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中曽根心中の心中  作者: 小高まあな
第八章 問答の末に
27/32

8−2

 ここなが目を醒ましたとき、最初に視界に入ってきたのは、黒髪の頭だった。

 事態が把握出来ず、首を傾げる。

 左手に巻かれた包帯に、眠る前にあったことを思い出し、眉をひそめた。

 いくらなんでも錯乱し過ぎていた、と少し冷静になって思う。京介には迷惑ばかりかけている。

「キョースケ?」

 小声で名前を呼んでみる。

 ベッドの脇の床に座り込んで、ベッドに顔を埋めるようにして、うつぶせで京介は眠っていた。

 その髪をそっと撫でる。

 さらさら、とこぼれる。意外と、髪の毛さらさらだな、とどうでもいいことを思う。

「ん」

 京介が小さくうめき、

「……ココ」

 顔をあげた。

「……あー、悪い、寝ていた」

 少し伸びをする。

「ううん、ありがとう」

 素直に微笑めた。

 京介は、眠る前のことなんて何でもないと言いたげに笑う。

「今は……、夜の七時か。微妙に長い事寝ていたな」

「ん」

「なんか食べるか?」

 京介の言葉に少し悩んで、頷いた。

 京介は満足そうに微笑む。

「なんか作るよ」

 京介は立ち上がり、ここなに右手を差し出す。

 ここなは少しためらって、素直にその手を握った。

「行こう」

 その手に導かれるようにして、ダイニングに向かう。

 こつん、と足が何かを蹴った。

「あ」

 それが何かを確認して、小さく声をあげる。

「ああ、そうだ」

 京介は優しく微笑むと、ここなが蹴飛ばしたジッポを拾い上げた。

「これ、ありがとう。凄く嬉しい。お礼、言えてなかったから」

 京介の手に握られたジッポは一つじゃなかった。

「あの、それ」

「お揃い、やったね」

 嬉しそうに京介が笑う。

 そして、ここなの方を手渡した。

「……うん」

 ここなは小さく頷く。

「ありがとう、ココ」

 本当に優しく、嬉しそうに京介が微笑む。

「ううん」

 そういえば、この顔がずっと見たかったのだと思いだして、ここなはゆっくりと微笑んだ。


 出来上がった炒飯を頬張る。

「ごめん、簡単なもので」

 謝る京介に首を横に振ってみせる。

「美味しい」

 ぱらぱらご飯をつつむような卵。

「本物みたい」

「本物ってなにさ」

 呆れたように笑う。

「ありがとう」

 頭を下げると京介は、少し困惑した表情をみせてから、

「どういたしまして」

 柔らかく微笑んだ。

「……ココ」

「ん?」

「これ食べたら、ちょっと出かけてきていいかな?」

「え?」

 思わずスプーンを取り落としそうになる。

 顔色を変えたここなに、京介は少し慌てて、

「商店街。明日のバイトのこととか、ちょっと確認」

「……うん」

 心細そうに頷くここなを見て、

「用事終わったら、すぐ帰ってくるから」

 ね? と子どもをあやすように笑う。

「……絶対ね?」

 下から伺うようなここなの顔に、

「もちろん」

 京介は力強く頷いた。

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