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3/7

ー3ー



 始業式に出て気がつくと、さっき背負投げされたヤンキーは1年生で、スカートを履いた彼も1年生で、そして僕等は全員同じクラスなことを知った。そして、僕はそんな二人を両側に感じながら、その真ん中の席で居心地悪そうに椅子に座っていた。

「(…こんな事、ある?」

 口には出さないものの、二人がいきなり喧嘩したりしない事を祈るばかりだ。

 始業式が終わると、この日は授業がなく寮を案内された。これから、洗濯も自分でやらなくてはならないから大変だ。実家にいた頃は、全部母親に任せっきりだったし、ちゃんと自分で出来るのか不安になりながらも、自分の寮にたどり着いた。

 まだ、同室の人は到着していないみたいだ。僕は、さっそく自分の家から持ってきた荷物を開ける作業に取り掛かった。

 段ボールを全部開けたくらいの頃に同室の人がやってきた。

「こんにちは!」

 振り返るとそこには、学ランにスカートの例の彼が立っていた。

「これからよろしくね!一緒のクラスだったよね?」

「あ、うん。よろしく僕は、白井シライ 陽斗ハルトです」

 僕は立ち上がりながら、挨拶をした。

「ハルくんかぁーボクは和久田ワクダ 理央リオ。クーナって呼んでね♪」

 さっそくあだ名で呼ばれることにビックリしながらも相手が手を差し出してきたので握り返した。それにしても、あだ名?のクーナとは、一体どこをどう取ったら、そうなるんだ?中学時代から、使っているあだ名とかってことなのかな。

 それにしても、同室の人が朝の人になるなんて思ってもいなかった。

「あの、一緒の寮の人が同じジェンダーでよかった…僕、寮生活すごく不安だったから」

 これから3年間、ジェンダーである自分の異質さが周りからどう思われるのかを、僕はすごく不安に思っていたのだが、同じ部屋の人が自分と同じような人なら、なんとかやっていけるかもしれない。

「え?…………ボクはジェンダーでは、ないよ?」

「え?!」

 相手の返答にビックリしたのは、僕の方だった。

「え?え?え……だって、スカート?え?」

「ああ、これは似合うからってだけだよ。普段から女装はしてるんだけど、趣味みたいなもんかな。別に心が女子なわけではないよ」

 僕は、絶句した。出来れば、自分がジェンダーであることは隠しておきたかったからだ。相手も同じだと思ったから、思わず口にしてしまったんだけど、それは僕の勘違いだったみたいだ。黙っている僕に、クーナは心配そうな表情でこちらを伺ってきた。

「…ごめんね?勘違いさせちゃったよね…?」

「ううん。勝手に決めつけたのは僕の方だから………」

 僕は思わず下を向いてしまった。

「いまの聞かなかった事にするねっ」

 クーナが僕の気持ちを察するかのように笑顔を僕に向けた。だから、その言葉に僕は顔を上げた。

「え?」

「本当は知られたくなかったんじゃない?でも、なんで男子校に?」

「家族に…ジェンダー批判くらって…仕方なく」

 僕が小さな声でポツリポツリと喋りだした。

けれど、クーナは僕を否定しないでくれた。

「そっか。大変だったね。理解されない気持ち分かる気がするよ。ボクも見た目でキモがられがちだからさ」

「クーナはキモくなんてないよ!かわいいし…むしろ、キモいのは僕の思想のほう……」

 自分も少しくらい見た目が可愛かったならよかったのに…と、ないものねだりするばかりで、クーナのように自分発進する勇気がないのだから。

「ありがとう。ハルくんだってキモくないよ?考え方は人それぞれでいいと思うよ?」

 自分を貫いているクーナが言うと説得力のある言葉だなって思う。

「…あの、こんな僕でも同室で大丈夫?」

「もちろん!」

 クーナの笑顔に僕は少し救われたような気持ちになった。

 


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