表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2部連載中】転生したら美少女冒険者に! ~おっさんの心が旅立つ異世界冒険記~  作者:
4章 炎の民

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/69

50話 模擬戦

 「剣一本のみ。はじめ」


 ヒルダが笑って、開始の合図を出した。めちゃくちゃ楽しそうな顔しやがって。周囲も人が集まってきやがった見世物じゃないんだけどな。


 剣闘場の中央に、俺とイヴァンが立つ。周囲の炎の民の連中が壁際に並び、息を潜めて見守っていた。

 松明の火が揺れて、砂の匂いと汗の匂いが混ざった。空気がぴんと張りつめて、静けさが重くのしかかる。


 俺はミスリルソードを握り、肩の力を抜いて構えた。

 イヴァンは自分の剣を抜くと、軽く振って刃の感触を確かめる。

 その目が、俺を試すみたいに動くのがわかる。心臓が、少しだけ速くなった。


 俺は一歩、踏み込んだ。一成(ひとなり)

 大きく間合いを詰める一歩。砂が跳ねて、足音が乾いて響く。俺は突きを放った。ミスリルソードの先端が、真っ直ぐイヴァンの胸を狙う。


 イヴァンは動かなかった。そのままの姿勢で、風柳(ふうりゅう)で突きを軽く受け流しやがった。

 剣先がすっと逸れて、俺の体勢が崩れかける。基礎の技。だからこそ、上手い奴ほど怖い。一歩も動かず、受け流して、そのまま反撃まで持っていける。

 でも、今はカウンターが来ない。実力差が致命的ってほどじゃない、そう見えた。

 俺の剣がいなされ、刃が()れて火花が散る。ミスリルに刻まれた魔力紋が、火花に合わせて一段明るく光った。


 俺は間髪入れず、得意技を叩き込む。

裂華(れっか)。四回の連続斬撃。横薙ぎ、上段、下段払い、返し斬り。刃が空気を裂き、風が巻き上がる。


 イヴァンは身を低くしてかわしながら、反撃に牙衝(がしょう)を返してきた。

 鋭い突進の突き。一直線に俺の胸を狙う。俺は金剛(こんごう)で踏ん張り、ミスリルソードで剣先を受けきった。


 受けきった……はずなのに。突きが鋭すぎて、足が砂を削りながら後ろへ持っていかれる。

 数メートル、そのまま吹き飛ばされた。

 地面に転がり、砂を浴びた。息が詰まって、口の中がじゃりっとする。体が小さく震えるのが、自分でもわかる。

 この瞬間に悟った。やっぱり、剣一本は分が悪い。勝ち目が薄い。薄すぎる。

 でも、負けるのも悔しい。だから、卑怯で行く。

 俺は足元の砂を蹴り上げて、目くらましを作る。砂煙の向こうで、もう一度一成(ひとなり)をした。

 大きく踏み込んで、そのまま低く滑り込む。スライディングで、間合いを潰し、イヴァンの目前で飛翔技を叩き込んだ。


 天翔(てんしょう)。体が軽く跳ね上がる。

 イヴァンは鋭い反射で避けた。だが、俺は止まらない。

 天井に当たる瞬間、体をひねって回転し、天井を蹴って加速する。その勢いを突進に変えて、突き技に繋げた。

 牙衝(がしょう)。突進の必殺の突き技を、ねじ込むでやった。


 イヴァンはバックステップでかわし、また距離が開く。剣先が交差する寸前で離れ、空気だけが切れていった。


 周囲がどっと沸いた。炎の民の連中が歓声と拍手を上げる。


「いい動きだな。なるほど、お前の言いたいことが分かった」


 イヴァンの低い声が、闘技場に響いた。

 俺は息を整えて、剣を握り直す。


「まだ始まったばかりだぜ」


「分かってるだろ。なら本物を見せてやるぜ」


 イヴァンは、かかってこいと言わんばかりに剣を構えた。その構えが変わったのが、肌で分かった。空気がまた一段、重くなる。

 俺は再び踏み込み、裂華(れっか)を連続で繰り出す。この身体の持ち主が一番得意としていた技だ。

 四回の斬撃がイヴァンを襲う。

