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【2部連載中】転生したら美少女冒険者に! ~おっさんの心が旅立つ異世界冒険記~  作者:
4章 炎の民

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51話 奪還作戦準備

 模擬戦で俺がイヴァンに負けた日から、炎の民のアジトでの日々が本格的に動き始めた。

『街の開放作戦』通称「紅蓮の解放」らしい。

 いつも思うのだけど、何でこういうたいそうな名前を付けたがるのか不思議だ。

 名前で勝負が決まるわけないのに。とても疑問に思った。

 ヒルダが中央に立ち、声を張った。


「作戦目標は単純明快だ。魔物街の支配層を一掃し、人族の支配を回復させる。期間は三週間以内に決めたい。準備二週間だ。本気でいくぞ!」


 アジト全体に熱気が広がった。メンバーたちが拳を握り、歓声を上げる。

 ヒルダの赤い髪が揺れ、革の胸当てが火の光に輝いてた。イヴァンが拳を掲げ鼓舞していた。

 みんなの目が燃えてる。ただの脳筋な作戦だった。

 俺は思わず手を挙げた。


「待て待て。ストップだ!」


 部屋が一瞬静まり返った。みんなの視線が俺に集中するし、空気読め感がひどかった。

 それで死んだら目覚めが悪いから、空気読めなくて結構だ。


 ヒルダが眉を上げ、イヴァンが「どうした?」って顔をする。

 エレナが俺の袖をそっと掴む。俺は深呼吸して、ゆっくり言った。


「普通に考えてみろ。期間は三週間で行うって。準備二週間で出来るわけないだろ!……どれだけ脳筋で力技でやろうとするんだ?最低三か月、長くて六か月の準備が欲しい」


 ヒルダが少し目を細める。


「三か月……? 長すぎないか?」


「長すぎる? いや、短すぎるんだよ。魔物街の支配層は、ただの雑魚じゃない。ボス級の奴が複数人いるだろう。魔物の数も多い。本部の場所は?補給は?下調べは?そんなの二週間で出来るか!今は士気が高いから勢いで出来るかもしれないが、本戦でガス欠したら全滅だぞ」


「三か月も長すぎるだろ!私たちはもう待てないんだ。魔物街の支配が広がってる今、時間がない!今動かなきゃ、もっと被害が増えるぞ!」


「そうだ! 今度こそ、速攻で叩く!準備不足で俺が捕まったのは事実だが、今度は違う。俺たちの総力が揃ってるんだ!」


 イヴァンが拳を握りしめて言う。俺は地図を指差した。


「最低三か月。潜入ルートの調査、警備の把握、襲撃場所の把握、装備強化、連携訓練……。これを二週間でやろうとしたら、死ぬだけだ。お前達は行けるかもしれんが、ほかの奴がつぶれるわ。無駄に仲間を殺させたいのか!」


 周囲から「そんなことはない」「行ける」「俺たちは強い!」って声が上がるが、そんなの無視だ、無視。ヒルダがゆっくり頷いて聴いていた。


「わかった。期間を延長する。準備を三か月から六か月にする。準備ができ次第作戦を決行する。」


 メンバーたちが少しざわつくが、みんな納得した顔をする。俺はホッと息を吐いた。


「これで、少しは勝ち目が出てくる」


 エレナが俺の手を握ってきた。その小さな手が、わずかに震えているのがわかった。彼女は俺を見て、優しく微笑む。


「シビさん……ありがとうございます」


 俺はエレナの手を軽く握り返した。


「当たり前だろ。そう何度も負けてたまるか、勝つからにはしっかりやって勝ってやる」


 隣にいたヒルダが笑顔で返してくれた。


「じゃあ、今日から本格的に準備を始めるぞ。みんな、シビ、エレナ、私たちと一緒に、この街を変えよう」


 俺は頷いた。


「ああ。一緒に、変えよう」


 ヒルダが俺の提示した期間延長を正式に受け入れたその瞬間から、アジトの空気は一変した。

 アジトの空気は「お祭り騒ぎの熱狂」から、芯まで冷え切った「実戦の緊張感」へと質を変えた。


 三ヶ月から半年。俺が周りの空気を読まずに、力ずくで勝ち取ったこの猶予だが、やることが多くなって時間が足りないとかいうことだろう。

 祭りの準備みたいなものだから、熱狂と緊張感、両方混ざるといいんだが。


 俺が着手したのは、あの街の巨大な迷宮を把握し、その構造を丸裸にすることだった。アジトの最深部、岩肌が剥き出しになった薄暗い広間に、街の巨大な立体模型を作ってもらった。

