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永劫のセツナ  作者: ALOE
22/44

息子

リザード人の国は現在、二つに割れていた。


国は獣人族領に隣接しており、二国は切り立った岩肌が目立つ山脈で


隔たれていた。



リザード国領の面積は獣人族領の約3倍であり、広大なシシル砂漠の中央にアムハジルと


ンディマという二つの都、その周りに300を超える町と村が点在している。


士族も多数あり、比較的穏やかな種族から好戦的な種族も存在している。




リザード族の外見はトカゲの顔を持ち、周りの景色と同化する事が出来る者が多く、


訓練次第では息を止めている間は透き通る事ができるようになるという。



軍隊を持ち、騎馬、歩兵、弓、魔術師が主な部隊である。個々のレベルはさほど高くはない


が、ほぼ全て光学迷彩の能力を持っているため、敵に回すとかなり強敵になる。



また、脱皮を行う。この時に出た古い皮は、着衣として再利用され、特殊な魔法で


光学迷彩の機能を持った服を製作する事ができる。



リザード国の主な収入元である岩塩は、魔力が良く馴染み、料理への使用の他に、建築資材


や武器の製造などに重宝される。


その他の産物には、綿花やパピルス紙、オリーブ油、香料などがある。



岩塩は20年ほど前から徐々に採掘量が減り、その頃から、隣国への略奪行為も頻繁に発生


していた。


この国の王であるジャヒードは、その都度、自国の民の略奪行為を治めて回るが、


略奪行為は一向に減らず、イタチごっこの繰り返しである。


それにより、リザード族は悪評が高まり、近隣諸国からの評判を年々落としている。


しかし、近年、資源の枯渇が国民の生活をさらに圧迫し、その事に何も手を打たない


ジャヒード王政に辟易した、軍の将軍であるムフティールを先頭に、


クーデターが起こり、ムフティール軍の一部は二つの都の内アムハジルを占拠し、


独立国家制定を宣言し、ジャヒードとにらみ合いが続いている。




――――――





ほどなく、セツナ達を乗せた馬車はオアシスを中心とした小さな町に着いた。


「ジャヒード殿、それでは私はここで。」


セツナは提示されたとおりの運賃を御者に手渡しながらそう言った。


「旅の方、あなたと旅ができて光栄でした。お名前を伺っても?」


にこやかにそう聞くジャヒードの目の奥には明らかに疑心の意図が見て取れた。


「……トワ です。」


「トワ(永遠)殿か…… ふふ、ではトワ殿、またいずれ」


「ジャヒード殿もお達者で」


雑踏に消えていくセツナを見ながら、ジャヒードは御者に目くばせをした。


すると御者は右手を手元で小さく振った。


次の瞬間、いつの間にか御者の傍らに3人のリザード人が立っていた。


「あの仮面の者を追え。」

御者が小さな声でささやいた。


「消しますか?」


「また指示を出す。変化があれば逐一報告せよ。」


そういうと、3人は姿を消した。



ギュルル‥‥セツナのお腹が鳴った。


ふと目線の先に、ヤシの木の上にナイフとフォークが交わった看板を見つけた。


ラクダの一団が過ぎるのを待ち、店の暖簾をくぐる。


店内は思ったより広く、20脚のテーブルにはまばらに客がついていた。


全てリザード人である。


昼でも夜でもない時間帯なので、比較的空いているのだろう。


程なく、従業員と思しき、女性のリザード人に声を掛けられた。


「いらっしゃいませ。 お一人ですか?」


「はい」


「ではこちらへ」


そう言って案内されたのは、リザード人がいる部屋の奥。


壁で仕切られた場所にもう一つ部屋があったのだ。


その部屋は窓に薄いカーテンがかかっており、そのため少し薄暗く、


席と席の間に衝立(ついたて)があり、隣の人物が見えない仕組みになっていた。


素性を知られたくない旅人に対しての配慮なのか、


トラブルを避ける為なのかわからないが。


その部屋にも2、3人の客がまばらに座っていた。


「何になさいますか?」

