聖女争奪①
帝都の流行り病も治まって、国内の人々に大歓迎をもって受け入れられた。そうして平穏な日々を送っていたある日、突然テオドールの来訪を受けた。
「前触れもなく済まない。緊急の知らせがあって……」
テオドールは一枚の書簡らしきものを握っていた。その顔は、いつも穏やかな彼にしては険しいものだった
「テオドール? 様子がなんだか変だわ。それに朝からこんな急に。なにか大変なことがあったのね? ……マリアにお茶を淹れさせるわ。こちらにどうぞ」
「……いや、それは必要ない。マリアは部屋を出ていて欲しい」
「……承知しました」
マリアは、なにかを悟ったかのようにテオドールの指示に従って、一礼してから部屋をあとにする。
部屋に残ったのは私とテオドール、二人きりだ。
私はテオドールの表情の険しさに身構えつつも、ひとまずソファに移ろうと彼を促す。すると、テオドールは私に従ってソファに腰を下ろした。私は、その向かいに座る。
そして、飲み物はなしで向かい合う。
「……単刀直入に言う」
「ええ……」
テオドールの緊迫した面持ちに私は少々気圧されながら答える。
「……アンベール王国が、君の返還要求を申し出てきた」
テオドールが両手を組み、顔を伏せながら驚きの言葉を口にした。
「……え?」
「アンベールの王太子の婚約者リリアーヌを返せと言ってきたんだ。……リリアーヌ。君を疑うわけではないが、どういうことなんだ、これは」
伏せていた顔を上げてテオドールが私に問う。その表情は険しかった。
──私……疑われているの?
「そんな……だって私は、王太子に国外追放を言い渡されて、森に捨てられたのよ? それは前にも話したわよね?」
「ああ、聞いている。けれど、なぜ今になって君を彼の国の王太子の婚約者などと言って、返還要求などしてくるんだ?」
──なんだか私が尋問されているみたい。まるで信頼されていないみたいだわ。
私は、未だに王太子エドワードの婚約者と言われ、返還要求があったことには驚いたが、傷つけられたのはテオドールの態度にだった。
「……私の言ったことは信用できないというのね」
すうっと心の中に冷たいものが落ちていく。
「リリアーヌ、そうじゃない」
「いいえ、そういうことだわ。私があなたに説明したことなど、信用できないと言っているんだわ!」
私は私受け入れてくれていた人から、全面的に拒否されたような気がして、心が悲しみに満ち溢れていた。私はそれを心のままに吐き出す。それが険しいとげとなってテオドールに向けられる。
「私を信用できないと言っているんだわ!」
「そうじゃない!」
その後は会話にもならなかった。
──彼と同じ空間にいたくない!
「私の気持ちを疑ったあなたとなんて一緒にいたくないわ! 出て行ってちょうだい!」
「リリアーヌ! 落ちついて!」
「無理よ! 出て行って! 顔も見たくないわ!」
私はソファから立ち上がり、勢いのままに私は彼に酷い拒絶の言葉を投げつける。私の瞳には涙が浮かんできていた。
滲んだ視界には、彼が大きく目を見開き、傷ついた様子が映っていた。
その顔を見て、私ははっとする。けれど、一度発した言葉を撤回する気にもなれなくて、無造作に自らの手の甲で涙を拭いながら、彼に背中を向けた。
「わかった……今日はお暇するよ」
「……」
「疑ったと思わせるような言い方をして済まなかった」
テオドールはそう言い残して部屋を後にした。
パタン、と扉を閉じる音がして、彼が部屋を後にしたのを知る。
──行ってしまったわ。酷いことを言ってしまった。
悲しみで、再び涙がポロポロと溢れてくる。それは瞳から溢れ、頬を伝い、顎から絨毯にポタポタとシミを作る。
ふと見ると、かつて婚約を申し込まれたときに左手の薬指に嵌められた指輪にも涙が落ちたのか、濡れて鈍く光っているのが目に付いた。
──あんな酷いことを言ってしまって。もう、終わりなのかしら。
そう思って悲しくなって、指輪を指から引き抜き、テーブルの上のガラス製の小物入れにしまう。カランと硬質な音が響いて、余計にもの悲しくなった。
──これも、返さなくちゃいけないのかしらね。
「テオドール……」
──やっぱり、信用してもらえないのかしら?
