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ブレーンストーミングしてみよう

「でも、商人さんにアピールできる商品ってどんなものなんでしょうか?」


 翌日。昼食を早く切り上げた俺とリネットは、早速厨房で新商品の開発に取り掛かっていた。


「まあ、いきなりこれが答えだ! っていうのを考え出すのは無理だな。こう言うのはブレーンストーミングで行ってみようが」

「ぶれーんすとーみんぐ? 何ですか? それ」

「えっと、確か、取りあえず意見を出しまくる議論の仕方だったと思う」

「何か普通じゃないですか?」

「まあ、意見の精査というか、吟味を後回しにして意見を多く出すことを優先するぐらいに考えておけばいいよ」


 本来はもうちょっと大人数でやるものだけどな。


「じゃあ、やって見るか。取り敢えず、思いついたことを言ってみる感じで、はい」

「腸詰を挟んだパン」

「商品価値のあるパン」

「ジャムがメインのパン」

「宣伝になるパン」

「カリッと焼き上げたパン」

「低価格帯のパン」

「二つの味が楽しめるパン」

「逆に、高価格帯のパン」

「目で見て楽しいパン」

「…………」

「どうしたんですか?」


 どうも、俺とリネットの商品に対する者の考え方が違う気がする。このままではいくらブレ-ンストーミングしてみたところで、平行線のままだろう。


「リネット……非常に言いにくいのだが、君は少しずれてる」

「ええ!? ど、何処がですか!?」

「俺はまず、コンセプトと言うか、どういうパンを作ろうかという事を考えるつもりなんだ」

「はい。だから私もそのつもりで意見を……」


 うーん、どう言ったらうまく伝わるんだろうかな?


「もう少し大きい括りで考えて欲しんだ。例えば、君はさっき『腸詰を挟んだパン』『ジャムがメインのパン』『カリッと焼き上げたパン』『二つの味が楽しめるパン』という意見を出してくれたけれど、これらは結局『味にこだわったパン』の一言でまとめることが出来る。協議の結果、『味にこだわったパン』をつくろうという話になったら有効な意見だが、今は少し違う」

「えっと、『目で見て楽しいパン』は?」

「これはそれら4つとは少し違うな。カテゴライズ……種類分けするなら『味以外を売りにしたパン』とかそう言うところになるか。良い意見だと思う」

「そ、そうですか!」


 ちょっとしょんぼりしていたリネットが笑顔になる。うん、やっぱり褒めるのは大事だよな、褒めるのは。


「でも、ハルイチさんの言いたいことはわかりました。私、もうちょっと大きい視野で考えて見ます」

「頼むよ」

「えっと、子供向けのパン」

「ロルカ村の特産品を使ったパン」

「体重が気になる女性向けのパン」

「安く作れるパン」

「逆に、がっつり食べたい人向けのパン」

「ちょっと待ってくれ」

「何です?」


 可愛らしく小首を傾げるリネットだが、やっぱりずれている。


「リネット、君、大前提を忘れてないか?」

「はい?」

「『外の世界にアピールする商品』だぞ? 君、村人向けの商品を考えてないか?」

「あ」


 リネットは一瞬フリーズしたが、すぐに取り繕う様に言い募って来た。


「ほ、ほら! 商人の人に売り込めばいいんですよ! 『これは子供に受けます』『これは女性向けです』って!」

「それで、シリスタの町に売り出すのか?」

「出来ませんかね?」

「きついんじゃないかな。そもそも、このうちで作れるパンはどれくらい持つんだ?」


 クーラーボックスなどが無い世界だ。それほど長持ちするとは思えない。


「ものによって差はありますけど、4日か5日もすれば腐ってしまいます」

「だろうね」


 ロルカ村からシリスタまで、大体2日。シリスタで売ることを前提とした商品を開発するのは意味が無いかも知れない。

 せめてもう少し長持ちすれば…………待てよ。


「なあ、リネット。リネットの知る限りで良い。一番長持ちする食べ物ってなんだ?」

「乾パン、でしょうか? 塩漬けした肉なんかも持つと言えば持ちますけど、やっぱり乾パンには適わないでしょう」

「それって美味しいかな?」

「まさか。パン屋の私が言うのも難ですけど、お世辞にも美味しいとは言えませんよ。味はしないし、食べると口の中はパサパサです。大体、これは元々戦場に行く兵士の方が携行するような物ですよ。町に住んでいるなら、食べる必要のないものです」

「旅の商人なんかは食べないのかな?」

「よっぽど長距離の移動なら携行ぐらいするかもしれませんけど……。基本商人さんは人がいるところにしか行かないですから。食品は現地調達が基本でしょう」

「成程……。でもそれだと、金がかかりそうだな。乾パンなんかの方が安いんじゃないのか?」

「それでも食べたくないんですよ。乾パンって本当に美味しくないですから」


 控えめなリネットがここまで言うとは……。この世界の乾パンはそれほどまでにまずいのか……待てよ。


「それだ!」

「どれです?」

「保存食だよ。長持ちして、且つ美味しいパンを作ることが出来たら、商人に需要が見込める。そして、シリスタの町で売ることも出来る」

「成程……もし出来れば売れるかもしれませんね」

「その線で行ってみようか」


 と言う訳で、俺達が考えるべき商品は『味の良い保存食として価値あるパン』となった。

少し展開が遅かったかもしれません。

その分、次は早く投稿できるように頑張ります

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