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永劫のセツナ  作者: ALOE
26/45

思惑

リザード国第二の都市、アルハジルの王宮で、ムフテ


ィールはそのでっぷりと肥えた体で椅子に腰かけなが


ら、一人用の金色のテーブルに乗った豪華な料理をた


らふく口に詰め込んでいた。


「ジャヒードは死んだのか?」


ムフティールは兵士には一瞥もくれない。


「はっ 現在、ナシャシャ率いる軍22000が、


ンディマの西、半日の場所まで進んでおります。」


「遅い」


「はっ  恐れながら将軍、兵の中には赤い花の病に


侵されている者も多く、行軍が遅れております。」


一瞬、ムフティールの背後に影が見えた。


気がつくと、兵士の首が転がっていた。


「言い訳はよい」


その時、部屋の別の扉が開き、給仕の者達が、


頭に料理を乗せて入って来た。


「もっとよこせ、食い足りん」


床には食べかすが積み上がっていく。



兵の一人が声を上げる。


「将軍、恐れながら、


それ以上はお体に障るのでは。」


「……」


もはや聞こえていない。


料理が無くなりかけた時、ムフティールは床に転がる


兵士の首を見つめた。


そして一人の兵士と目が合った。


「お前 今わしがこの首を食うと思ったか?」


「め、滅相もございません!」


「!?」


一瞬、ムフティールの口の奥に何か蠢くものが見えた。


この場にいる者全てが、発狂しそうな異様な雰囲気に


なんとか飲み込まれまいと必死に抗っていた。






ナシャシャ率いるムフティール独立軍はアルハジルか


ら東に1日の距離にあった。


「ナシャシャ様、斥候より報告が」


「話せ」


「ンディマ側にも動きがあり、デモニウス様以下、


王下6剣を軸に軍を編成。防衛ラインが出来上がって


いるとの事。」


「デモニウス…」


ナシャシャは自軍を見渡した。


(こんな病人ばかりの軍で何ができる……)




「クーデターを起こす。」


と、ムフティールの口からきいた時、


ナシャシャは心が躍った。


権力者に言いなりの王。


他国からの評判は最低だった。


自国の通貨はもはや紙切れ同然となり


国は崩壊の一途を辿っている。


そこに来て赤い花がもたらす不治の病。


(だかムフティール様も変わられた。


あのローブを着た連中)


痛みを無くす薬として丸薬を持ち込んで来たのが始ま


りだった。


長年、関節痛に悩まされていたムフティールは


その薬を飲み、たちどころに痛みが取れ、


その連中から大量に買い付けたのだ。


今ではアルハジル中に安価で出回っていた。


だか、あの赤い花も時を同じく


それが人にも生えて来る奇病が流行り出したのだ。


(ローブの商人、丸薬、赤い花……つながっているのか…)


ナシャシャの思案はいつもそこで行き詰るのだった。



「中隊長、花の病に侵されている者はどれくらいい


る?」


ナシャシャは馬上から中隊長のギルゲに声を掛けた。


「……5000ほどかと」


「では、その者達は置いていく。 動ける兵


もある程度残しておけ。」


「はっ」


「30分後に出発する。ペースを上げる。遅れる


な!」


ふと、雑踏にざわめきが起こった。


「?」


雑踏の中から一人の兵が歩いてくる。


やがてナシャシャの前まで来ると、立ち止まり、痙攣


をおこし始めた。


兵達は後ずさりする。


「おい、ギルケ、この者、様子がおかしいぞ。」


「グガ……ウゲ…」


大きく喉が膨らみ、ぬるりと何かを吐き出した。


ボトリと地面に落ちた物体は、のたうち回っていたが


急に、ナシャシャの方へ飛び掛かって来た。


しかし、ナシャシャは眉一つ動かさず、


小さな魔法陣を展開した。


魔法陣から小さな円盤が飛び出し、その物体を


真っ二つに切り裂いた。


ボトリと地面に落ちると、それは、細かな粒子に分解


され、風と共に散っていった。


「……」


(わからない。敵は本当にジャヒード王なのか…)


ますます霧が濃くなるナシャシャの心とは裏腹に


アルハジル軍はンディマに向け出発した。





同時刻・ンディマ西門


「我らはこの場所で、アルハジル軍を迎え撃つ、


奴らを打ち砕き、謀反人ムフティールを引きずり出


し、王の御前にて裁きを受けさせるのが目的であ


る。」


デモニウスが兵たちを前に言い放つ。


「絶対に門内に入れるな! 王をお守りするのだ!」


ムドオンが続いて言った。


ンディマ軍、12000の歓声が大地を揺らす。



少しして、デモニウスは王下6剣を集めた。


「わかっておるな。乱戦に持ち込み、城内に敵を誘い


込め。


敵に王を殺させるのだ。家族もろともな。


もし敵が王の始末にてこずるようなら、


お前たちが殺せ。


誰も味方に殺されたとは思わぬ。」


「手筈は整っております。デモニウス様。 


門番、護衛などにすでに


我が配下がすり替わっております。」


ムドオンがしたり顔でささやいた。


デモニウスはゆっくりと頷いた。




ジャヒードは部屋の中をせわしなく動き回っていた。


「あなた、少し落ち着いたらどうなのですか?」


妻のビビが付き人に爪を磨かせながら、


メイドに顎をしゃくった。


「こんな時に落ち着いていられぬ。こんな部屋にいて


も何もできん。」


「あなたが行った所でなんの役にもたたないじゃな


い。」


メイドがフルーツが盛られた皿を持って入って来た。


「それが王に言う言葉か?」


「王ですって? 笑うわ。こうなったのは誰のせいか


しら。」


「何!? もう一度言ってみろ!」


そういってジャヒードは腰の短剣を抜いてビビに突き


つけた。


「殺したら? でも、そうすればあなたは王で


居られない。私のパパか王位を剥奪するわ」


「もうやめて!! もうたくさんよ! パパもママも


いつも人のせい!」


キルヒードの姉のキリアンだった。


キリアンがそう言うと、二人は釈然としない表情で


喧嘩を止めた。


キリアンは生まれつき体が弱く、ベッドの上で過ごす


事が多かった。


だがキルヒードにとっての唯一の理解者でもあった。


キルヒードが弱音を吐くといつも頭をなでて優しい言


葉を、時には叱咤してくれた。


「パパ、キルヒードはどこなの?」


キリアンは父を見上げて言った。


「自室で静養していると聞いたが」


「情けない子、誰に似たんでしょうね?」


ビビがメイドにフルーツを口に運ばせながら呟いた。


「二人はキルヒードが心配じゃないの?」


「……」


キリアンはパンパンと手をたたいた


「誰か キルヒードを呼んでちょうだい!」


「はっ」


と言って、お付きの兵が速足で去っていった。





キルヒードは狭い洞窟を進んで行った。


時々、行き止まりかと思う場所に出たが、少し探すと


腹ばいでしか行けない横穴が空いたりしていた。


リザード族は視力が良く、暗闇でも、不自由しない。


「寒い。どこまで続いているんだ……」


キルヒード吐く息が白い。


かれこれ数時間は穴を下っていた。


キルヒードは無心で洞窟を進み続けた。




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