返還要求への驚きよりも、自分のことを信用してもらえなかったような発言を受けたことが辛くて、私は力なくソファに腰を下ろす。
別に婚約者がいながら、テオドールの婚約者になった。彼は私をそんなだらしない女だと思ったかしら?
他に異性がいながら、テオドールの愛の言葉を受けて、キスを受けて。そんなあざとい女に思われたのかしら。
考えれば考えるほど、思考はマイナスの方向へ落ちていき、悪い方悪い方へとぐるぐると思考がループする。その間も、私の頬を濡らす涙は止まらなかった。
そうしてしばらく気落ちしていると、コンコン、と扉をノックする音がした。
「だあれ?」
おっくうに思いながらも、私は扉の向こうへ返事をする。
「ミシェルよ。テオドールに、あなたを慰めて欲しいって言われたから、来たの。入るわよ」
テオドール、との名前に、一瞬断ろうかと思ったけれど、ミシェルが扉を開ける方が早かった。断るまもなく彼女は扉を開けて入ってくる。
「なあに! そんなに顔をぐしゃぐしゃにして!」
私の顔がそんなに酷かったのだろうか。ミシェルが駆け寄ってきて、ハンカチを取り出す。そして隣に腰を下ろして、私の頬を優しく拭ってくれた。
「あのね、ミシェル。……私が前にいたアンベール王国から、私の身柄の引き渡し要求があったらしいのよ……」
「……え? 前に聞いた話じゃ、あの国の王太子が浮気したのよね? それで、あなたに妾に身を引けって言って。だからあなたは婚約破棄するって言ったのよね?」
「そう……。なのに、いまさらなにを考えているのか、王太子の婚約者だって言い出してきているの」
「なによそれ! その上危険な森に捨て置いておいて、婚約者だから返せなんてふざけているわ!」
憤慨してくれる様子が、私の代わりに怒ってくれているようで嬉しくて、私は少し笑顔を取り戻す。
「もう。リリアーヌ姉様! 笑っている場合じゃないわよ!」
「え?」
すると、ミシェルが私の両頬をペしペしと軽く叩く。
「怒るときはちゃんと怒りなさい。……怒るべき相手にね」
「ミシェル……」
そして、叩く手を止めて、優しく頬を包み込む。
「ねえ、あなたが今怒りをぶつける相手はアンベール王国にじゃないの? それで、大切なあなたのテオドールと喧嘩してどうするのよ」
ミシェルの言うことはもっともだ。私は怒りをぶつける相手を間違え、そして、身近にいたテオドールの言葉に傷ついたことを理由に、彼を拒絶してしまった。
「……リリアーヌ姉様、これ」
ミシェルが隠し持っていたらしい紐で結われたピンクのマーガレットの束を差し出す。花束をまとめるリボンの青が、テオドールの瞳を思い出させる。
「……これは?」
「テオドールから預かったのよ」
私は、差し出されたその花束をおずおずと受け取る。
「ピンクの……マーガレット……」
「それは、恋人に『ごめんなさい、愛しています』と伝えるときに贈る花よ」
「テオドールが……。私にごめんなさいって……」
「そうよ。ねえ、落ちついたらでいいから……もうちょっと二人でゆっくり話し合ったらどう?」
そう言って、ミシェルは私を宥めるように頭を撫でてくれる。
「……そうね。私もちょっと勢いで反応しすぎたかも知れない……」
「そうそう。いい子ね」
「やだ。いい子だなんて」
ミシェルに子供扱いされたようで、思わず私は笑って否定する。
すると、ミシェルがほっとしたように笑った。
「そうそう。そうやって笑っていて。私は、笑顔のあなたが好きだわ」
「ありがとう、ミシェル」
彼女のおかげで、ようやく私は笑顔を取り戻せた。
「じゃあ、私は帰るわね。ちゃんと次に会うときまでには仲直りしておくのよ!」
