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【2部連載中】転生したら美少女冒険者に! ~おっさんの心が旅立つ異世界冒険記~  作者:
第2部 悪徳の街 バステル 第1章 バステルへ

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31話 バステルの洗礼と白き城

 ギルドを兼ねた宿屋を出て、メインロードを歩き始める。

城塞に囲まれたこの街のメインロード酒場のマスターが「ブラックサンド」と呼んでいた通りは、表向きは外の世界のどの街よりも賑わう光景だった。

広い石畳の大通りはところどころ割れ、朝の陽光を浴びて鈍く輝いている。

両側には三、四階建ての建物が密集し、上階が張り出して道を半ば覆うように重なり合い、昼間でも薄暗い影が落ちる。

でも値踏みされてる視線は四方八方から感じていた。


 俺は無言で周囲への警戒を解かずに歩き続ける。

ここからでも見える、街の中心にそびえる大きな城。

この町には似つかわしくない白い城塞があった。まずは全体の様子を掴もうと思っていた。


「……行きましょうか、シビさん。まずはこの街を知らなくては」


 エレナが隣で声を出す。その声は、この異質な街への戸惑いを隠しきれない、

少し緊張したものだった。、俺の腕に軽く寄り添うように歩いている。


 その時だった。向かいから来た、杖をつき、ぼろぼろの外套を羽織った。腰の曲がった老婆がふらつき

老婆はエレナのすぐ横でよろめき、「大丈夫ですか、おばあさん!」エレナが咄嗟(とっさ)にその腕を支える。聖女らしい優しさが、反射的に出たんだろう。

本当はそんな優しさをやめさせたいと思ったが、それは彼女の良さを殺すことになる。

見逃すしかないと思った矢先だった。


 ガッ!!

 

 俺は一瞬の隙も見逃さず、老婆の後頭部を掴み、そのまま石畳へ強く押し付けた。

老婆の顔が地面に擦れ、くぐもったうめき声が漏れる。


「シビさん!? 何を……そんな、お年寄りにむかって!」


 エレナが悲鳴を上げ、俺の腕を掴んで引き剥がそうとする。

だが、俺は老婆を地面に縫い付けたまま、周囲を見渡した。

通りを行く人々は誰一人として足を止めない。

興味なさげにちらりと見て、すぐに視線を逸らし、我関せずといった様子で通り過ぎていく。

ここでは、こんな出来事は日常茶飯事らしい。


「エレナ。お前の財布は」

俺は老人の方を向きながら一応聞いてみた。


「えっ? ……っ、ありませんわ!?」

エレナが慌てて腰を探る。

俺は老婆の懐に手を突っ込み、素早く小さな革の財布を取り出した。


「お前の財布はここにある」


 地面に顔を押し付けられたまま、老婆は慌てて声を上げる。


「悪かったよ、出来心なんだ、許しておくれ!」


 地面に押し付けられたスリは、なりふり構わず必死に謝っている状態だった。

その様子を見たエレナは、たまらなくなったように俺の腕にしがみついてきた。


「シビさん、もうよろしいではありませんか。このように謝っております。……反省しているのですから、きっと心を入れ替えてくださいますわ」


 俺は老婆の腕を一瞥し、あきれたように鼻を鳴らした。


「必ずまたやるだろうよ。今回はこのまま解放するけど、次に同じ考えだったら取り返しのつかないことになるぜ」


 俺が手を離すと、おばあさんの姿をしたスリは感謝の言葉一つなく、素早く身を起こして雑踏へと逃げるように消えていった。

それを見送りながら、俺はあきれた感じで言った。


「お前は気づかなかったのか。あいつは俺たちと変わらない年齢だぞ。

多分、仕事をしやすくするために顔を魔法か薬で整形して、あのようにしてるんだろうよ。足腰も弱ってねえ。見てみろ、あの逃げ足。あれは長年の訓練で得た動きだ」


 エレナは顔を下に向けて、「……わかりましたわ」と小さく答える。

返事はしても、納得がいかない。きっと心を入れ替えてくれたと思ってる。

親に怒られた子供のような、拗ねた顔だった。


 ……あれはあれで、ここで生き抜くための努力なんだろうがな。

おれは、心の中で毒を吐いた。


 だがエレナ、ここで外の世界みたいな善性をやっていたら、いつか寝首を斬られるぞ。

この街は、優しさだけじゃ生きていけねえ


 俺たちは重い空気のまま、歩みを再開した。

ブラックサンドの喧騒が、さっきよりも少しだけ、冷たく肌を刺すように感じられた。


 近くまで来ると、街の中心にそびえる大きな白い城塞が、朝陽を浴びて眩しく輝きながら俺たちを出迎えてくれた。


 純白の大理石のような石材で築かれた壁は、荘厳で、尖塔の先端に翻る旗が風に優雅に揺れていた。

城門の脇には、磨き上げられた銀色の甲冑を着た騎士たちが、槍を構えて厳かに立ってこちらを見ている。

俺はそのまま城門に近づき、騎士に声をかけてみた。


「少しいいか?」


「何ようか? 旅の戦士よ」


「よくわかったな。旅の戦士なんて」


 騎士は兜の下から鋭い視線を投げ、軽く肩をすくめた。


「昨日、軽戦士風の若い女と、アウリス神の聖印を持った女神官がこの町に入ってきた話は、もう耳に入ってる。お前たちは、自分たちで気づいてないかもしれないが、女二人でこのバステルに来たら、そりゃ噂になるさ。珍しすぎてな」


