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オーガは動きは遅いが、一歩の歩幅が大きくフロガ一向は小走りしながらついていった。

すぐにオーガの集落と思われる渓谷についた。

オーガが力づくで掘った洞窟や、木を適当に並べただけの雨風が防げるかどうかの住処が見えた。

フロガ達を引きつれたオーガは他のオーガに咎められることもなく、オーガの長老と思われる腰の曲がったオーガの元に連れてきてくれた。

オーガの長老は話す速度こそ遅かったがちゃんと会話が出来た。

クラが前と同じようにフロガに黙っているように伝え、交渉に入った。

警戒する必要もなく、長老は素直に話し会いに応じてくれた。

人間が多数縄張りに入ったので排除した、ゴブリンが共に戦ったが怪我をした、そのゴブリンは族長の元にいる等々。

フロガは父に早く会いたくヤキモキしていたが、クラは的確に

「その族長の所に連れて行ってほしい」

と告げたが、族長は渓谷の奥地におり、選ばれた者以外は族長の元へはいけないと言われる。

「試練をー受けー・・・それをー見事ー超えたー者がー」

その話しをしている途中で、長老は地面に座っていたが、疲れたのか寝転んでしまった。

試練の内容を問いただしても、寝転んだまま

「山のー上のー岩をーここまでー」

「しるしをーさがすのじゃー」

とよくわからない事を口走りだした。

とりあえず、フロガ一向は長老の前から立ち去り、先ほどから後ろに控えていた連れてきてくれたオーガに聞いてみた。

「お、オレも試練。受ケる」

「一緒に受けるって事?」

フロガは長老も、このオーガも嘘をついていたり、適当な対応をしているとは思わなかった。

だが、いまいち何を言っているのかが理解できなかった。

クラとラッグスも話しに入り

「お前も試練を受けて族長に合いたいのか?」

「試練の内容を知っていたら教えてくれ」

そんなこんなで、このオーガ、名前は「ロン」。ロンも成人の儀式を受ける時期で共に試練を受けて族長の元へいきたいらしく、試練の内容は「力を示す」ことらしいとわかった。