にっこり笑ってから、ミシェルが部屋をあとにする。
そんな彼女を見送ってから、私は鏡台の引き出しを開ける。
──仲直りするなら。
あれを贈ろう。
私は、忙しい合間を縫って作ったそれを手にするのだった。
◆
「くそっ!」
私は自分の執務室に戻ってから、手に持っていた書簡を執務机に投げつけた。
──リリアーヌを傷つけた。泣かせた。
そのことに自責の念を感じて、イライラしていた。
「おいおい、テオドール。珍しく乱暴だな」
弟のアンリだ。ちょうど私の部屋にいたらしい。驚いた様子で私を見ていた。
「……例の変換要求の件だよ」
「ああ……彼女には話したのか?」
返還要求の件は、書簡が国──父上に届き、私とアンリと共に確認したので、彼も内容は知っていた。
「話した。だけど、彼女は自分が疑われたと思ったらしい。……彼女を傷つけて、彼女に部屋を追い出されてきたよ」
私はそう告げると、唇を噛んだ。
疑ってはいなかった。
けれど、『婚約者』と書かれた文字を読んで……。
──嫉妬していたのかも知れない。焦りがあったのかも知れない。
かっとなった。
弱さと嫉妬心とわずかな猜疑心と。
そんな、自分にも嫌気がさしていた。
「それでいらついていたのか。彼女はただの聖女ってだけじゃない。希有な聖女だ。……普通は、手放す方がおかしい。なにか間違いがあったとかで、いまさら政治的な思惑が絡んできたんじゃないのか? それなら、今更返せと言ってくるのにも理由はつく」
「確か、王太子に追放されたって聞いている……。婚約も彼女から破棄したって聞いてる」
「テオドール、よく聞け。王太子は王じゃない。ただの王の息子。王があってこそ後継者でいられるだけの駒だ。本来なら、王命で決まった婚約者の婚約破棄を認めたり、希有な聖女を追い出したりするような権力は持っていないはずだぞ?」
私はリリアーヌに聞かされた身の上話を思い出す。そして、書簡が、相手国の王太子からではなく国王からだったことも同時に。
「……ああ、そうか。もしかしたら、彼女の追放撃は、王の許可なく王太子が勝手にやった、愚行なのかも知れない……。そして、彼女は能力に開花していなかったから……王太子は彼女の本当の力を知らなかった可能性がある」
「そう考えるのが妥当かも知れないな」
私は、うん、と頷いた。
「今日は止めておけ。ほとぼりが冷めたら……。そうだな、明日にでも彼女に謝りにいきつつ、もう一度きちんと話しあえよ? 早すぎてもダメだが、長引かせても尾を引く」
「ああ、わかった。ありがとう、アンリ」
私はアンリとの話が済むと、私は色とりどりの花が咲いている庭園に来た。色とりどりの花々を見ると、屈託なく笑う彼女の笑顔が思い浮かんだ。すぐに思いついて、側で仕事をしていた庭師から庭ばさみを借り受ける。
そして、そのはさみを手に彼女のことを考える。
──彼女に謝ろう。
謝罪の意味を持つ花は……。
迷っていると、ひょこっとミシェルが姿を現わした。
「アンリに言われたの。テオドールがリリアーヌ姉様に謝りたがっているって。だから、私の出番かなぁと思ったのよね」
彼女がにっこり笑ってウインクする。
「ありがとう。……大当たりだ。会うのは明日にするにしても、今日のうちに何かしらの形で謝っておきたくて……それで、花を選んでいた。花を贈るくらいならいいかと思って」
「あら、じゃあ私の出番ね!」
きょろきょろと庭園の中に咲く花を見て回る。
「花言葉で謝るのはいい手よね~」
まるでこちらの思惑を見透かしたかのように、楽しそうに花選びを始める。