 イヴァンはまた風柳(ふうりゅう)で受け流した。そして、俺の四連続の攻撃はすべて空を切った。

 その瞬間。一刀両断みたいな一撃が、俺の方へ落ちてくる。

 俺はミスリルソードで受けきった。だが、甲高い音が鳴り、魔力の発光が弾ける。衝撃が腕を貫いて、握力が一瞬で持っていかれた。


 剣が、俺の手から離れ、砂に突き刺さって、鈍い音が響いた。


「勝負ありだな」


「あぁ……」


 俺は膝をつき、息を荒げた。負けた理由は、はっきりしてる。

 最初の裂華(れっか)の時点で、判断を間違えた。

 あれは俺の技量を見るための動きだったのに、俺は実力差がそこまでじゃないと勘違いした。


「なぜシビさんは、そんなに簡単に負けたんですの?」


 エレナが心配そうに聞いてくる。


 イヴァンが静かに言った。


「こいつは組み合わせの攻撃は凄い。さっきの砂の目くらましみたいな、普通の戦士がやらない邪道も混ぜてくる」


「それ以外は、教科書に出てくるような攻撃なんだ。だから読みやすい。高度な技ほど、所々の練度が落ちる。だから俺は勝てる。同じ技を持ってるなら、練度と引き出しが多い方が勝つ」


 俺は苦笑してうなずく。


「その通りだ。だからスペシャリスト相手だと、同じ土俵の今の俺じゃ勝てない」


 ヒルダが、ジグの方をちらっと見た。


「こいつは究極の器用貧乏に近い。レベルが高いから欠点が見えにくいけど、知能があってレベルが高い奴なら対策できる」


イヴァンが肩をすくめる。


「そういうことだ。以前も同じ状況でぼろ負けしたばかりだ。もちろん、使えるものが全部ありゃ俺の方が分が高くなるけどな」


「そりゃあな」


 イヴァンがが笑う。


「射程外から呪文を打たれたら厄介でしかないしな。だが計画を断るってのは、コレとは話が別だろ」


 俺は、息を吸って吐いた。


「今の俺じゃ龍角には勝てないってことだ。俺の技量が八十だとする。その八十じゃ、あいつに届かない。今回は一人じゃないって言われても、お前たちは、守るべき部下がいる。俺たちは目的がある旅だ。ギャンブルはできない」


 エレナが、すごく悲しそうな目をした。けど、肌で差を知った以上、無謀はできない。

 俺の技量が全部九十五くらいなら話は違ったかもしれない。今は足りない。


「お前たちの探している書物が、かの街にあるとしたら」


 漆黒の魔術師のジグが、そう言った。


「担いでるんじゃないのか?」


 俺は疑ってしまう。俺らの力が欲しくて言ってるだけかもしれない。


「数百年前に書かれた巻物に記されていた。当時の文献の情報と今の地形を照らすと、かの街の可能性がかなり高い」


「それを見せてもらっても?」


 手伝って。やっぱり無かった、じゃ無駄足でしかない。


「構わん」


 ジグは少し席を離れ、数分で戻ってき手渡してくれた。

 俺は古文書に目を通す。そこには、確かにあの紋章が描かれていた。

 場所の記述も一致している。盗まれてたり運ばれてない限り、あの町にある可能性は高い。


「エレナはどうしたい?」


 俺が聞くと、エレナは静かに、でも強く答えた。


「わたくしは、あの街を開放して、健全な街が増えるのを期待いたしますわ」


 その一言で、胸の奥が決まった。これも運命なのかもしれない。やると決めたのなら次は負けないようにしてやる」


「転生したら美少女冒険者に! ~おっさんの心が旅立つ異世界冒険記~」をお楽しみいただけましたか?


もし「続きが気になる」「応援したい」と感じていただけましたら、ぜひブックマーク登録と、ページ下部にある【評価する】ボタンから評価ポイントをいただけると、とても励みになります!


皆さんの応援が、次の話の執筆を進める力になりますので、どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