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永劫のセツナ  作者: ALOE
24/44

今更

「なんだ?あれ」


もうすぐ日の出を迎える頃、ンディマの西門の監視塔の衛兵ギモンが同僚の衛兵に呟いた。


「おい!ホッティ 起きろ!」


「ん? ああ? ふわ~」


同僚のホッティは眠い目をこすり、ギモンの指さす方を見た。


遥か遠くに砂煙が見える。


「なんだよギモン、サンドワームじゃないのか?」


「遠視の魔法を使ってよく見てみろ」


ギモンに言われてホッティの両目のすぐ眼前に小さな魔法陣が2つ現れた。


「ギモン、あれって……」


ホッティの声は微かに震えている。


「ああ、俺はすぐに王宮へ知らせに行ってくる。お前はここで引き続き監視しとけ。」





ジャヒードは王宮で対応に追われていた。


奴隷である人間達が意思を持ち、次々と自分たちの権利を主張し始め


岩塩鉱山で反乱に近い騒ぎが起こっていたのだ。


「現在、鉱山の責任者のラハードが対応に当たっておりますが、


いかんせん鉱山にはリザード人の人数は少なく、


数百人の人間を抑え込む余裕がありません。」


「人間を抑え込めない?どういう事だ?」


「人間どもははっきりとした意思を持ち、体格も我々ほどになり、


食料の要求、人権の主張などを訴えている模様です。」


「言ってることがよくわからんぞ」


宰相が怪訝な顔で呟く。


「軍を向かわせろ、歩兵隊長をここに呼べ!」


「はっ 恐れながら、現在歩兵部隊は南部地域の国境付近にあり、


隊長をはじめ殆ど出払っております。」


「残りの部隊と、斥候部隊、あとは他のなんでもいい、


今すぐ200人をかき集めて鎮圧の任に当たらせろ。」


「はっ!」


そこに宰相の耳打ちが入る


「今度は何だ!?」


「西門の見張りのギモンという者が至急殿下にお伝えしたいことがあると。」


宰相はそう耳打ちした。


「つまらん用ならクビだ、通せ!」


そうしてギモンは小走りにジャヒードの前に現れ、ひざまずいた。


「ジャヒード様、西より軍が迫っております。サソリと三日月の旗印。


あれはムフティール様の軍に間違いありません!!」


「なんだと!?」


「まことか?」


宰相とジャヒードは同時に反応した。


「遠視の魔眼ではっきりと確認致しました。あのまま進めば半日の距離かと。」


「数は?」


「長い列の最後尾まで確認する事はできませんが、恐らく2万」


「ギモン、良くやった。 お前は引き続き西門にて監視を続けてくれ。」


「はっ!」


そう言ってギモンは足早に退出していった。


「王下6剣を呼べ」


ジャヒードの号令が響いた。




この少し前


王宮地下、備品倉庫。


王下6剣が次元の狭間を通り、メヌ山の洞窟から帰還していた。


その時、隊長のデモニウスが立ち止まる。


「……」


「デモニウス様…?」


「ムドオン、キルヒードは始末できたか?」 


「ええ…私が放った槍の一撃で致命傷を与えて……あれ?」


「お前たちはどうだ?」


「俺は確かファルガの魔法陣を展開して……ん?」


とヒムリー。



他の者も「え?」とか「たしか・・・」などとつぶやいている。


この瞬間、デモニウスだけははっきり思い出していた。


キルヒードにとどめを刺そうとした瞬間、上空に視線を感じ、


そして何者かがキルヒードを抱えて立ち去った事を。 


(あれは……仮面をかぶった青い服……。誰かは知らぬがしてやられた。


何者だ?我でさえその術中にはまるとは……)


