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永劫のセツナ  作者: ALOE
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代償

クロフォードの提案によって村を案内する事になった長老ルモルグは

一抹の不安を覚えるも


「ええ もちろんですとも」

と 笑顔で対応した。


「隊長、俺はここで待機してますわ」

そう言って、岩の上にどかっと腰を下ろした。


「ジーン、勝手な行動はするなよ」

とクロフォードが言うと


「へいへい」

と気のない返事をするジーン


クロフォードは舌打ちしながら

ルモルグについていった。


残ったジーンは村を見渡し、苛立たしげに舌打ちをする。

「……胸糞悪ぃ場所だぜ」

吐き捨てるように言う。


家々の扉は閉ざされ、誰も外に出てこない。

だが視線だけは感じる。

隠れて見ているのだ。


「出てこいよ。歓迎してくれるんじゃなかったのか?」

返事はない。

「チッ ゴミどもが」

ジーンはその場に唾を吐いた。


ふと子供が数人駆けて来る

追いかけっこをしているのだろうか


そのうち一番最後に走って来た女の子が

ジーンの目の前で転んだ。


年のころは4~5歳ほどか。


ジーンが見ると

その女の子が持っていた餅菓子が、ジーンのブーツにベットリと

付着していた。


「おい」

ジーンがぎらついた目で女の子を睨む。


少女が顔を上げる。

片方の瞳は金色、もう片方は濁った灰色。

耳はわずかに尖り、頬には鱗のようなものが浮いている。


「これが忌み子か、気持ち悪いな おい」

ジーンはニヤつきながら少女を見た。


少女は恐怖で何も言えず、ただ震えている。


ジーンは少女の顎をつかみ、持ち上げた。


「どうしてくれんだ? ああ?

