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中曽根心中の心中  作者: 小高まあな
第三章 飯事のような
9/32

3−3

 ここなは散々プリクラ機を吟味し、決定する。

「……何か違うのか、これ」

「色々違うよー。あれはね」

 と別の機種を指差し、

「色白になってデカ目になるんだけど、デカ目になりすぎる」

「でかめ?」

「んっと、機械が勝手に目の辺りを判断して強調してくれるの」

 いいながら京介を見て、にやりと笑う。

「そういうキョースケもちょっと見てみたいけど」

「……いやだな」

「でしょ? だから、まあまあ普通のこれ」

 少し間が抜けた会話をしながら、ここなが硬貨をいれる。

 甲高い機械音声にも、ここなは慣れた手つきで対応する。

「……初めてなんだけど」

 京介が小さく呟くと、

「ほんと? やった、はつたいけーん」

 ここなが明るく返した。

「それじゃあ、撮るよ。ポーズを決めてね」

 機械音声に、ここなは京介の右腕をかかえるようにして組むと、空いた手でピースサインを作る。顔の横で、小顔に見えるように。

 京介は少し慌てたあと、ここなに掴まれていない方の手で、同じようにピースした。

 カウントダウンの後、写真が撮られる。

「次のポーズ行くよ」

 機械音声。

「って、まだあるのかよっ」

「そうだよー、六パターンぐらいかな」

 にっこり微笑むここなに、困った顔を返すしかできなかった。

 

「落書きコーナー」

 高い機械音声と、片手に持たされたペン状のものに、京介は固まる。

 横のここなを見ると、慣れた調子で何かを書き込んでいる。

「あの、ココ?」

「んー」

「どうすれば?」

 ここなは顔をあげ、

「任せた」

 凄くいい笑顔で親指を立てた。

 京介はよくわからないまま、スタンプとやらを押してみることにした。


 出てきた写真を見て、ここなは満足そうに頷く。

「どう?」

 京介に見せると、

「あー、俺、顔が強張ってる」

 苦笑い。

「確かにー。でもキョースケっぽい」

「えー、どういうことだよ」

 ここなは楽しそうに笑う。

 ここなが落書きしたプリクラには、初プリとか二人の名前とかが、女の子女の子した丸文字で書かれている。

 京介が一枚だけかろうじて落書きしたものには、

「でも、何故これ、大仏?」

 大仏のスタンプが二人の間に押されていた。

「いや、よくわからなくて」

 ごにょごにょっと答える。

「キョースケらしくていいね。これが一番好きかも」

 ここなは楽しそうに笑った。

「っていうか、大仏のスタンプなんかあるんだねー。知らなかった。誰得なのかなぁ?」

 機械の横にぶらさがっていた鋏でプリクラ台紙を半分に切ると、

「はい」

 京介に手渡した。

 十六分割の半分、八枚が京介の手元にきた。

「……俺がこんなにもらってどうしろと? ここな持ってなよ」

 そういって返そうとするのを、

「いいから。キョースケも持ってなさい」

 ここなは少し睨んで押し返す。

「いや、でも本当……」

「私だってこんなにもってても困るもん。ほらほら」

「……ん、わかった」

 京介は少し迷ったあと、素直に頷くと、財布にそれをしまった。

 それをみてここなは満足そうに頷いた。

「帰ろうか」

 京介が言うと、

「あ、でもぬいぐるみとってね」

 ここなが当たり前のように、ユーフォーキャッチャーを指差し、笑った。

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