 そりゃそうだわな。

言われてみれば納得だ。エレナみたいな聖女がこの街にいたら、目立って仕方ない。

エレナは少し頰を赤らめて、「やはり、珍しいのですか……?」と小声で呟いている。

ここは突っ込まないでおこう。面倒くさい。


「あることを知りたくてこの町に来たのだが」


 騎士は周囲を素早く見回し、声を低くした。


「ふむ、ここでは誰が聞いてるかわからぬ。そこの門から入って、『メリッサ様に会いに来た』と伝えてくれ。話は通じてるはずだ」


 俺たちは言われた通り、門番にその名を告げた。

意外にもあっさり通され、甲冑の騎士に案内されて城内の廊下を進む。

白い石壁に掛けられた絨毯や絵画、磨かれた床……すべてが清潔で豪奢だ。

簡単に信用して、危険な口に飛び込んでしまったか?


 俺は内心で警戒を強め、エレナを半歩後ろに下がらせながら歩いた。

案内されたのは、意外に広々とした応接室だった。

大きな窓からメインロードが見下ろせ、暖かな陽光が差し込んでいる。


 俺が椅子に座るのを待たず、周囲を素早く確認していると……向かいの扉が静かに開いた。

入ってきたのは、ミスリルチェインを軽やかに着込んだエルフの女性だった。

長い金髪を後ろで束ね、鋭く美しい碧眼。

腰には細身の剣を佩き、動きに無駄がない。

年齢は見た目で百を超えているだろうが、エルフらしい若々しい美しさを保っている。


「メリッサだ。シビにエレナ、ね」


 俺は即座に立ち上がり、エレナを庇うように半身を入れる。

手は自然と剣の柄に伸び、警戒を最大に。

エレナも俺の異常な行動を感じ取り、普段の穏やかさとは違い、冒険者として鈴を握りしめ、静かに警戒態勢を取った。

メリッサはそんな俺たちを見て、くすりと笑った。


「その警戒心はこの町では大事ね。でも安心しなさい。門番の酒場のマスターから話は来てるわ。要件は?」


 俺はエレナの顔をちらりと見て、彼女が小さく頷くのを確認した。

一応、大丈夫だという合図だ。俺たちは改めて席に座り直した。


「外の世界で、モンスターの身体に謎の紋章がつく事件が発生している。その紋章がついたゴブリンは、普通の冒険者じゃ倒せないくらい強化されてる。エリシオン王国の確かな筋からの情報では、その紋章に関する書物がこの城塞の中にあるらしい。それの所在を知り、対策を探すのが今回の使命だ」


 メリッサは静かに聞き終え、軽く頷いた。


「なるほど、その紋章なら私たちも知っているわ」


「本当か?」


「最近、外でもそういうモンスターが現れ始めて、騎士団も苦戦しているところよ。なるほど、その書物の所在がこの城塞の中にあるということか」


「どこにあるかは?」


「あいにく、正確な場所は知らないの。でも、もし見つけたら、その対策をぜひ教えてほしい」


「ああ、もちろんそれを伝えることを約束しよう。その代わり……」


「こちらも情報や協力をするわ」


「俺たちもできることがあれば手を貸すことにしよう。報酬はもらうがな」


 エレナを少し置いてけぼりにしながら、俺とメリッサは相互協力の約束を交わした。

エレナは少し拗ねた顔で俺を見ていたが、まあ後で説明すればいい。

メリッサは窓の外……メインロードを見下ろしながら、静かに続けた。


「私たちも何とかしようとは思ってるけど、人とモンスターでは分が悪くてね。なかなか街全体の開放はできない状態でもあるのよ」


「この町の維持も大変そうだしな」


「そういうこと。この白い城と大通りぐらいは何とか法を保ててるけど、裏道に入ったら完全に法の外。なんとか出せた法令は『メインロードを含む大通りでは犯罪を行うな』くらいだもの。笑えるでしょ?人の支配がしっかりできてるのは、メインロードまでなんだ」


 それは仕方ないと俺は思った。

一応、表の治安は守られてるが、いつ魔物が攻めてくるかもしれない。

大きな戦争はないが、小競り合いは絶えないのだろう。

圧倒的に人数がいない。この白い城が、街の最後の砦なんだろうな。


 一応メリッサ達もこの町内は探索してくれるらしいので、俺たちはこの小さな城壁の外を出て少し探索しようと思った。

エレナにも了解を得て決めたけど、先ほどの対応はご不満だったので、宿に戻った時にデザートをおごって一応機嫌を直してもらった、


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