靴が汚れたじゃねえかよ」


その時

「やめろ!」


「あ?」


見ると、少女と同じような外見をした男の子が立っていた。


「ごめんなさい。妹に悪気はなかったんだ」


そう言って頭を下げた。


「お前、それで許されると思ってんのか?」


ジーンは女の子をつかんだ手を乱暴に離し

女の子は地面に落下した。


女の子は

咳き込みながら息を上げている。


「ジュリ!」

男の子はそう言って妹を抱きかかえた。



「おいガキ、俺が今から言う事を成功させれば許してやるよ。」


「…?」

男の子はジーンを見上げた。


ジーンは懐から何かを取り出し、それに手をかざし詠唱すると

それは長い茨のロープとなった。


そのロープはするすると延びていき、妹の体に巻き付いた。

棘のついた茨がジュリの体に食い込んでいく。


「お…お兄…ちゃ… 痛い…」


「やめろ!」

兄はそう言ってジーンにすがる。

が 片手で払われ、吹き飛ばされた。


「気安く触んじゃねえよ ガキが」


ジーンはロープの先を手で器用に操りながら

巨木の枝に渡した。


ジュリは20mほどの高さに吊り上げられた。


「おい これを持て」


尖った棘がたくさん生えた茨のロープの端を

男の子に手渡す。


「しっかり握れよ。」

ジーンは白い歯を見せて不気味な笑みを見せる。


男の子はそのロープを恐る恐る握る。

その瞬間


「離すぜ ほら」

と、ジーンは握っていたロープを離す。


その瞬間女の子が落下し始める。


少し落下したところで止まる。

「お兄ちゃん…」


ジュリは大声で泣いている。


男の子の手のひらに棘が食い込み

激痛が走る。


「う…ううう…」

兄は涙を流しながら、妹の重さに耐える。


「1時間だ。1時間耐えれば許してやる。」

ジーンはそう言った。


住人たちは締め切った家の中の隙間から

この光景を見ていた。


皆、涙を流して見守るしかなかったのだ。


彼は帝国の兵。


「ゆるしてくれ…ジュリ、バエト…」


「帝国のおかげで俺たちは生きていける…」


皆、涙を流していた。



しかし、兄バエトはすでに限界で

ジーンはそれを見越して楽しんでいるのは

明白だった。


「ダメだ…うわああああ‥‥ジュリー!!」

といって泣きじゃくるバエト。

ロープを伝って血が滴っている。


ジーンは笑っている。

大きな口を開けて。


ついに限界だった。

そして、拳に力が入らなくなった。

「うあーーーー!!」

叫びながら手を離す。


誰もが皆、最悪を想像した。


ある者は目を閉じた。


だが、最悪な”音”は聞こえなかった。


ゆっくりと目を開け確認する…


だが…落下地点にジュリは居なかった。

バエトも見当たらない。


辺りはシーンと静まり返っていた。


気配を感じ、ジーンはゆっくり後ろを振り返る。


そこには仮面をつけた小柄な人物が

子供を両脇に抱えて立っていた。


(いつの間に…気配は無かった。

それどころか見えなかった。)


「おい、誰だてめえ!」

とジーンが声を掛けるが、仮面の男はまるで

聞こえないふうに、ゆっくりと子供たちを

地面に寝かせている。


そして二人の胸に手を置き

治療の魔法をかけている。

傷は一瞬で消えた。


(なんだ、帝国の魔術師さえあれほどの術者は

限られている。)


ジーンは目を細めた。


(ん? なるほど、こいつか)

少しニヤつく。


(今始末すれば、問題は解決じゃねーか)


ジーンは静かに抜刀しながら一瞬で仮面男の背後を取った。

普通の人の目には見えない速さだろう。


そして首筋を狙って切っ先を向けようとした瞬間

ジーンはそれ以上動くことができなかった。


「!?」


その瞬間、ジーンの全身に激しい痛みが襲う。


バキバキと体中の骨が折れる音をジーンは聞いた。

あまりの痛みに白目をむき、髪の毛が抜けた。


だがいつの間にかジーンはその場所に立っていた。

まるで何事も無かったかのように。


「俺は今何を……」

ジーンは呟く。


目の前に立っている仮面の男は自分よりはるかに

背が低かった。


「な……」


「楽しいのか?」

仮面の男は低い声で言った。


「何を…した…?」

ジーンは問いを返す。


すると仮面の男は指でつまんだある物を見せた。

人の“指”。


「え?」

ジーンは一瞬何を見せられているのか分からなかったが

ハッとしてジーンは、自分の手を見た。

革のグローブの左手の小指の

部分がへしゃげている。


慌ててグローブを脱ぐ。


小指は根元から綺麗に消えていた。

傷口もなく、元から無かったかのように。


ジーンは血の気が引いていくのを感じた。

「何を…したんだ…?」


「君の体を分解して

再構築しただけだよ」


「な……」


「だが……次は小指では済まない」

仮面の男はポツリと言った。


ジーンは膝から崩れ落ちた。





同じころ


ルモルグ、クロフォード、フォクシールの3人は

菜園に居た。


“おかげさまで”色々な種や苗が手に入るとルモルグ。

そこには多種多様な収穫物が並んでいる。

丁度その時

三人は瞬間的に、身の毛もよだつ様な気配を感じていた。


皆口には出さなかったが

フォクシールはクロフォードに念話する。


<クロフォード様……>


<ああ、わかっている>


<ジーンがもしや…>


その時ルモルグが口を開いた。


「クロフォード様…もはやこれ以上は…」

そういうとバツが悪そうに下を向いた。


「ルモルグ、なんだ?」

クロフォードが声を張り上げた。


「もはや隠し立てできません。申し訳ございません。」


3人は村の裏手に回った。


「ジーン!」


クロフォードが声を掛けるが、反応は無い。


「これは‥」

フォクシールは言葉を失った。


そこには髪の毛が抜け落ち、虚ろな表情をした

ジーンがへたり込んでいた。



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