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エレベーター

あんま怖くないです

自己責任

※この話は創作です


私は東京で営業の仕事をやっています。

その日は大事な商談があって、直接取引先の方へ出向かなければいけない日でした。

初めて行くところだったのですが、地図アプリの表示に従い、何とかビルまでたどり着くことができました。

しかしそのビルというのが、とても古くてですね。本当にここで合っているのだろうか、と不安になるほどでした。

恐る恐る中をのぞくと、案内図の一番上に「3F ××会社」の文字が。ああよかった、と安心してエレベーターに乗り込みました。


このエレベーターというのもまあ古くてですね。一階に来るまでにもごおん、ごおんと今にも壊れそうな音が鳴り響いていて、

一度去ったはずの不安は、その音とともに私の心に重くのしかかりました。階段はないのだろうかと少し探したところ、外に非常階段を見つけたのですが

そちらはそちらで黄色いテープが張られていて手書きの「危険!」という文字が書かれた紙が乱雑に貼られていました。


階段が使えないということは社員の方は皆、エレベーターの方を使っているはずです。安全なはずのエレベーターを怖がって危険な階段を強行突破するなど以ての外。もしこれで事故が起こりでもしたら、先方にも迷惑が掛かります。私は仕方なく、またあの音のするエレベーターの前へ戻りました。

一度一階へ来たはずのエレベーターには「三階」の表示が。誰かここを通ったのだろうか、全く気が付かなかった。もしかしたら私が中々来ないので、取引先の方が心配して一度降りてきてくれたのかもしれない。そんなことを考えながら、エレベーターが降りてくるのを待ちました。

その間も不安は増すばかりです。エレベーターが着き、ぼぉーん、と鈍い音がして扉が開きました。乗った瞬間に少し足元が沈むので余計に怖くなりました。


「三階にまいります」


いかにも古そうなエレベーターが急に喋ったので、このレベルの古さでもしゃべるものかと少し驚きましたが、まあそういうものか、と無理矢理納得しました。

しかしあまりにも気味が悪い。早く終わらせて帰ろうと、決意しました。

三階について、取引先との商談を終え、名刺を交換し、私はまたあのエレベーターに乗り込みました。


「い…かいにまいります」


エレベーターは少し調子が悪いようでした。何とか降りるまで耐えてくれ…。と祈っていたのですが、そこで違和感に気が付きました。

私は一階のボタンを押して、案内も「一階にまいります」だったのにエレベーターが明らかに上っているのです。気のせいではありません。

あの時エレベーターは確実に上へ向かっていました。絶対に。

そこでエレベーターがもう一度、「い…かいにまいります」といいました。妙です。何かがおかしい。


「い…かいにまいります」


もう一度。


「い…かいにまいります」


まただ。


そこからずっと、段々と間隔が狭くなりながら。

エレベーターは何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も、それを繰り返しました。

途中で携帯で誰かに助けを求めようかとも思いましたが、それもむなしく圏外の文字が表示されるだけでした。


「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」「い…かいにまいります」


明らかに、明らかに、常識では起こりえないことが起こっていました。三階から一階に降りるまでにしてはあまりにも長いように感じられる時間が過ぎた後、

エレベーターが止まり、その瞬間はっきりとした音声が聞こえました。




「異界です」




扉の向こうに何があったかは知りません。開きかけたその瞬間に、目を瞑って閉じるボタンを連打していたので。

何かが聞こえたような気もしますが、きっと気のせいです。私は何も知りません。

エレベーターは何事もなかったかのように下り、今度は本当に、本当の一階に到着しました。

ああよかった、と安心して外に出ると、外はもう日が暮れていました。携帯を見ると、最初ここへ来た時から七時間以上が経過していました。


あれは何だったのだろう、それにしても、エレベーターがおかしくなったのが帰りでよかった。行きであれば、仕事に遅れていたでしょうから。

そう思ったところでまた、強烈な違和感を覚えました。商談の内容を一切覚えていないのです。慌ててビルの中に戻ろうとして絶句しました。

古かったとはいえ、ちゃんと使われていたはずのビルは、窓が割れ、電気は通っていない廃墟と化していました。

あのエレベーターがあったはずの場所は「もともとエレベーターがあった」かのような不自然な空間があり、暗闇が広がっていました。

慌てて取引先からもらった名刺の電話番号に電話をすると「この電話番号はもう使われておりません」の音声案内につながるばかり。

私が行った場所は果たしてどこだったのでしょうか。もしかするとあのビル自体が、異世界だったのかもしれません。


皆様もエレベーターに乗るときは不思議な場所に連れていかれぬよう、気を付けて。


閲覧ありがとうございます。


※この話は創作です。絶対に作り話です。私は何も知りません。

 あなたの周りで何か起こっても知りません。私は関係ありません。


        それでは、いかいにまいります

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