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朝の一幕

「え、えっと……た、ただいま?」


 何だか変な気がしたが、他に言葉も思いつかないのでそう言ってリネットの家に戻った。


「あ! お帰りなさい! ハルイチさん!」


 リネットは、相変わらず笑顔で出迎えてくれた。だが、今はその隣に目が行ってしまう。

 そこには、髭面のいかついおっさんが腕を組んで突っ立っていた。何だこの人……2m近くあるんじゃないか……?


「おう、起きたのか……」


 その見た目に違わぬ野太い声で、おっさんが言う。


「あ! まだ紹介してなかったですね! この人はマラカイ。私のお父さんです!」


 俺は、「どうも」と会釈したのだが、マラカイさんはフン、と鼻を鳴らしただけだ。

 ……歓迎されてないな。


「お兄ちゃん起きたって?」


 今度は別の、低い女性の声が上の方から聞こえた。

 そちらに目をやると、これまたえらく恰幅の良いおばさんが二階から降りて来た。


「なかなか起きないから心配してたんだよ。でも、元気になったみたいで良かったよ!」


 そう言っておばさんは俺の肩をバシバシと叩く。正直痛い……。


「もう! お母さん! ハルイチさんが困ってるでしょ!? 止めてよ!」

 

リネットが割って入ってくれて助かった。


「御免なさい、ハルイチさん。こっちの女性がアナベル。私のお母さん」

「よろしく。アナベルだよ」


 アナベルさんは、マラカイさんとは打って変わって友好的な笑みを浮かべている。


「初めまして、ハルイチです」

「変な名前だねえ!」

「もう! お母さん!」


 リネットに窘められながらも、アナベルさんは陽気な笑顔を浮かべている。

 まあ、悪気はなさそうだから腹も立たないかな。


「で? 何処の誰なんだこいつは?」


 むっつりした顔でマラカイさんが言う。こっちは俺に対する嫌悪感がたっぷり滲み出ている。


「ハルイチさん、記憶喪失みたいなの。なんかニホンとかトドウフケンとか訳分からない事ばっかり言うし」


 まあ、今の俺の様子を見たらそう思っても仕方がないか。実際には違うのだが、説明するのも大変だから話を合わせておこう。


「実はそうなんです。ここが何処とか思い出せなくて」

「それは困ったねえ」

「どうしよう? お父さん」


 二人の女性は心配げな顔を向けてくれるのだが、マラカイさんは、


「知るか。おいお前。元気になったのなら出て行ってもらおう」


 といかつい顔だ。

 まったく、温かみの足りない人だなあ……。


「もう! お父さん!」

「だがな、リネット。知らない奴をいつまでも泊めておくわけにはいかない。それに、ロルカ村よりもシリスタの街の方が情報も集まる。こいつもそこに行った方が良いだろう」

「でも! そんなすぐに追い出すようにしなくたって!」

「え、えっと、あの」

「まあまあ! そう言う話は後でしましょ!」


 アナベルさんが二人の言い合いに割って入る。まさしく『母ちゃん』と言う感じの雄姿だ。


「ほら、あんた! そろそろ開店の時間だよ!」

「む、むう……」


 マラカイさんは、不満げな表情ながらもアナベルさんに無理やり連れて行かれた。

 そんなアナベルさんは、去り際に振り返って一言。


「あ、リネット! お前、午前の仕事は休んでいいからね! そのお兄ちゃんに村を案内してあげな!」


 そう言ってウインクして見せた。


「ま、待て。お父さんは許さんぞ! 男と二人きりなど!」

「はいはい。さっさと行こうね。まったく、いつまでも子離れできないんだから……」


 マラカイさんは必死で不服を述べてみたが、やっぱりアナベルさんには逆らえないのかそのまま連れて行かれた。


「じゃ、じゃあ! 行きましょうか!」

「お、おう」


 俺はリネットと共に、村を見て回ることになった。

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