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永劫のセツナ  作者: ALOE
12/43

夜明け前の命令

まだ夜も明けきらない時間、南からの早馬が城門をくぐった。

「急報~!」


セファルトの自室——


セファルトの眠りは浅かった。

布団の中で何度も目を覚ます。

嫌な予感がずっとある。

兄の事を思い返していた。レオンファルトとは10も歳が離れている。

セファルトは継母の子だ。兄の母親は名のある貴族の娘で、兄を生んだ後すぐに亡くなった。

先代王であった父、ウナファルト・ファルザリアはそれから15年、誰も娶る事は無かったが、ある時、商品を献上しに来た旅の商人を大層気に入り、その女性と結婚した。

その女性は若くはないが、気立てが良く、社交的で、物知りで、気難しい宰相たちもたちまち打ち解け、堅苦しい王宮も笑顔溢れる場所になった。

兄のレオンファルトも同じく、継母を気に入り、関係はとても良好だった。

程なく、継母はセファルトを身ごもった。

セファルトが5歳になった時、隣国のリザード族が攻めてきた。

しかし王宮への侵入を許してしまい、継母は流れ矢を受け、亡くなってしまった。

父のウナファルトも負傷し討ち死にさえしなかったものの、一生をベッドの上で過ごさなければならない体になった。

タイレルやガルマンの奮闘もあり、なんとか敵を撃退したが、ファルザリアにとって失ったものも多かった。

王は戦える体ではなく、何より妻を失った悲しみで、気力を無くしてしまった。

そして、廃人同然となってしまった父に代わり、兄レオンファルトは16歳で即位する。

若くして重責を背負い、周りに助けられながら公務をする傍ら、時間を作ってはセファルドとも遊んでくれた。セファルドはそんな兄が大好きだった。


兄者——


コンコン

誰かが寝室の扉をノックした。現実に戻るセファルト。

「殿下……夜更けにご免。レフェルザリアからの早馬が戻ってきました。」


「すぐ行く」


素早くガウンを羽織り、謁見の間に向かう。


 ***

 玉座の間では、夜会用の燭台がまだ消されずに燃えていた。

 セファルトは、軍装の上に外套だけを羽織って椅子に腰かけている。その後ろにはタイレルが腕を組んで立っている。

 セファルドの傍らには、車いすに座る人物がいた。ガルマンである。かつて知将と呼ばれた男を、グロック牢獄塔の地下87階から召喚したのだ。

 扉が開き、先ほどの斥候が膝をつく。

「恐れながら……第一王都レフェルザリアは、すでに……」

 言葉を選ぶように、一拍の沈黙。

 やがて斥候は、震える声で報告を紡ぎ始めた。

「死の病が蔓延しております。赤い花が街の至るところに咲き、王宮はその花と蔦に覆われ……城下、王宮ともに、薄紅色の霧で満ちております」

 セファルトの顔色が変わる。

「霧だと?」

「はい。霧の中では、咳き込み、地に倒れる者が溢れ、体力のある者だけが王都から逃げ出し始めており……城門前には長い避難民の列ができておりました」

 斥候は唇を噛む。

「宮殿内や王家の邸宅周辺は、蔦が幾重にも絡みつき、霧も濃く……近づくことすら叶わず。陛下やご家族の安否は、現状、不明です」

 玉座の間に重い沈黙が落ちた。

 ガルマンは視線を落とし、静かに問う。

「“死の病”の正体は見えたか?」

「恐らく……薬師たちの結論は、原因は赤い花から出る瘴気という事です。」

 斥候の声が、ひときわ低くなった。

「また、逃げてきた住人の話を総合すると、赤い花が放出する花粉が、体の粘膜から体内に侵入し……最後には、植物のように固まった姿で死に至る。という事です。」

 セファルトが、肘掛けを握りしめる。

 ガルマンは短く息を吐き、続く報告を促した。

「他には?」

「奇妙な生物が街を徘徊しています。ウナギのように細長く、皮膚も骨もない、ぬめった生き物です。倒れた人の体液を吸い取っていました。これは過去に第二王都でも数例ありました。」

