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中曽根心中の心中  作者: 小高まあな
第五章 問題視と楽観視
16/32

5−4

「久慈さんお久しぶりですぅー。ちっとも来てくれないからぁ。メールの返事もくれないしぃ」

 ここなの言葉に、常連客である久慈は黙って一つ頷いた。

 久慈は、以前は毎週のように来ていたのに、最近姿を見せていなかった。

「仕事、忙しくて」

 ぼそぼそと、呟かれた言葉に、

「じゃあ、今日はゆっくりしてくださいねぇ」

 いつものように笑いかける。

「ここなちゃん」

「はぁい?」

 小首を傾げる。

「最近も、同じ?」

 それは彼が来るといつも言う言葉で、

「ええ、なんにも変わらないです」

 微笑んだまま、答える。

「生き辛い?」

「そうですねー」

「心中したい?」

「出来たら良いですよねー」

 朗らかに答える。

 久慈は何かに満足したかのように、二度三度頷いた。

「ほらほら、久慈さん飲んでー」

 お酒のグラスを渡した。

 隣のテーブルで、楽しそうな笑い声がする。

 俯いた久慈の顔は、長い髪に隠れて見えない。

 このいつもの会話をしたら、久慈はしばらく話さない。

 明るく会話とかを求めていない。彼もまた、自分よりも下の人間を見て安心しているのだろう。だってなんか暗いし、周りに馴染めなさそうだし、とこっそりここなは思っていた。

 それで構わない。減る自尊心は既に無くなったから、それで構わない。

 久慈がゆっくりと煙草を取り出した。

「はい」

 条件反射で火を差し出す。

 煙草に火がつく。

「久慈さん、ジッポお洒落ですねー」

 煙草と一緒に取り出されたジッポを見つめる。

「こういうの、どこで買われるんですかー?」

 ここなの問にぼそぼそっと久慈が答える。

「へー、お洒落ー、かっこいー」

 言いながら、ある算段を脳内で立てた。

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