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転生したら美少女冒険者に! ~おっさんの心が旅立つ異世界冒険記~  作者:
第4章 古代遺跡の調査

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19話 決着

 ドローンの攻撃が、また全方向から飛んできた。俺とエレナは、必死にそれを避ける。

ドローンの攻撃は、まるで空間全体を切り裂くかのように、四方八方からエネルギー弾が飛んできた。

足元に力を込め、俺は瞬時に左へ飛び、エレナも続くように身体をひねった。

すぐに後ろを見て、エレナが無事に回避したことを確認したが、油断はできなかった。

光る物体が視界を横切り、すぐに目を凝らすと、ゴーレムの胸元が赤く光り始めていた。


「ヤバい、こいつまさか……!」


 ゴーレムの胸元から、全身を焼き尽くすような勢いで熱光線が発射される。

目を見開いてエレナを見た瞬間、すでに足元に呪文をかけていた。


「エレナ、今だ!」


 エレナは迷うことなく反応し、弾けるように跳ね上がった。

俺も後に続こうとしたが、間に合わなかった。


ゴーレムの光線が床を切り裂き、先ほどいた場所が焦げていく。避けようと後ろに飛びのこうとしたけど、間に合わない。肩に激しい衝撃が走り、次の瞬間、焼けた肉の匂いが鼻をついた。


「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 声が喉から絞り出され、痛みが全身を貫く。

骨が軋み、焼けた肉の匂いが鼻をつき、意識が一瞬遠のく感じがした。

息をすることさえできず、体が動かない。まるで自分の体が重力に逆らって浮いているかのように感じた。

俺は左肩に視線を移す。

激しい衝撃が肩を貫き、骨が砕けるような鋭い痛みが広がっていた。

焼けた肉の匂いが鼻をつき、目の前が一瞬、白く染まり、意識が遠のく感じがした。



「だいじょうぶ……だ」


 俺はエレナに、少しでも安心させるために言葉をかけるが、声は震えていた。

しかし、エレナの顔はすぐに硬直し、震えた声で言った。


「そんなこと言っても肩が……」


 俺は痛みをこらえ、精神を集中させて力強く言葉を発した。


「蘇生のリジェネレート

肩の骨が軋み、傷が癒えていく感覚が広がる。すぐには治らないと分かっているが、エレナには安心してほしかった。


「今、再生の呪文を使ったから、数日後には元通りになる。だから、そんなに泣くな。まだあいつを倒してないんだし。」


 エレナは顔を歪ませながら、俺の言葉を必死に受け止めようとしていた。

その表情に心が痛むが、どうしてもこの戦いを終わらせなければならない。


「もう無理ですわ! 帰還の呪文を使いましょう!」


 エレナが必死に叫んだその言葉に、俺は即座に答える。


「却下だ!」


「なぜですの?」


「こいつが地上に出たらどうする?」


 エレナが目を見開き、顔色が変わる。急にその場が静かになった。


「村が壊滅するぞ。」


 俺は目を細め、素早くゴーレムの動きを追う。

オールレンジ攻撃がこちらを襲ってきたが、冷静にそれをかわしながらエレナに説明を続けた。


「それならば、賭けだ。プランがある!」


「どんな?」


「帰還の呪文を使える高僧だろ?だったら呪文返しができるか?」


 エレナが一瞬、言葉を飲み込む。そして、次の瞬間、俺に問いかけてきた。


反射障壁リフレクト・シェルは使えますが……まさか!」


「俺にだ。エレナ、頼む。お前がやったらミッションが失敗する確率が高くなる。俺なら、死んでも構わない。」


 その一言が、エレナの表情を固まらせる。しばらく黙っていたエレナが、ようやく口を開いた。


「死ぬのなら許可できませんわ」


「言葉のあやだ、エレナ。レジストの呪文は俺もかけておくから、かけてくれ。万が一失敗したとしても、お前が瀕死になったらそこまでの回復呪文を俺は持っていない。でも、俺が失敗したらすぐに帰還の呪文で首都に戻り、すぐに回復呪文ができる。」

 

