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新しい土地で

 俺達が次にやってきた街はガリアスと言う名前だ。

 そう、あのシムが活動の拠点としていた街だ。

 ファニーさんが『リノリアより大きい街』と言っていただけのことはある。何と人口は9万人。ロルカ村の900倍。……あの村と比べても仕方ないけどな。でも、シリスタと比べても45倍。一気に都会に来たものだ。

 さて、ここまで都会に来てしまったら、最早自分の住む街だけで商売を考えてはいられない。俺はここに来る前に、リネットやレイラから今一度ラオネル公国について学んだ。

 そもそもラオネル公国は『公国』と言うだけのことはあって国王がいなく、8の貴族の家系によって分割統治される国である。勿論名目上の国家元首はいるが、実情として分割統治になっていると捉えてもらっていい。

 俺達が今まで住んでいたロルカ村やシリスタ、それにリノリアなんかは8つに分かれた領土の一つ、アルバーン地方に分類される、そして、これから俺達が向かうガリアスは、アルバーン地方の中心地。

 ついでに憶えておきたいのが、この国の中心地の情報だな。この国で最も栄える地方は、ダドフィールド地方と言う。そしてその中心地、つまりこの国の首都の名前はビルヒジスタ。

 分かりやすくこの国を日本に例えると、アルバーン地方は北海道。ガリアスは札幌だ。ダドフィールド地方は関東で、ビルヒジスタが東京ってところか。だが、北海道と違って海で分かれていないので、2つの都市間の交流は活発だ。

 これからは首都との流通も必要になるだろうし、頭に入れておく必要があるな。


 さて、次に必要な情報はガリアスと言う街の情報だな。

 ファニーさんに聞いたことや、自分の足で調べて回ってわかったのは次のようなことだ。


・ガリアスはアルバーン地方の中心にあり、同地域の他の街へのアクセスは悪くない。ビルヒジスタへも5日ほどで行ける。

・広大な平原に作られた町であり、水産資源や石炭などは基本的に他の地域から仕入れる。

・この街は東西南北、そして中央の5つの区域に大きく分けられる。

・中央は経済の中心地。領主であるアルバーン侯爵家の屋敷をはじめ、色々な店が立ち並ぶ。地価は高い。

・南部は貧民街。地価は安いが、治安は悪い。

・北部は高級住宅地。済むには良いが、商売には適さない。

・西部は平均的な住宅街。地価は普通。治安も悪くない。

・東部は工房などが立ち並ぶ地域。工房を開くならともかく、店を開くような土地じゃない。


 これらの情報を踏まえて、俺達4人は話し合いを始めた。


「やはり西部ではないでしょうか? シリスタでのことを考えると、私達のお店は住宅地でこそ真価を発揮します」

「いや、北部も悪くはあるまい。ここは富豪が多い地域だ。金払いもいい者が多いぞ」

「南部は駄目かな? 地価安いよ。安いってのはいいことだよ」


 ……見事にバラバラになったな。


「俺は中央部を考えているのだが」

「何でです?」

「ここが経済の中心地だからな。人が集まる場所はやっぱり商売がしやすい」

「だが、競合する飲食店もあるだろう?」

「いや喫茶店と言う形式は俺達独自のものだ」


 少なくとも、この世界では。


「あまり競合する相手はいないだろう」

「でもでも、中央部は仕事場としての意味合いが大きいんでしょ? みんな夜になったら住宅地に帰っちゃうよ?」

「そうですよ。夜の売り上げが減ります」

「確かにそれは痛い所なんだけど……」


 少し言いにくいことではあるが、はっきり言っておかねばならないか。


「俺は、今後も喫茶店だけを主力にしていくつもりは無い。シリスタでだって、茶葉の販売などで大きな利益を得ることが出来た。これを別の商品も取り扱う様にしていけば、より大きな利益が得られるだろう」


 早い話、飲食店は小売店である。出せる利益には限界がある。チェーン展開でも出来れば話は別だが、その概念が無いこの世界では難しい。それならば、もっともうかる仕事は卸である。


「喫茶店を止めるのか?」

「いや、そのつもりは無い。あくまで、扱う商品を広げると言うだけだ」


 実際の所、いつかやめるかもしれないとは思っている。しかし、リネットはその店のスタイルに愛着があるだろうし、彼女がそれを求める限りはやめない方が良い。


「うーん……今後の展開とか、ちょっと難しいことはわからないですけど……。確かに茶葉を売る様な仕事なら中央部の方がやりやすいのかもしれませんね」

「そうだね! ミミカも賛成!」


 リネットとミミカは賛成してくれたのだが、レイラは渋い顔だ。


「中央部か、いよいよ近づいて来たな……」

「レイラ?」

「いや、何でもない」


 ここの所、レイラの様子はどこかおかしい。

 ガリアスの街に行くと決めた時も、彼女は渋った。何か近づきたくない理由でもあるのだろうか? 

だが、直接聞いても理由は教えてもらえなかった。俺も彼女の望まないことはしたくないが、流石に理由も話してもらえないのでは考慮も出来ない。

 

 結局、レイラは反対らしい反対はしなかった。

 少し気になることはあったが、結局俺達は中央部の土地を買うことにした。

新章スタートです。

新しい仲間、新しい力など、物語は加速する予定です。

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