「謝罪謝罪……あ。マーガレットが咲いているわ! 色とりどりね」
「マーガレットが、そういう意味をもつのか?」
駆けていくミシェルを追いかけながら問いかける。
「そうよ。そうねえ……何色かあるけれど……」
そう言って、プチンと一輪手折って、私に差し出す。ピンクのマーガレットだ。
「恋人に贈るにはこの色が一番。『謝罪』に加えて『真実の愛』って意味を持つから。だから『ごめんなさい、愛しています』って伝えるのにちょうどいいわ」
手折られたピンクのマーガレットを受け取って、私は口角が上がるのを感じる。
「ありがとう、ミシェル。助かったよ……もし叶うなら、君から花束を渡してもらえないか? ……もし彼女が落ち込んでいたら、慰めてやって欲しいんだ」
「仕方ないわね~。貸しよ、貸し!」
冗談ぽく笑って答えて、ミシェルがウインクして返す。
「今度、アンリに聞いて、君が好みそうなものを贈るよ」
「やった!」
そうして、私は自ら手折った花を元に、私の瞳の色の青のリボンで花束にまとめ、彼女にミシェル伝いに謝罪の花束を贈ったのだった。
◆
そうして翌日。
マリアに手伝ってもらって、ちょうど身支度が終わったころ、コンコン、と私の部屋のドアが鳴った。
「テオドールだ。今話せるかい?」
ノックの主は彼だった。
「テオドール……」
私はしばし逡巡する。昨日喧嘩してしまったから。
「どうしよう……」
呟く私に、マリアが私の肩を軽く叩く。そして、彼女の手で花瓶に活けてくれた花──ピンクのマーガレットを指さす。
「大丈夫ですよ」
「……そうね」
私は、彼女に背中を押されるようにして、扉の向こうに返事をした。
「大丈夫です。入ってください」
その言葉に促されて入ってくるテオドール。手には、今度はカンパニュラの花束を手にしている。
「あれも、謝罪の意味を持つお花ですね」
こっそりと私の耳元に囁くマリア。彼女を見ると、にっこりと微笑んでいる。
「いらっしゃいませ、テオドール様。……お花、リリアーヌ様への贈り物でしたら、活けてきましょうか?」
気を配って、二人きりにしようとしてくれているのだろうか。マリアが、テオドールに話しかけた。
「ああ、頼むよ。……二人だけで話がしたいから、しばらく二人きりにしてくれないか?」
「承知しました」
すると、テオドールが一度私に花束を渡す。私はその花に顔を埋めて香りを嗅いでから、マリアに花束を手渡す。その花束を受け取ったマリアは、一礼をすると、テオドールと入れ違いに部屋を後にしたのだった。
「リリアーヌ。昨日は済まなかった」
「こちらこそ、きちんと話を聞けなくてごめんなさい」
私たちは、互いに求め合うように腕を伸ばして、そして抱きしめ合う。
「君の言うことを疑っていた訳ではないんだ。……誤解をさせたようで、ごめん」
「いいのよ。……私も、疑われたんじゃないかって……婚約者がいながら、あなたの手を取ったと……いい加減な女と思われたんじゃないかと、不安になって、混乱してしまって……」
私は、自分でそう言って怖くなり、ぎゅっと彼にしがみつく。彼は、それを受けとめるかのようにさらに強く抱きしめてくれた。
「君のことをそんなふうには思っていないよ。……もう一度、事情をゆっくり話してくれないか?」
「……はい。あの、その証に、渡したいものがあるの……」
そう言うと、テオドールは私を抱きしめていた腕を解く。
「渡したいものって、なんだろう……?」
私は一度鏡台の前まで行って、その引き出しから例のものを取り出してくる。それから彼の元に戻った。
そして、首を捻って待つテオドールの首に腕を伸ばして、私はそれを彼の首に巻き付ける。
