深夜の公園に響く絶叫
夏のホラー2024 投稿用。
本文と後書きはセットなのですが、本文だけで終わりにしておけば……と後悔するかもしれませんので、その辺は自己責任でお願い致します。
深夜の運動公園。
運動するのに適した、大きな公園。
昼間は様々な目的で集まる利用者によって賑やかな公園だ。
だが深夜はガラリと変わる。
深夜にわざわざ大きな公園に来るものなぞ滅多におらず、居るとしたら深夜でも明るい場所に居場所の無い、後ろ暗い者達ばかり。
そんな者達が集まってきて騒いでいるのを知ってしまえば、身の危険を感じてしまい余計に利用者は遠のく。
そんな危険な場所である深夜の運動公園だが、最近はどうも勝手が違ってきているらしい。
その原因は、とある噂。
深夜の運動公園とその周辺に、公園を中心として絶叫が繰り返し響き渡るらしい。
お陰で周辺の家では寝不足の人が少なからずいるとか。
だが逆に、その絶叫によって後ろ暗い者達が恐れて、最近は寄り付かなくてある意味で安全になっていると聞く。
なにせその絶叫だが、繰り返し響き渡っても一部が寝不足になるだけで、それ以外の被害が起きていないのだ。
これは見方を変えると、後ろ暗い者達を追い払うと言うモスキート音に近いものなのだ。
そう、取材に答える周辺住民もいた。
が、その絶叫の正体を周辺住民は誰も教えてくれなかった。
態度からどうも知っていそうなのだが、口にはしてくれないのだ。
なので、我々は絶叫の原因を解明するべく深夜まで公園ノ周辺で待機することにした。
〜〜〜〜〜〜
時刻は午前1時過ぎ。
絶叫が公園の中から聞こえてくる。
どうやら始まった様だ。
我々取材チームは息を潜め、足音を極力出さない様に気を付け、絶叫の発生源へと近づく。
「おおおおおおおおっ!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
「ん゛ん゛ん゛んんんんん゛ーーーー!!!」
「ゔぁぁぁああ゛あ゛あ゛あ゛あっっっっ!!!」
「あああ゛ああぁぁいいい゛っっっっ!!!」
様々な絶叫が響き渡りその声に何度も萎縮しそうになりながら、ついに中心地へ近付いた。
場所は筋トレに使えそうな遊具が複数置かれているスペース。
そのスペースの地面に置かれた小さな光源。
光源の周囲には、何人もの人らしき影がある。
どうやら単独や少数による行動ではなさそうだ。
そう判断し、正体に迫るために更に近付くと、少しだけ影がどんな動きをしているか見えるようになった。
この頃に一緒に取材に来た背が低めで女顔の同僚が「アレは、まさか、そんな、もしかして」とつぶやいていたのだが、知っているか訊ねても口を強く結んで何も言わない。
身を隠して行動するために明かりを点けないで行動しているので、同僚の表情は暗くて見えない。
影同士で繰り返しくっついたり離れたり、ずっと同じポーズで固まっていたり、規則的な動きで揺れたり回転したり。
地面へ倒れた影にのしかかる影も見える。
なんとも形容し難い影の動きをしていた。
もちろんその間にも絶叫は響き渡り同僚の態度も相まって、まるで聞いている我々に「これ以上近寄るな」と警告しているようにも聞こえてしまう。
だが我々は真実を追い求めるジャーナリストであり、勇気をもって接触するべきなのだ。
そう自分で自分を奮い立たせ、あと少しの所まで来たのだが。
いきなり「ごめん」の言葉を残し、同僚が逃亡。
その衝撃で頭が真っ白になって無防備な精神に、まるで追い打ちをかけるようにタイミングよく絶叫に襲われ、我々取材チームは総崩れ。
絶叫と言う圧に負け、我々は真実を追い求められぬまま、取材は終了した。
あの絶叫集団は、
以下、真相
「どうも、こんばんわ」
「あ、どーもどーも」
「どうです? イッときます?」
「ええ、いつも通りヤりましょう!」
「ではまずは……どうしましょうか」
「背筋伸ばしストレッチからやりましょうか?」
「良いですね! …………でも今回は、前回あまりヤッてなかった、お互いの手を壁にしたアキレス腱ストレッチからヤりませんか?」
「良いですね! そうしましょうそうしましょう!!」
「ゔゔゔゔゔーーーー!! ちょっと強すぎますよ!」
「こんなのいつもの事おおお゛お゛ぉぉぉーー!! 痛いです、よっ!!」
「おーーーい、加藤さーん!」
「ああ、山畠さん! 今夜も参加ですか?」
「ええ、昼間にやると恥ずかしいし、家族からからかわれてヤり難いですからね」
「ですよねぇ。 ですので、こうやって夜に密かに集まって、運動して、痩せて見返してやりましょう!」
「もちろんです!」
真相は、深夜に近所の男性達が集まって、こっそりダイエットしていた。
その事前運動のストレッチとかで、お互いふざけ合って強めにやって痛いと言うのを我慢すべく漏れた絶叫です。
もちろん絶叫なんて響かせれば周辺のご家庭にモロバレ。
なお取材チームの女顔の同僚は過去に受けた心の傷により、何か別のものを幻視して逃げました。
つまり勘違いです。