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ANgelic of the Dead  作者: 書庫
五章--閉ざされた国、ファルムス帝国--
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第六十四夜:エルドリヴァイン領

エルドリヴァイン領に着いた。

陽の光が町の屋根にきらめき、門の外れから少しだけ城壁が見えている。


僕は今、プルワを背負っている。

小さな体……こうして眠っているのを見ると、やっぱり疲れてたんだなって思う。


精神的なこともあっただろうし、何より――あんな過去を話してくれたんだ。

そりゃ、疲れるよね……。


馬車の御者さん――クランさんとは、街に入ったあたりで別れた。

目的地が違うとはいえ、記憶のことも含めて、あの人にはずいぶん助けられた。

フォスターから聞いたけど、ミルベーナの魔術で“記憶を消した”らしい。

本当に、ミルベーナは何でも出来るなぁ……。


そういえば、僕も前に氷魔法と血の魔術の適性があるって言われてたっけ。

時間があったら、教えてもらおうかな……?


「うーん……」


背中で小さな声がした。

あ、起きたのかな。


「アレ?馬車は……?」


寝ぼけたような声に、僕はなるべく優しく答える。


「馬車は別の荷物を届けに行ったよ。僕たちは南のファルムス門へ向かってるところ。」


しばらく間を置いてから、急に動き出した。


「あ、ごめん兄ちゃん!オイラ寝てたんだね!?」


あたふたしながら僕の背中から降りるプルワ。

別に、そのままでも良かったんだけど……。


「ねぇプルワ、あたしたち南門に向かってるけど、合ってるよね?」


リージュが聞くと同時に、プルワが大きく伸びをし終えて答える。


「うん、ファルムスに向かうなら南門だよ。

……でも、その前に洋服を探しに行った方がいいと思う。」


その言葉に、僕たちは顔を見合わせた。


「洋服を、探しに行った方がいいって……どうして?」


「みんな少し薄着だよ、リージュお姉ちゃんは特に。

オイラは完獣ベスティアだから大丈夫だけど、

ファルムス帝国への道中は荒地や高原が続いてて、かなり肌寒いよ」


プルワがそう言うのを聞いて、僕も風の冷たさを感じた。

エルドリヴァイン領のこのあたりはまだ陽が差しているけど、すぐ先の地形は高原。

ファルムスに近づくほど、南に向かうことになるし、標高も上がるんだろうか。


「たしかに、冷えるかも……夜も寒くなるだろうし、準備しておきたいね」


「なら、街の南側に市が出てるはずだ。あっちで探してみよう」


フォスターが地図を確認しながら答えた。


「確かに今もちょっと寒いかも……」


リージュが肩をすくめて小さく震える。風は穏やかだが、空気は確かに冷たい。

季節の変わり目……いや、南門から冷たい風が来るな。

このあたりは、日差しの強さに対して空気だけが妙に冷え込む。


「門の先はお姉ちゃんの格好じゃあ、ファルムスに着くまでに凍えちゃうよ」


プルワが心配そうに言う。リージュの服装は結構薄着、防寒には心許ない。


「ならば市よりも洋服店の方がいいかもしれない……あー……南門までにある……か?」


ミルベーナの言い回しがどこかぎこちない。

あ、プルワに気を遣ってるのか。


「どうだプルワ?こっちに洋服店あるか?防具屋でもいいぞ?」


すかさずフォスターが口を挟んで空気を和らげてくれる。

さすが。


「うーん、どうだったかな……

でも向こう側に行くには準備が必要だから、多分あると思うよ」


プルワの答えには自信がないけれど、それでも今の様子を見る限り、もうミルベーナを怖がっているようには……見えない。いや、正直わからないけど。少なくとも、さっきみたいな怯えきった時のような反応じゃない……気はする。


……街の南に向かうにつれ、人影がまばらになっている。


「家屋や武具屋は多いけど、人、少なくなってる感じしない?」


僕がそう言うと、プルワが当然のように返す。


「そりゃそうだよ、ファルムスに行く人なんて交易する人ぐらいだもん」


交易か……


「そんだけ行く奴が少ねぇってことか……」


フォスターが呟いたその言葉には、ほんの少しだけ警戒が混ざっていた。


「あ、あそこ。暖かそうな服が飾ってるよ!」


リージュの声が弾む。

彼女の指差す先には、色とりどりのクロークや外套がいとうが並べられていた。


「ここは……女物の武具屋っぽいな……」


フォスターが様子を伺いながら辺りを見回す。


「あ、フォスター、向かいのお店は僕たちも買えそうだよ」


僕が指差すと、フォスターも頷いた。


「ならオレらはあっちに行くか。姫、ミナ、あんま長居はすんなよー」


ああ、また余計なことを……


「えー!ちゃんと選ぶのは時間がかかるの!先に終わっても待っててよ?」


ほら、リージュがすぐ噛みついた。


「うん、先に終わったら馬車の手配とかをしに行くよ。ゆっくり選んで」


僕が間に入って収める。

……なんか最近こんなことが多くなった気がする。




ミナが店のドアを開けると、ほんのり金属と革の匂いが鼻をかすめた。

うーん……ここ、洋服屋っていうより、防具屋っぽいかも……?


「いらっしゃいませ」


カウンター奥から現れたのは、オレンジ色のウェーブがかった髪をセミロングにまとめた、うーん……お姉さん……いや、ちょっと年上かな。

でもおばさんって言ったら怒りそうな気がする……


「どんなものをお探しですか?」


「あ、えと……」


あたしはとりあえず店の中を見てから決めようと思ってたんだけど、話しかけられてちょっと戸惑った。その時、


「今からファルムス帝国へ向かうのだが、彼女の防寒具を選びに来た」


ミナが落ち着いた声でそう答えた。

あれ?

ミナ、自分の服はいいのかな?

一緒に探すってわけじゃないんだ?


「ファルムスへ……」


お姉さんの表情が少し曇った。


「お嬢さんがた、悪いことは言わない。あっち側への旅はやめなさい」


あっち側……?


あたしはミナと顔を見合わせた。

ちょっとだけ、不安が胸の中で広がる。


「交易の商人ならまだわかるけど、あなたたち、まだ十代でしょ?

旅をするならエルヴィルダの方が良い。そっちの子は腕に自信ありそうだし」


エルヴィルダ……確か六命のオカマさんと戦う前に訪れた町の名前。


ミナを見てそう言うお姉さんの目は、どこか本気だった。

心配してくれてるのはわかる……けど、それだけファルムスって場所が危ないってことなんだろうな……

今後はしばらく火、木曜日の11時更新となります。

元のペースに戻せそうになり次第、お知らせいたします。


【2025年3月31日、第一夜〜第三夜 改稿リライト】リライト企画進行中(牛歩)

現在第一夜〜第三夜の文章と構成を全面的にリライトしました。

以前のバージョンを読んでくださった方も、改めて楽しんでいただけたら嬉しいです。


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https://x.com/r5mswm?s=21&t=YDHDT292BvtoU2Xhs0cHWQ

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