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永劫のセツナ  作者: ALOE
23/44

未熟

タイガ山脈で最も高い山、メヌ山の麓付近に、セツナは降り立った。


切り立った岩肌の間に所々(ところどころ)雪が残っている。


(この辺りまで来るとやっぱり寒いな)


セツナは少し目を閉じ、気配を探る。


ここから東にさほど遠くない場所で、エネルギーのぶつかる気配がする。


7つのエネルギーが感じられる。


おそらく食堂で盗み聞いたキルヒード一行だろう。


「……このエネルギーの動き、なんか変だな」


セツナはふわりと浮き上がり、その方向へ進路を取った。





洞窟の奥で剣戟が聞こえる。


一人が激しく岩肌に打付けられ、壁にめり込んだ。


「ぐはぁ!!」


血を吐き出す。


「なかなかしぶといお坊ちゃんだな」


黒い鎧のリザード人がにやけながら壁にめり込んだキルヒードに向かって吐き捨てた。


「お おまえら・・・」


「キルヒード様、申し訳ないが、あんたには死んでもらう。」


「死ね」


三又の槍を持つリザード人がキルヒードに向かって弾丸のように踏み込み


槍はキルヒードの腹部を貫通した。


「ハァ ハァ…… お お前ら、裏切ったな……」


キルヒードの傷は完全に致命傷だった。


壁にめり込んだキルヒードの腹に三又の槍が突き立てられ


そこからおびただしい血液が流れ落ち、地面は血だまりとなっていた。


「この国はもう終わりだ、ジャヒードではこの国は立て直せない。」


王下6剣の副長、ムドオンが言った。


「ムフティール様こそが次の王となり、この国を導いてくださるのだ。」


王下6剣の一人、女性リザード人のクリシュも追従する。


「あんたのパパも、ママも、弟も、今頃は…‥ヒヒヒ…残ね――ン!」


少し背の小さいリザード人、ヨムが、首を切断するジェスチャーで叫ぶ。


「俺はあんたが嫌いだったよ。たまたま生まれたのが王家だっただけで


庶民を虫けら扱いしやがって。いつか殺してやろうと思ってたとこさ」


ローブの男、ヒムリーがそう言って、背後に魔法陣を展開させる。


ヒムリーは、一番先頭にいる、黒い鎧の剣士に目くばせする。


黒い鎧の剣士はその黒い兜で頷いた。


「デ、デモニウス……!!」


キルヒードがそう叫んだ瞬間、ヒムリーの魔法陣から強烈な炎が噴き出てきた。


(今行かないと死んじゃうな……)


デモニウスは一瞬空を見やったが、視線をキルヒードに戻した。


「跡形もなく焼き尽くせ、キルヒードをこの世から消去するのだ」


隊長のデモニウスは低い声でそう言った。しかし兜で表情は見えない。



その時、後ろから誰かの声がした。


「いやいや、リザード人ってほんとに野蛮だねえ、一人を六人でなぶり殺しとはねえ……」


王下6剣全員が振り返る。


そこには獣人族の男が一人、立っていた。


「誰だてめえ!!」


黒いバンテージを巻いたリザード人、サイラスが叫ぶ。


「ん? こ奴! 知ってるぞ! 確か名前は……ダイネ!」


副長のムドオンが叫んだ。


「ダイネって、獣人族の幹部の?」



デモニウスが口を開く

「獣人族の幹部がリザード族の領地に足を踏み入れている。どういう意図か知らんが


この現場を見た以上、生きて帰すわけにはいかぬ。だが……場合によっては見逃してやらんでもない」


ダイネは何も言わず、ただポケットに両手を突っ込んだまま、乾燥肉を噛んでいる。


「隊長、こいつビビッて何も言わねーぜ、さっさと殺っちまいましょう!」


サイラスがにやけた表情で言った。


「話を聞く気は無いようだ。」

デモニウスがサイラスに顎で指示を出した。


その瞬間、サイラスはダイネに向かって踏み込んだ。

「死にな! 獣人野郎!」


サイラスはロケットの様なスピードで右のストレートを繰り出した。


しかし拳は空を切った。

「!?」


いつの間にか、サイラスは胸ぐらをつかまれていた。


「誰がビビってるって!? ぁあ!?」

ダイネは顔をサイラスの顔に近づけてそう言うと


サイラスの顔面に、強烈な頭突きを食らわした。


そこには胸ぐらをつかまれて白目をむいて鼻血を出すサイラスの姿があった。


「こいつ……!」


デモニウス隊長以外の4人が咄嗟に剣の柄に手をかける。


「おっと、仕掛けてきたのはあんたらだぜ? ここで俺とやりあってもいいのかい?」

ダイネはデモニウスを真っすぐ見てそう言った。


「‥‥一旦退くぞ」

そう言ったデモニウスの感情は読めない。


「隊長 よろしいのですか? こいつを逃がしても」


「クリシュよ、何も起きてはいないのだ。 我々はこの場にいたが。ここは我らが領土。


そして、あ奴が何者かしらぬが、勝手に国交断絶中である我が領土に足を踏み入れた。


これこそ外交問題になりかねん。」


黒い兜の内側から、デモニウスの低い声が言った。それは禍々しさも感じさせる声だった。


「……」


「さっさと帰るがよい。獣人族の男よ。


クリシュ、サイラスを回収してきなさい」


デモニウスがそう言うと、クリシュはダイネに胸ぐらをつかまれたまま


気を失っているサイラスの元に向かった。


ダイネはクリシュが到着する少し前にサイラスをつかんだ手を離し


サイラスはダイネの足元にうつ伏せで倒れた。


「サイラス!」


クリシュが駆け寄る。


「うっ……」


意識が戻りかけているサイラスを抱き起すと、サイラスの腕を自分の肩に回して


持ち上げる。


ヒュ~

その時のクリシュのボディラインを見てダイネが口笛を吹く。


クリシュは睨み返してダイネの足元に唾を吐いた。


「さっきアンタらがいたぶってた奴、この国の皇太子殿下に見えたんだが、気のせいかい?」


「だとしたら何だ? お前には関係ない事」


と、


その時、突然地面が揺れ出した。



「なんだ? 地震か?」


しかし、揺れはすぐに収まった。



「ドラゴンかと思われます。どうしますか?」


副長のムドオンがデモニウスに耳打ちした。


「捨て置け、また捕まえればよい」


その瞬間デモニウスの目の前の空間が裂け、徐々に押し広げられていく。


「行くぞ」


そこに全員が入り終わると、何もなかったかのように空間にできた裂け目は閉じた。



「で、セツナ いるんだろ?」


「こっちです、ダイネさん」


ダイネが上を見上げると、巨大な岩の上から手を振るセツナが居た。


ダイネはトンと地面を蹴って、岩の上に到達する。


そこにはセツナと、横たわるキルヒードが居た。



「やっぱり……お前だったか。助ける必要あったか?」


「この人のお父さんに少し世話になって。」


「え?」


「そう、ジャヒード国王」


ダイネは目を丸くしてセツナを見て、額に手をやった。


「ハァ… つくづくお前は……」


「へへ……」


セツナは頬を人差し指で掻いた。


「それにしてもあの男……」


「うん、あのデモニウスって人、俺に気付いてた。」


「ああ、間違いない。使徒だろうな」



その時、積もった雪がどさりと落ちた。


この地方の遅い春の訪れを予感させた。


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