山の上から特定の大きさの岩を運んでもいいし、珍しい花や虫を見つけて、族長の守護をしている者へ見せればいいような内容と思われた。


フロガ達5人とオーガのロンはどうするか考える事にした。

「ロンは岩をはこべるの?」

「い、い、岩クライオーガみんな、も、もでる」

「じゃあ岩を山まで取りに行こうか?」

フロガはみんなの意見を聞こうと思っているとゴロが立ち上がり、少し先にある木をじっと見た。

「ゴロ?どうしたの?」

「族長。コノ木はドウダ?」

「え?その木って?」

フロガはそう言われて木のそばのゴロの隣に来た。

「コノ木ダケ白い。珍しイ木ダ」

「あ、あの高い所に赤い花が咲いている。ロン届く?」

ロンはズカズカと隣に来て枝を折るのかと思いきや、幹をつかみ木を抜こうとした。

「ロン!木は抜かなくていいよ!枝!あの花の所だけ折って」

ロンは少しだけ不満げな表情で手を伸ばし枝を折ってフロガに渡した。

「ありがとうロン、これで大丈夫だと思う」

フロガは不思議とこの小さな赤い花をつけた枝があれば父に会えると確信めいたものを感じてた。


再度ロンを先頭にフロガ達は渓谷を上流に向かって進んだ。

しばらく進むと一人のオーガが岩に腰をかけていた。

フロガはそのオーガに木の枝を差し出した。

オーガは無言で全員の顔を一人一人見て、あごをしゃくり奥へと歩き出した。

フロガ達は顔を見合わせ頷きついていった。


無言で前を歩くオーガについていった。

渓谷の谷あいにオーガも通れるような大きなヒビ割れがあり、その奥は洞窟になっていた。

洞窟の中に数人のオーガと、壁にもたれているゴブリンがいた。

父だ。父は傷だらけで、意識が薄れているようだった。

フロガの心臓は激しく打ち、彼は父に駆け寄った。

「父さん!」

父はぼんやりとフロガを見上げ

「フロガ、無事だったか」

座ったまま手を広げた父グラッツィにフロガは抱きつき泣いた。

「ご、ごめん父さん。家族を守れなかった。みんなが・・・みんなが・・・」

フロガの声は震え、涙が頬を伝った。

「ボクがもっと強ければ・・・もっと早くここ来ていたら・・・」

父はなにも言わず、ただ静かにフロガを見守っていた。彼の目には理解と同情が浮かんでいた。

そして

「そうか」

と一言だけ言った。

言葉以上に深い意味を感じ取った。フロガにとっては理解の証と受け取った。


後ろでクラやラッグスがオーガの族長と何かを話していた。

フロガは再度父を見ると、無言で頷いていた。

フロガはもう一度抱きついてからクラ達の会話に混ざる事にした。

オーガの族長も年老いて見えたが、さっきの長老より明確に会話が出来た。

「グラッツィが傷だらけでここに来て、人間が攻めてきている、もうすぐここにも来る」と族長は説明した。

できるならゴブリンの集落を助けてほしいと願っていたが、オーガの集落も人間に対抗し、縄張りを守るので精一杯だとの事だった。

フロガは父を誇りに思い、また父を助けてくれたオーガに感謝した。

クラやラッグスと話し合い、グラッツィの怪我がもう少しよくなるまで、ここに滞在できないか交渉してみようと考えていたところ

「族長!川上から人間が!」

という報告がはいった。オーガ達は迎撃に出ようとしていたが、別のオーガも大声で叫びながら走ってきた。

「あちこちから人間がキタ!集落のオーガ足りナイ」

「すまんがゴブリンの客人よ、戦えるなら力を貸してくれぬか」

オーガ族長はそれだけいって他のオーガを引きつれて出て行ってしまった。

「お、オレは村、守リ行く」

ロンもそれだけ言って走って出て行ってしまった。

「おいフロガ、外の様子見てくるぜ、お前はオヤジさんと待っとけ」

「ワシも見てこよう。スニグとゴロよ。お前達はワシらの族長を守れ」

「マカセロ!」

フロガだけが取り残された感じで、ラッグスとクラは出て行ってしまった。

「ぞ、族長!お、オデダチ強イ、任セロ」

スニグとゴロは洞窟の入口の方を向いて警戒している。

フロガは父の元へ行き

「父さん、傷は傷む?動ける?」

グラッツィはフロガの頭を撫でながら

「いい仲間ができたな、お前一人くらい守れる」

と答えた。

その時、ラッグスが戻ってきた。

「川の上流は人間が遠くから弓を打っている。ありゃ戦う気ねえな」

「そうなんだ。オーガの族長達は?」

「大声出しながら岩を投げてたぜ。って事は下があぶないのか?」

「クラは大丈夫かな、ボクも見に行く!」

「あーよし!スニグ、ゴロ。お前達はオヤジさんの護衛だ。フロガの護衛はオレだ!」

そう言ってフロガの背中を叩き

「よし行こう」と声をかけた。

渓谷を下りオーガの集落を目指した。

途中から煙が所々であがり、大きな岩が空を飛んでいるのが見えた。

すこし小高い丘があり、そこから様子を見る事にした。

気が付くとクラが隣にいた。

「フロガよ、コイツはまずいかもしれん。そこから見てくれ」

白い目でフロガを見て言った。

フロガとラッグスは丘の上からオーガの集落を見下ろした。

距離はあったが、大きな岩を飛ばす木の門のような物や火のついた弓矢を持った人がたくさんいる。岩陰や崖の上にも人間の姿が見えた。

オーガはさすがの強さで向かってくる鉄の鎧の人間を次々投げ飛ばしていたが、横や後ろから矢や槍をさされたり、岩の落下地点に誘導され数を減らしていた。

「クラ、ラッグス。戻ろう。オーガの族長に集落で戦わない方がいいと言おう」

おそらく人間は犠牲を出しながらも斥候を出し、地形を把握し、自分達に有利な展開になるように戦っている。

単体でいくら強くても、人間の数と戦略に翻弄されるのも時間の問題だった。

フロガは族長に会い、その話しをしたが

「ワシらは最後の一人まで誇り高く戦う」

と言われ、聞き入れてもらえなかった。


フロガ達はこのままではこの族長の洞窟まで人間が攻めてくるかもしれないと思い、自分達だけでも撤退しようと考えた。

しかし、自力で歩けなそうなグラッツィを抱えて逃げるのは難しいと焦点はそこに集中した。

するとロンが戻ってきた。

ロンは何か所かに切り傷と矢を受けていたが、動きは問題なかった。

「族長がお前タチ、助けろト」

フロガは族長とロンに感謝し、すぐに逃げる計画を立てた。

ロンに父を任せて、日が沈んでからザザやリッドの元に戻る事に決めた。

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