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【2部連載中】転生したら美少女冒険者に! ~おっさんの心が旅立つ異世界冒険記~  作者:
3章 解放

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44話 圧倒的戦力差

 俺は一人、剣を構え直した。目の前には、怒りに燃える魔物の大群が迫っていた。

ゴブリン、オーク、トロル、ハーピー、アラクネ。昼間に見た連中が、倍以上の数で押し寄せてくる。さらに、見たことのない魔物も混じっている。二本の角を持つ赤い皮膚の鬼のような魔物、蛇の下半身を持つラミア、巨大な単眼のサイクロプス。総勢五十は超えるだろう。多勢に無勢っていう状況じゃないな。こちらは一人だからだ。


 龍角のボス級魔物は、まだ後方でマントを(ひるがえ)し、静かに見据(みす)えている。あいつは、この群れを囮に俺を疲弊(ひへい)させるつもりか。……違うな。あいつは、ただの余興として、どれだけ俺がやるのかを見ているだけだ。


なら、来いよ。


 俺は低く(つぶや)き、加速ハステンを自分に再びかけた。体が軽くなり、魔力が全身を駆け巡る。銀髪が風に揺れ、赤い瞳が鋭く光る。


 最初に飛びかかってきたのはゴブリンの群れだった。十匹近くが甲高い叫び声を上げ、錆びた短剣を振り回して突進してくる。俺は影走り《ヴェイル・ラン》を発動し、影から影へ滑るように移動。一瞬で群れの側面に回り込み、ミスリルソードを横薙ぎに振るう。


裂華(れっか)


 四回の連続斬撃が閃き、ゴブリンの体を次々と両断。血が噴き、悲鳴が上がる。四匹が即死、残りが怯んで後退した隙に、俺はさらに踏み込む。


一成(ひとなり)


 一歩大きく踏み込み、間合いを詰める。オークの巨体が棍棒を振り下ろしてきたが、俺は身を低くしてかわし、牙衝(がしょう)で喉元を突き刺す。重い体が崩れ落ち、地面を震わせる。


 「まったくモテる女は大変だ。こんなにエスコートが多いなんて」


 まったく数が多すぎると心の中で皮肉った。


 ハーピーが上空から急降下し、鋭い爪で襲いかかる。俺は跳躍(ジャンパー)で高く飛び上がり、空中で剣を逆手に持ち、天翔(てんしょう)を放つ。ハーピーの翼を斬り裂き、血の雨を降らせる。


 着地と同時に、アラクネの糸が飛んできた。俺は力ある言葉を発し、風刃(ウインドカッター)の呪文で糸を切り払い、土陣鋼槍(アース・スパイク)の呪文を使用して、岩の槍が複数発生し、アラクネや近くにいたトロールの巨体を串刺しにする。


トロールが再生しながら突進してくる。俺は魔力の刃(エンチャント・エッジ)で剣に魔力を纏わせ、炎剣(フレイム・ブレイド)を重ねて斬りつける。炎がトロールの傷を焼き、再生を阻み、一撃で首を落とす。


 ラミアの蛇尾が鞭のように振るわれ、サイクロプスの巨棍が振り下ろされる。俺はポケットから煙球を取り出し、地面に叩きつけた。ボンッと音がして、濃い灰色の煙が一瞬で周囲を覆う。魔物たちの視界を奪い、混乱の叫び声が上がる。 その隙に、俺は忍び足ムーブ・サイレントリーで音を殺し、気配断ち(ハイドインシャドー)で影に溶け込んだ。煙の中でラミアの背後に回り込み、背面一撃(バックスタブ)でミスリルソードを深く突き刺す。


 同時に左手から雷撃(ライトニング)を放ち、サイクロプスの単眼を焼いた。煙が晴れる頃には、二体の巨体が地面に崩れ落ちていた。魔物の死体が次々と積み上がり、血の匂いが濃くなる。息が上がり、魔力が減っていく。だが、ここで止まるわけにはいかない。


 赤い皮膚に黒い翼、頭から曲がった山羊のような角が生え、口元から鋭い牙が覗く。下半身は獣の脚で、尻尾の先は蠍の毒針。人間のような胴体に、黒いマントを羽織り、腰に剣を佩いている。目は黄金に輝き、嘲るような笑みを浮かべている。生前見た悪魔の絵から出てきた魔物が俺の前に立ちふさがった。


 そいつは、俺に向かって炎の息を吐いた。灼熱の火柱が直撃コースで迫り、空気が歪むほどの熱波が顔を(あぶ)る。 


 俺は咄嗟に水膜球アクア・ヴェールを展開した。水の精霊ウィンディーネの力が呼び起こされ、透き通った水の膜が体を完全に包み込む。炎の息が膜にぶつかり、ジジジッと激しい音を立てて蒸気が爆発的に上がる。熱はほとんど通さず、膜の表面だけが沸騰するように泡立つ。視界が白い蒸気で一瞬(おお)われたが、すぐに霧散(むさん)した。


 俺は、その隙を突いて、剣を構え直し、虚空波(こくうは)を放つ。剣を一閃するのと同時に、真空の波が空気を切り裂いて飛ぶ。悪魔っぽいデーモンの体を斜めに裂き、黒い血が噴き出す。翼が引きちぎられ、奴は絶叫を上げながら地面に叩きつけられた。


 五十対一。最初は圧倒的に不利だった群れが、徐々に減っていく。俺の剣が魔物の血に染まり、銀髪が汗で額に張り付く。体に軽い切り傷や打撲が増え、息が乱れる。自分の魔力が少しずつ削られ、足取りが重くなるのを感じる。

だが、止まらない。止まったらここで終わりだ。


 龍角のボスはいまだに後方で腕を組み、にやにやと笑っていた。まるで退屈な芝居を見ているような、冷ややかな視線を感じる。


「人相手に何をそこまで苦戦してるんだ。本当に情けないな。俺の手を煩わせるな!」


 低く響く声に、嘲りが込められている。ただの余興として、俺がどれだけもつかを楽しんでいるだけだ。ふざけんなよ。舐めプしやがって。


 龍角の号令が終わった瞬間。最後の十匹が囲んできたとき、俺は最後の力を振り絞った。


「業火の精霊よ、我が意に従い、敵を焼き尽くせ!火炎流(キャノン・バスター)!」


 手のひらから炎の奔流(ほんりゅう)が噴き出し、残りの魔物を一掃する。爆発が響き、砂煙が舞い上がる。静寂が戻った。


 俺は剣を地面に突き立て、肩で息をした。周囲は魔物の死体で埋め尽くされている。五十対一。ギリギリで勝利を収めた。


だが、まだ奥に魔物の気配が残っている。龍角のボス級は、まだ動いていない。


「やっとウォーミングアップが終わったところだぜ」


 俺は龍角の魔物に剣をむけてそう言い放った。

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