 偵察員たちが日夜、息を潜めて潜入し、持ち帰ってくる情報の断片を、俺は一つずつ模型へと叩き込んでいく。


「シビさん、ここの路地の見張りは二時間おきに交代いたします。」


「よし、俺たちが忍び込める場所を見つけたな」


 模型の上に、無数の書き込みがなされた羊皮紙と、色分けされた魔石のチップが、まるで戦場の墓標のように増えていく。潜入ルートの徹底的な調査、警備兵の交代時間、巡回ルートの癖。

 ジグの魔術師たちとロジャーズの密偵たちと、何度も議論をして話し合った。俺たちは、地図上の細い線を指で何度もなぞりながら、まるで複雑なパズルを解くように、最も血を流さずに済むルートを、何度も、何度も、脳内のシミュレーションで反復し続けた。


 同時に、アジトの広間からは、耳を劈くような金属音が絶え間なく響くようになった。装備の強化だ。

俺はバステルの街に戻り、ギルドマスターに話を持ち掛け、武器やら物資などの確保をしてもらった。

ギルドマスターたちは商売の経路が増えたことにより、かなり喜んでいたけどな。


 そして、最も過酷を極めたのは、地獄のような連携訓練だった。

 地下空洞の広場に連中を集め、俺はイヴァンを中心とした脳筋軍団に対し、容赦のない怒声を浴びせ続けた。


「イヴァン! 何度言ったらわかる!突っ込みすぎるな!お前が一人で無双して敵の陣形を崩したところで、後ろにいる魔術師たちが狙われたら、そこで俺たちの作戦は全滅なんだよ!」


 なまじっかイヴァンが突出した力を持っているから、自分で何とかして特攻を売る癖があるようだ。

 俺がエレナに愚痴ったら、「シビさんもそういうところありますからよくわかるんでしょう」と皮肉られた。

 聖女って呼ばれる人間が皮肉言うなよって言おうとしたけどやめた。


「魔術師の詠唱が終わるまでの十秒。その十秒間だけは、何が何でも、死んでもこのラインを下げるな!」


 個人の武勇と勢いに頼り切っていた連中にとって、足並みを揃え、集団としての精密な動きを強いられるのは、戦場で刃を交えるよりも苦痛だったかもしれない。


「戦争は数と連携なんだよ。突出した戦力が一人いるより、ある程度の実力者100人の方が強いんだよ。イヴァン、いくらお前が強くても100人のこいつらから攻撃されたら勝ち目薄いだろうが」


 そうは言ったけど、イヴァンの体力なら100人相手でも勝てるかもしれないけど、俺は指示を出す。

こいつらの自尊心。そんなものくそくらえだ。少しでも生き残らせられるのなら、鬼にでもなってやるわ。

 かといって俺自身もかなり忙しかった。俺の実力不足を減らすために、手が空いてる奴に模擬戦を何度もやってもらった。

 最初は嫌がってたこいつらも、俺が訓練中に暴言を吐くから、いいストレス発散だと思ったのか、俺をぼこぼこにしやがる。

 エレナもまた、忙しかった。修練で傷ついたメンバーたちの治癒をこなしながら、同時に広範囲に及ぶ支援魔法の練度をこれでもかという感じで行っていた。教会では絶対にやらないことだろう。

 彼女自身色々な宗派の人がいるから結構話は弾んでるようだけどな。


 ある夜、疲れ果てて模型の前から動けなくなっていた俺の肩に、誰かがそっと厚手の布をかけた。

振り返れば、ヒルダとイヴァン、そして、いつものように優しく微笑むエレナがいた。


「シビ。……正直、お前の言う通りだった。二週間で特攻をかけていたら、俺たちは、この模型の半分も進めずに死体になって転がっていただろうな」


 イヴァンが、少し短くなった髭をさすりながら、参ったというように豪快に笑う。


「半年という月日は、長いようでいて、覚悟を決めた俺たちにとっては、一瞬の瞬きのようなものだった」


 そりゃそうだろう。俺がやっているのは情報戦に集中したことだった。情報と連携。弱い人間が強い魔物に勝てる方法だと俺は信じている。俺は……一人で動くけど、そんなのはできる奴がやればいい。


 やっと見つけた。こいつを俺は見つけたかった。そのための三ヶ月であり六ヶ月だった。

準備期間中に見つかってくれて、俺はすごく安心してエレナに笑顔を向けた。


「どうかなさいましたか?」


「聖女様の笑顔を見れば神の加護があるかなって思って」


「口が上手いですわ。三日後のために今はゆっくり休息をとりましょう」


ヒルダとイヴァンもそれに納得して自分たちの寝室に戻っていった。

さてと、活動するとしようか。

俺は活動に移った。

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