小柄なリザード人の女は無表情で聞いてきた。


「ボッカはありますか?」


「少々お時間を頂きますが、ご用意できますよ」


ボッカは野兎の肉と、野菜をヤギの乳で煮込んだシンプルなスープで、


獣人族のポピュラーな家庭料理だった。


「じゃあ お願いします。」


セツナはボッカが大好きだった。


セファルドの妹フィオラと狩りに行き、馬車を野兎でいっぱいにして持って帰ったのが


懐かしい。


(フィオラ、元気かな。 フェルザリアを出る前に、


お見合いさせられそうだとぼやいてたな……まあ 


あの性格じゃ結婚は当分無理かな)


セツナは仮面の下で少し噴き出した。



フィオラはセファルドの本当の妹ではなかった。


セファルドの遠い親戚の子供だったが、ある日、フィオラの両親の屋敷が襲撃され


一家全員が皆殺しにされたのだ。


唯一生き残った、当時赤子だったフィオラは、事件から三日ほど経った日に発見されたという。


その時セファルドの兄、レオンファルトが不憫に思い、妹としてフェルザリア家に


組み入れたのだった。


(あの勝気な性格も、兄たちに余計な気を使わせまいとするためだったのかもしれないな)



そんな事を思い出しながら、セツナは自身の感度のレベルを少しチューニングする。


セツナは10年間の訓練により、膨大な魔力の調整ができるようになっていた。


以前であれば、視覚、聴覚、触覚……これらからの情報が過度に頭に流入し、


パニックになり卒倒する事があったのだ。


見たくもない光景、聞きたくない音、雑踏の感情……膨大な情報が一度に入って来るのだ。


しかし、今はそれらの情報を瞬時に仕分け、必要な情報だけを抽出する事が出来る。


セツナは旅の間、こうして行った先で情報を仕入れるのだ。


一番の目的はエントリに関する情報だった。


自分が突如覚醒してしまった理由にもつながると思っているからだ。



そして今、この食堂内に聞き耳を立てる。


あるリザード人同士の話。


「本当に獣人族に戦争を仕掛ける気かな? ムフティール将軍」


「さあな、バカげてるがな」



また、あるリザード人。


「おい、酒はもうそのへんにしとけよ!」


「わあってるよ チクショーめ」



それらの会話の中に引っかかるものがあった。



「……新しい塩の鉱脈がタイガ山脈の奥地で発見されたんだがな、


ただでさえたどり着くのがやっとの場所に加えて


そこに化け物がいるってんで、軍隊でも手を出せないらしんだよ。」


「そんなに強いのかい? その化け物は?」


「どうやらドラゴン種らしい、それに加えて、例の赤い花だよ。それがよ、


その場所一帯にびっしり生えてるらしい。」


「そりゃ厄介だな」


「そしてよ、そこに討伐に向かった一団がいてよ。」


「どいつだい?」


「ジャヒード国王の息子、キルヒード様と、王下6剣だとよ」


「う~ん まあ、この国最強と噂されるキルヒード坊ちゃんね……」


「ドラゴンはさすがに・・・」


「ああ 俺も同意だわ」


――――


(北に……赤い花とドラゴンか……そこにジャヒード王の息子……)


なんとなく次の行き先に見当はついた。


そこに料理が運ばれてくる。


「うわー おいしそう!」


思わず声に出す。


セツナはなつかしい味にしばらく舌鼓をうった。





セツナのいる町から北へ馬で丸二日の距離にあるタイガ山脈の麓付近——


通常なら軍でも踏破困難な場所にキルヒード一行はいた。




雪の吹雪く切り立った谷を登りながらリザード人の兵士が叫ぶ。


「キルヒード様、もうすぐ到着です。」


「わかっておる、まあ、ドラゴンだろうが、なんだろうが、俺の敵ではない。」


「さすがキルヒード様! また見れるのですね! 聖炎覇王剣が!」


「まあ 今回は使うまでも無いがな」


別の剣士が叫ぶ。


「そろそろです! みなご準備を」


そいうと、リザード人の一団は光学迷彩を使い、景色に溶けていった。


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