「フーコーの口から出た奴もそんな姿をしていたぞ」タイレルがすかさず言った。

 さらに一拍置いて、斥候は顔を上げた。

「一方、第一王都軍は……兄王レオンファルト陛下の命により、五万の軍勢を整え、第二王都へ攻め入る準備を整えていました」

「なんだと」

 セファルトの声に怒気が混じる。

「第一王都の将軍フィルニールは、陛下のご様子がおかしいことを感じ取っているようでしたが……それでもなお、愚直に命令に従っているご様子でした」

 ガルマンが目を細める。

(王都そのものが、何者かに乗っ取られている……か)

 セファルトは堪えきれず、椅子から身を乗り出した。

「父上は……レオンファルトは、何者かに操られていると言いたいのか」

 斥候は口ごもる。

「……陛下の周囲には、『旅人』と呼ばれる謎の生命体が付き従っておりました。レオンファルト陛下は、その存在にすっかり心を許しているように見えましたが……実際には、あれが陛下に寄生し、第一王都を意のままに支配していると見るべきかと」

「兄上……」

(あの優しかった兄がなぜここまで落ちねばならぬのだ。)

「……ガルマン」

 セファルトが立ち上がり、振り返る。

「はっ」

「お前を臨時軍師に任命する。第二王都軍、総数三万五千。数では劣るが、このまま第一王都軍五万を通せば、我が国は内側から食いつくされる。——迎え撃つしかあるまい」

 ガルマンは一礼した。

「第二王都軍の幹部たちをここへ集結させよ!」セファルトは高らかにそう言った。

しばらくして、タイレルを筆頭に、5人の隊長たちがセファルドの前にひざまずく。

「このような時間に足労をかける。集まってもらったのは他でもない、我が兄、第一王都レフェルザリア王、レオンファルト・レフェルザリアが乱心し、第一王都軍主力5万が我が王都へ攻め入るべく、ここより南20リーグにあるダーヌ平原にて集結しつつある。これより我々は、この第二帝都防衛および第一帝都奪還のため、我が軍3万5千をもってそれを攻略する。」

それぞれが片膝を突き、セファルドを見つめる。

「それと、知っていると思うが、今回からタイレルとガルマンに復帰してもらう。まあ知っての通り、先日色々あったが…… この状況、そうも言っておられん。使えるものは使う」

「魔人タイレル 復活! だな!」

歩兵部隊長ダイネがタイレルにウインクした。

「それとガルマンさん、あんた大丈夫だろうね? 少し前まで目がイッちゃってたからさ」

ダイネはにやけながらガルマンに言った。

ガルマンは目をつぶって首を横に振った。


「久しぶりに復活ね! このメンバー」

騎馬隊長レイチェルが嬉しそうに言った。


「相手は5万、こちらは3万5千だが、先日の人間の子供セツナの力により、我々はレベルが大幅に増幅している。それにより戦力差1万5千は軽く埋められるものとし、これをもって今回の作戦は遂行する。」

セファルトは淡々と説明した。

「また、今回の作戦に人間の子供セツナも同行させる。不思議な力を使い、レフェルザリアの瘴気を払ってもらう事を期待している。 セツナはレイチェルと共に行動せよ。」

セツナはレイチェルにちらっと視線を送ると、レイチェルはウインクで返した。


「また今回、貴君らのレベルを測定した結果を発表する。 将軍タイレル270・・・・・」

「に にひゃく?」ダイネは素っ頓狂な声を上げた。

「軍師ガルマン195、騎馬隊長レイチェル199、遊撃部隊長ジン202、そして……歩兵部隊長ダイネ187……」


「ふう… バグってんね…… 実感ねーけど…」

ダイネは呟いた。


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