう言われるとちょっと困る。SNSで『いいね!』を集めるのは得意だけど、この世界では何の意味も無い。

 俺は悩んだ末、こう答えた。


「い、意識が高い?」

「何それ。意味わかんないよ」


 案の定ノアは呆れた顔になった。

 しかし、次の瞬間には笑顔に変わった。


「しょうがないなあ。頼りないハルイチの為、ボクも力を貸してあげるよ」


 そう言って笑うノアの顔は、悔しいが魅力的だった。

ノアがデレるのはもうちょっと先の様です。


キャラも増えて来たし、そろそろ登場人物のまとめでも書いてみようかと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。