青地の絹に銀のユリの紋様の刺繍を施したクラバットだ。それを、丁寧に仲直りの気持ちと愛情を込めて結わいていく。
「これは……」
テオドールが、クラバットに散りばめられた銀色のユリの紋様を手に取って眺める。
「あなたの瞳の色と髪の色。……そして、私たちの繋がりの証のユリの紋様を刺繍したのよ」
「君が縫ったのかい?」
「ええ、あなたを想って」
そう答えると、クラバットを結わえ終わるやいなや、私を再び強く抱きしめる。
「嬉しいよ、リリアーヌ! 生涯大切にする……!」
「生涯だなんて大げさよ、テオドール。ちょっと、ちょっと。ちゃんと話をしないと……」
そう窘めると彼は渋々といった様子で抱擁を解く。それから私たちはソファに並んで座るのだった。そして、私たちは本題に入った。
「まず、君は婚約破棄をしているんだよね?」
「ええ。私は王太子の婚約者でした。でも、王太子がイザベルという別の聖女を婚約者にすると言っていたので……婚約破棄であっていると思います。……私には妾になれと言ってきたのがあんまりだと思って、『婚約破棄』って言ったんです……」
「それは酷いね」
テオドールが、私の手をぎゅっと握ってくれた。
「……でも、王太子の婚約なんて、王命で決まったことだよね?」
「ええ。でもちょうど、その頃は王と教皇が、神事のために城から離れて不在だったんです。ですから、その日も国事に関する権限は王太子に委譲されていました」
「なるほど。……王権は委譲されていた。その委譲された王太子が婚約破棄を認めた。その上森の中にうち捨てた……となると、その婚約破棄は委譲とはいえ、正式なものになるね」
「正式なもの」という理解を、他でもないテオドール自身から得られて、私は嬉しくなる。
「そうです! 私はもう、あの国の王太子の婚約者ではありません! 私が好きなのは……テオドール、あなただけ!」
「リリアーヌ!」
私たちは、どちらからともなく、口づけを交わす。
「そうだ……」
「……ん? どうしたんだい?」
私は口づけを終えてから思い出す。
「私が、大聖女の可能性を持つ聖女だっていうことは内密にされていました。もしかしたら王や教皇は今になっても、まだ王太子には告げていなかったのかも知れません」
「そうすると、つじつまが合うね」
「そうですか?」
私が首を傾げると、テオドールが頷いた。
「ああ。大聖女の可能性がある君をないがしろにした。そして、勝手に婚約破棄を決めて君を追い出した。だけど今更になって、王の名前で君の返還要求をしてきた……。うん、話が繋がってきたよ」
「信じてくれる?」
「……ああ」
テオドールは、指と指を絡めて手を繋ぎ直し、ぎゅっと握りしめてくれる。そして、私の唇に優しくキスを落とした。
「君を信じるよ、リリアーヌ。ならば即刻父上に報告して、返還要求に『否』と返していただこう」
「ありがとう、テオドール。愛しているわ!」
「私こそだ、リリアーヌ。番である君を……いや、一人の人として最愛の君を、今更手放せるはずもない。ああ、愛しているよ。私の最愛」
再び彼から触れるだけだけれど情熱的なキスを受けて、私は多幸感でとろんとしてしまう。キスが終わると、私は彼の胸の中にくったりとして身体を預けていた。
「君は私が護る。……だから安心していて欲しい」
「ありがとう。愛しているわ、テオドール」
その後、テオドールは私から聞き取ったことを皇帝陛下に報告した。その後、皇帝陛下から『返還拒否』の返答を返してくれたのだそうだ。
私の身柄は、その後も皇太子たるテオドールの婚約者として扱われたのだった。