第十四夜:咲きほこる鮮血の華園 後編
“美しき絶望” の幕開け
「さぁさぁ♡ どこまでアタシを楽しませてくれるのかしらぁ?」
アンドレアルフスがしなやかに宙を舞い、孔雀の羽のマントを優雅に広げる。
彼の周囲に漂う瘴気が、まるで美しい霧のようにゆらめき、三人を包み込もうとしていた。
「言っておくが、そんなしなだれた野郎に付き合ってる暇はねぇ!」
フォスターが先陣を切る。大斧を肩に担ぎ、地面を強く蹴って突進した。
「ホホホ♡ ワイルドなアタックねぇ〜♡」
アンドレアルフスは指先をくるりと回し、彼を挑発するように待ち受ける。
「オラァ!!!」
振り下ろされたフォスターの一撃が、アンドレアルフスを真っ二つに……したかに見えた。
しかし――
「ウフフ♡ そんな単調な攻撃じゃ、アタシには当たらないわよ♡」
フォスターの斧は空を切った。
次の瞬間、アンドレアルフスの姿はフォスターの背後にあった。
「うおっ……!!?」
驚く間もなく、アンドレアルフスの爪が彼の肩を抉る。
「ちっ、速ぇな!」
フォスターはすぐに反転しようとするが、アンドレアルフスはまるで舞踏するかのように優雅に跳躍し、距離を取る。
「もぉ♡ 男の子はもっとスマートに戦わないとぉ♡ 野蛮なのは美しくないわぁ♡」
「だったら……こっちはどう?」
ミルベーナが割り込むように動いた。
彼女の手には、淡く光る大剣が握られている。
「千光剣――“赫閃”」
彼女の腕がかすかに震えた次の瞬間――
無数の光の筋がアンドレアルフスを切り裂いた。
一瞬の静寂。
「……アラァ?」
アンドレアルフスは驚いたように自らの体を見る。
彼の服の至るところが裂かれ、皮膚から黒い血が滲んでいた。
「うふふ……♡ ちょっと驚いちゃった♡ こんなに鮮やかに切られるなんてねぇ♡」
「なら、もう一撃――」
ミルベーナは剣を構え直し、再び千光剣の構えを取る。
「ダ〜メ♡ これ以上はアタシの美が損なわれちゃうわ♡」
アンドレアルフスが片手をかざすと、マントの羽がまるで刃のように飛び散った。
「っ……!」
ミルベーナは咄嗟に千光剣で防ぐが、アンドレアルフスはすでに視界から消えていた。
「さてぇ、次は……♡」
「僕の番かな?」
ジークがすでに彼の背後を取っていた。
「ッ!? ちょっと……アンタ、速いじゃない♡」
ジークの炎を纏った蹴りが、アンドレアルフスの腰に直撃する。
「イグニス・カルクス!」
ドガァッ!!
灼熱の蹴りが炸裂し、アンドレアルフスの身体が地面に叩きつけられた。
しかし、彼はすぐに起き上がり、愉快そうに笑った。
「ホホホ♡ なるほどぉ、いいじゃない♡ いいじゃない♡」
「……こいつ、流石にタフだな」
ジークが小さく呟く。
アンドレアルフスはゆっくりと立ち上がると、優雅にマントを翻した。
「ねぇ? アタシ、決めたわ♡」
「……?」
フォスターたちは警戒を強める。
「お遊びはここまで♡ アタシ、本気で踊ってあげるわ♡」
アンドレアルフスの全身から異常な魔力が溢れ出す。
「え……?」
まるで孔雀が大きく羽を広げるように、彼の背後に闇が広がった。
「これからは、アナタたちの絶望を楽しむ時間よぉ♡ “死の舞踏”を始めましょう♡」
地獄のステージが幕を開けた――。
“死の舞踏” の幕開け
ゾワリ――。
それは、身体の奥底からくる悪寒だった。
アンドレアルフスの周囲に漂う瘴気が、まるで生き物のように蠢き始める。
彼の白い肌は不自然なまでに滑らかで、気味が悪いほど美しい。
「さぁ♡ もっとアタシを楽しませてぇ♡」
彼は楽しげに両腕を広げると――
パチンッ!
指を鳴らした。
次の瞬間、
「ッ!?」
フォスターの身体が、まるで見えない糸に引かれるように宙へと浮いた。
「な……に……ッ!!?」
「ア〜ララ♡ ガタイの割に軽いのねぇ♡」
アンドレアルフスは、まるで指先で糸を操るように、軽やかに手を動かす。
フォスターの身体が空中で回転し――
ドゴォッ!!!
地面に叩きつけられた。
「グハッ!!」
「フォスター!!」
ミルベーナが飛び込むが、次の瞬間、彼女の視界が一瞬ブラックアウトする。
「――ッ!」
気づけば、目の前にアンドレアルフスがいた。
(近過ぎる……!!)
「ホホホ♡ アタシは一つのことしかできないお人形は好みじゃないの♡」
彼は、ミルベーナの頬を人差し指で撫でる。
「もっと綺麗に仕上げてあげるわ♡ “死と言う美”でね♡」
ズブッ。
次の瞬間、彼の爪がミルベーナの腹を貫いた。
「ガハッ……!!」
焼けるような痛みが全身に走る。
「アハァ……♡ やっぱりこの瞬間が最高よねぇ♡
この世界を美しくするには、痛みと絶望が必要なのよ♡」
「……あんた、ほんっと、気持ち悪いわね……!!」
ミルベーナは血を吐きながらも剣を振るうが、アンドレアルフスはするりと後ろに下がる。
「アラァ? まだ元気そうねぇ♡ なら、もうちょっと遊んであげるわ♡」
ジークがすかさず突撃する。
「イグニス・カルクス!!」
炎を纏った蹴りが直撃する――と思ったその瞬間。
「ア〜ララ♡ ダメダメ♡」
アンドレアルフスは”一本の指”だけでジークの蹴りを受け止めた。
「えっ……?」
次の瞬間、ジークの身体が宙を舞う。
ドガッ!!
背中から壁に叩きつけられ、空気が肺から抜けた。
「っ……がは……!!」
ミルベーナが痛みにこらえながら斬りかかる。
「千光剣――赫閃!!」
再び無数の斬撃がアンドレアルフスを襲うが――
「ダァ〜メ♡」
彼は舞うように回転しながら、軽々と全てを避けた。
「もう♡ そんなに焦らないでぇ♡
せっかくの”絶望”、もっとじっくり味わいましょうよぉ♡」
「くそ……!!」
ミルベーナは剣を構え直すが、アンドレアルフスはすでに消えていた。
「さてぇ、そろそろフィナーレといきましょうか♡」
フォスター、ミルベーナ、ジーク――
三人とも、ボロボロだった。
「オーホホホ♡ 最高に美しいわぁ♡」
アンドレアルフスは狂気的に笑いながら、ゆっくりと手を広げた。
「じゃあ最後の仕上げをしましょう♡」
彼の爪が大きく振り上げられた――
その時――。
「待ちなさいよ!!」
凛と毅然とした声、しかしどこかうわずっている
「あら〜ん♡ どなたぁ♡」
そこに立っていたのは、リージュ――。
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