「キルヒードは死んではおらん」


デモニウスは低い声で呟いた。


「は? どういう事でしょうかデモニウス様」


ムドオンが訝しげに問うた。


「我らは一時的に記憶を消されている。」


「な・・・!?」


「そんな事が!? 我々ならまだしも、デモニウス様までも!?」


クリシュが慌てている。


「ムドオン、お前の影たちにキルヒードを探らせよ」


「はっ……」


「お前たちはキルヒードが見つかるまではこれまで通り。他言無用なり」


「御意に」


そうして、部屋から出たとき、一人の兵士が小走りに近づいてきた。


「デモニウス殿、ここにおられたか。探しました。ジャヒード王がお呼びです!」


兵士は息を切らしながら王下6剣の招集を伝えた。


王下6剣の中、静かに殺気荒ぶる人物がいた。


サイラスだけは今はキルヒードなどどうでもよかった。


(獣人族のダイネ……次に会ったら殺してやる)血走った目でそう誓った。




王の間に揃う6剣。デモニウスを筆頭にジャヒードの前に膝をつく。


ジャヒードの玉座の傍らに控えている老齢のリザード人がデモニウスに問う。


「デモニウスよ。キルヒード王子はどこにあられる? 貴君らと同行し、


ドラゴン討伐に向かったと聞いたが?」


しばしの沈黙があった。


ジャヒードが「どうした?デモニウス?」と追い打ちをかける。


デモニウスが口を開く。


「はっ 恐れながら、殿下は獅子奮迅の戦いにより、見事ドラゴンを討伐されました。」


「おう! それはめでたい!」


「しかしながら、先頭をきって特攻され、瀕死のドラゴンの尾の一撃を……」


「何? して殿下は?」


「今は自室にて静養されておられるはず……」



ジャヒードはしばらく考えてのち


「そうか、大儀であった。」


と、あっさりと返した。


「はっ」


デモニウスは黒い兜を下げた。


ジャヒードが要件を切り出す。


「お前たちを呼んだのは他でもない、ムフティールが挙兵した。」


「………」


「ただちに兵を率い、これに対応してくれ」






キルヒードは大きな振動で目を覚ました。


目を開けると、岩と岩の重なり合った隙間から小さく空が見える。


(ここは……)


なんとなく一人が入れるくらいのスペースに寝かされていたと気付く。


上半身だけを起こすと、さっきまでの記憶が一瞬で蘇る。


「俺は……!!?」


咄嗟に腹に手をやる。


(傷が……消えてる……)


傍らには、剣と盾が揃えて置いてあった。


(誰が……)


しかしここで思い出した感情がこみ上げる。


「クソッ」


キルヒードは地面を拳で殴った。


「クソッ クソッ クソッ……」


婚約者であったクリシュにいとも簡単に弾き飛ばされた。


そして、今思えばクリシュとサイラスがなんとなく目くばせしあっている


事に薄々気が付いていたのだ。


だが俺は()()だ……!!


それが何よりも勝るのだ。


手にできぬものなど無い。


クリシュに誓った。なんでも望みは叶えてやると。


自分は生まれ持った物が違う。サイラスよりもデモニウスよりも。


そう思っていた。


しかし、キルヒードの胸に去来するのは、王下6剣達の裏切りよりも


自分がその事を見抜けず、間抜けにもその上で踊らされていた事への


屈辱と、恥。



その時、また地面が揺れ何かの咆哮がこだました。


今度のは大きい。


その瞬間、キルヒードのいる地面に亀裂が入り、床は崩れ、


キルヒードはそのまま下に落下した。


「うわーー!」


瓦礫と一緒に落下し、そのまま谷底へ転がっていった。


「止まった……」


キルヒードはゆっくり起き上がる。


不思議とどこにも痛みは無い。


しかし、次の瞬間、いきなり丸太の様なもので殴られ、壁に打付けられた。


「ぐはっ!」


土埃(つちぼこり)が充満する空間に耳をつんざく咆哮がこだまする。


「ギヤアア!!!――」


いつの間にか、キルヒードの目の前には巨大な青いドラゴンがおり、


炎を吐く態勢を取り始めていた。


一瞬、身構えた。だが


(もう……いい……俺が死んでも 何も起きない)


その時、どこからともなく声が聞こえる。


いや正確には声が頭に飛び込んできた か。


<剣と盾を持って! 君は倒せる このドラゴンを!>



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