3−3
ここなは散々プリクラ機を吟味し、決定する。
「……何か違うのか、これ」
「色々違うよー。あれはね」
と別の機種を指差し、
「色白になってデカ目になるんだけど、デカ目になりすぎる」
「でかめ?」
「んっと、機械が勝手に目の辺りを判断して強調してくれるの」
いいながら京介を見て、にやりと笑う。
「そういうキョースケもちょっと見てみたいけど」
「……いやだな」
「でしょ? だから、まあまあ普通のこれ」
少し間が抜けた会話をしながら、ここなが硬貨をいれる。
甲高い機械音声にも、ここなは慣れた手つきで対応する。
「……初めてなんだけど」
京介が小さく呟くと、
「ほんと? やった、はつたいけーん」
ここなが明るく返した。
「それじゃあ、撮るよ。ポーズを決めてね」
機械音声に、ここなは京介の右腕をかかえるようにして組むと、空いた手でピースサインを作る。顔の横で、小顔に見えるように。
京介は少し慌てたあと、ここなに掴まれていない方の手で、同じようにピースした。
カウントダウンの後、写真が撮られる。
「次のポーズ行くよ」
機械音声。
「って、まだあるのかよっ」
「そうだよー、六パターンぐらいかな」
にっこり微笑むここなに、困った顔を返すしかできなかった。
「落書きコーナー」
高い機械音声と、片手に持たされたペン状のものに、京介は固まる。
横のここなを見ると、慣れた調子で何かを書き込んでいる。
「あの、ココ?」
「んー」
「どうすれば?」
ここなは顔をあげ、
「任せた」
凄くいい笑顔で親指を立てた。
京介はよくわからないまま、スタンプとやらを押してみることにした。
出てきた写真を見て、ここなは満足そうに頷く。
「どう?」
京介に見せると、
「あー、俺、顔が強張ってる」
苦笑い。
「確かにー。でもキョースケっぽい」
「えー、どういうことだよ」
ここなは楽しそうに笑う。
ここなが落書きしたプリクラには、初プリとか二人の名前とかが、女の子女の子した丸文字で書かれている。
京介が一枚だけかろうじて落書きしたものには、
「でも、何故これ、大仏?」
大仏のスタンプが二人の間に押されていた。
「いや、よくわからなくて」
ごにょごにょっと答える。
「キョースケらしくていいね。これが一番好きかも」
ここなは楽しそうに笑った。
「っていうか、大仏のスタンプなんかあるんだねー。知らなかった。誰得なのかなぁ?」
機械の横にぶらさがっていた鋏でプリクラ台紙を半分に切ると、
「はい」
京介に手渡した。
十六分割の半分、八枚が京介の手元にきた。
「……俺がこんなにもらってどうしろと? ここな持ってなよ」
そういって返そうとするのを、
「いいから。キョースケも持ってなさい」
ここなは少し睨んで押し返す。
「いや、でも本当……」
「私だってこんなにもってても困るもん。ほらほら」
「……ん、わかった」
京介は少し迷ったあと、素直に頷くと、財布にそれをしまった。
それをみてここなは満足そうに頷いた。
「帰ろうか」
京介が言うと、
「あ、でもぬいぐるみとってね」
ここなが当たり前のように、ユーフォーキャッチャーを指差し、笑った。