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一向は途中で小動物や植物をつまみながら朝焼けに染まる東の山間部を目指した。

フロガが住んでいたのは、ラッグスがいた場所から北の方角で、南に行けば人間の街があるらしい。

ラッグスのいたゴブリン集落は元々人間の集落だったが、オーガの襲撃で壊滅的な打撃を受けたあげく、ゴブリンの追い打ちにあい、ゴブリンが占拠したとの事だった。

たまに人間が来ていたが、あんなにたくさんの武装した人間が来たのは見たことがなかったようだ。

フロガも住居に流れ込んで来た人間達を思い出していた。

そんな会話をしながら森を抜け河原に出た。

「この川沿いを行けばもうつく」

そうラッグスは言いながら川の水を飲んだ。

この川は川幅も広く、河原や川の中には丸い大きな石がゴロゴロとしていた。

他の面々も川につかりながら顔を洗ったり水を飲んだりしている。

フロガも恐る恐る川に近づき両手で水を掬って飲んだ。

その様子を見た川に半身浸かっているスニグが

「族長!水ガ怖イノカー!」

と言って両手で水をバシャバシャとフロガにかけた。

「うわっ!ちょ、ちょっとやめてよスニグ!」

「ハハハ、一緒ニ体洗エー」

フロガに抱きついて一緒に川に飛び込んだ。

フロガは慌てて川から上がって

「は、早く行こう!」

そういって川から遠のいた。

フロガを除く4人は顔を見合わせ笑った。


川の上流を目指し、河原を歩いていくと山間部に入った。

木は減り赤い岩肌が目立つようになってきた。

川は崖の間から流れてきている。

「そろそろオーガの縄張りだ」

そう言いながらラッグスは両腕をグルグルと回しだした。

戦闘準備のようだ。

フロガは不安からか、クラを見たがクラは相変わらずの無表情で無反応だった。

その姿を見て少し安心したが、少し先に人間だったと思われる死体があった。

ずいぶん前に殺されたのか、死体には潤いは無く、血だったと思われる赤黒いシミが地面に少しだけあった。

皮の鎧を着ていたのか、胸はぺったんこにつぶされ、頭も潰されていた。

5人のゴブリンは警戒しながら進んでいくが、周囲には大量の人間が散乱しているのを発見する。

これがオーガの仕業であることは明らかだった。

「おい、きたぞ」

クラとラッグスがほぼ同時に前を見て言った。ラッグスは笑っている?

前から巨人が木を担いで来た。

緑の巨人は左右に体を揺すりながら、ゆったりと歩いてこちらに向かっている。

持っている木は杉の木をそのまま抜いたようで、大きな根っこに土がついており、葉も緑だった。

「避けろ」

「くるぞ」

「おおおおおおああああああ」

オーガは大声で吠えながら、よだれを垂らして持っている大木を投げつけてきた。

フロガは目を開けて固まっていたが、ラッグスに担がれて人間の死体の山の後ろにたどり着いた。

「ここで見とけ!」

「え?あ、気を付けて」

ラッグスはニヤニヤしながらオーガに向かって走っていた。

フロガは周りを見た。

オーガの投げた大木が地面に転がり土埃と人間の死体からちぎれた手足が舞っていた。

スニグとゴロはカマを片手に左右に分かれてオーガを目指している。ラッグスはオーガの足元にたどり着いていた。

「おい、のろま!」

オーガの足を殴る蹴るしている。

ゴブリンの身長だとオーガの股下しかないから仕方ないのか。

オーガは手でつかもうとしたり足で蹴ろうとしているが、ヒラヒラといとも簡単に躱している。

「ラッグスは大丈夫そうかな。クラは・・・?」

フロガはクラを探したが、どこにもいない。まさかさっきの木にやられて・・・

まだ転がっている大木を見ていたら静かになった。

オーガは立ったまま動いていない。オーガの肩にクラが乗っていた。

杖を耳の穴に刺したようだった。

クラは杖を引き抜いてオーガの肩から膝、地面へと飛び降り

「フロガ、来い」

と手招きをしていた。

立ったまま動かないオーガの前に全員集まった。

「やるなジジイ、さすがだ」

「お前らの陽動がよかったんじゃ。フロガよ、お前の言葉ならこいつらも聞くはずだ」

「え?」

「敵ではないと伝えてくれ。できるなら集落まで案内してくれと」

「お、オーガは死んでないの?」

「ああ、今から交渉に行くのに殺したらまずかろう?」

「あ、ああ。そうだね。ええとオーガ。ボク達は敵じゃない。わかる?」

バシンとラッグスがフロガの背中を叩いた。

「おいもっと声を張れ!」

フロガの耳元で大声でそう言われ耳がキーンとなったが、フロガは大きく息を吸い

「オーガよ!我らは敵ではない!」

大声でそう言ったらオーガは跪いた。大きなよだれもフロガの足元に垂れてきた。

「う、うわー!?」

「おいなんだよ!せっかく俺が惚れた男だと思ったいい場面だったのに!よだれにビビるなよ!」

と、またラッグスに背中を叩かれた。

「で、でもよだれがすごい量だよ?」

「はっはっは」

誰ともなく笑い出していた。

フロガも皆無事で良かったと思い笑ってしまった。

そこへもう一人のオーガが岩陰から走ってきた。

緊張が走るなか、そこへ大声で

「ゴブリン、オ、オマエ、マテ!」

オーガは両手を上げて走ってきて、フロガの前にしゃがみこんだ。

「オ、オマエ、オマエラ敵じゃない!」

しどろもどろな喋り方だが会話が出来そうだと思い、フロガは胸を張って

「我らは敵ではない!オーガの集落にゴブリンがいるか?連れて行ってほしい!」

フロガは父を想い、目の前でしゃがみこんでもゴブリンより大きなオーガの目を見てそう言った。

オーガは大きな体を小さくして「ヒッ」と小さくない声でいい正座した。

「わ、わがっだ、一緒に行ク。ゴブ、ボブリンきだ」

最後の方は何を行っているのかわからなかったが、オーガの集落に連れて行ってくれるようで、オーガはたちあがり、谷の方に歩き出した。

フロガはほっとして、仲間たちと顔を見合わせついていった。

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