 エレナはしばらく黙って考え込んでいた。その後、深く息を吸い込み、目を閉じる。

ゴーレムの動きが迫る音と共に、振動が伝わってきた。


「ですが」


 その言葉に、俺は冷静に答えた。


「失敗するのは嫌だが、これが合理的で、二人とも助かる最善策だ。俺を信じてくれ。」


 エレナの表情に一瞬の迷いが見えた。

やがてその迷いを振り払うように、決意を込めた目で俺を見つめてきた。


「卑怯ですわ。そんなことを言われたら信じるしかないじゃないですか。わたくしも全力で支援いたしますから」


 俺は安心させるようにうなづいた。

エレナに感謝の気持ちを込めて微笑んでみせた。


「ありがとう、エレナ。」


 またゴーレムの胸元から、全身を焼き尽くすような勢いで熱光線が発射される。


「くるぞエレナ!」


 さっきよりもずっと濃い光だ。あれをまともに食らったら、今度こそ跡形も残らない。

レジスト呪文を俺は唱えなかった。

唱えたところでまともに食らったら本当にお陀仏だ。

その分を跳ね返った瞬間に動けるように準備してやる。


「わかりましたわ。慈愛の女神アウリスよ、その御手で我らを包み給え。触れし魔の力よ、この盾より元の主へと返れ。反射障壁(リフレクト・シェル)!」


 

 赤い光線が床を這うように、一直線に俺たちに迫ってくる。

轟音が耳をつんざき、視界が一瞬で真っ赤に染まった。

光の衝撃が全身を突き刺し、何か硬い壁に叩きつけられたみたいな衝撃が走る。

その瞬間、光線が跳ね返り、ゴーレムに突き刺さった。俺たちは賭けに勝った。


「エレナ!俺は無事だぞ!信じてよかった」


エレナの安心したようなため息が聞こえた。赤い光がゴーレムに直撃し、その胸部がすさまじい音を立てて崩れた。ミスリルの装甲が溶け、ひび割れて、隙間から青白い光が漏れ出していた。


「シビさん……コアが」

エレナが息をのむ気配が伝わってくる。

俺は痛むあばらを押さえながら、走った。

胸の中心。あの光っている球体。あれがこいつの心臓だ。


「見えた。あそこだな」


 ショートソードを握り直す掌に、汗がにじむ。一

歩踏み出すたびに、無理をしている身体が悲鳴を上げる。

俺は地面を蹴り、一刀両断する。


「断轟!」


 ゴーレムの胸のひび割れめがけて、全力で踏み込み、一点に力を叩き込む。

手応えは、岩よりも硬くて、けれど中身は脆いガラスみたいだった。

甲高い音と一緒に、コアが砕け散り、青白い光が霧のように消えていく。

ついにゴーレムが停止した。


「……やりましたわ。」


 さすがにこれはフラグじゃないよな。

シビはその場に膝をつき、息を整える。

エレナがすぐに駆け寄り、シビの肩に手を添えた。


「シビさん、大丈夫ですか?」


「……ああ、何とか。」


 シビは苦しそうに笑いながらも、エレナに感謝の気持ちを込めて言った。


「お前がいてくれたから、助かったよ。」


 エレナはうっすらと涙を浮かべながら、シビを支える。


「わたくしも……シビさんがいなければ、どうなっていたか。」


 戦いが終わり、ようやく静寂が訪れた。

二人はしばらく言葉を交わすことなく、ただその場に立ち尽くしていた。


 ミスリルゴーレムの残骸が砂塵のように舞い上がり、次第に消えていった。

その崩れた大きな体が完全に姿を消すと、周囲には静けさだけが残った。


 静寂の中で、一本の剣が地面に突き刺さっているのが目に入る。

刀身は光を受けて青白く輝き、ミスリルで作られたことが一目でわかった。

銀色の刃は精緻で、どこか冷徹で美しい。

刃の端には微細な模様が刻まれていて、光の加減でその模様が浮かび上がる。

まるでゴーレムが最後に残した証のように、静かに立っていた。


「倒して剣一本とはな」


「それ、多分ミスリルソードですわよ」


「鑑定呪文を使ってないから断言はできないけど、たぶんそうだろうな」


「技能にはもう突っ込みいたしませんわ。それよりも、シビさん、大丈夫ですの?」


 シビは少し体を伸ばして、エレナに答えた。


「体は痛いが、とりあえず大丈夫だ。一応、この剣はもらっておいていいか?」


 エレナは少し考えてから、頷いた。


「多分構わないと思いますが、一応、ここで見つけたものは報告の義務がありますので」


「許可を得たら、俺の剣ってことで。ブロードソードが無くなったから、ちょうどいいけどな」


 その後、二人は少しだけ休憩してから、ゴーレムが守っていたであろう扉の前に立った。

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