ー14ー
「べつの場所いこー?」
可愛い小物に早々に飽きてしまったのか、アイリさんが提案して雑貨屋さんに行くことになった。
ずっと僕がクーナの横に居すぎていると思われているのか、雑貨屋さんに入るとアイリさんに「ちょっと…」と呼ばれて、僕とアイリさんの2人になってしまった。
同じ店の中の遠くのほうで、シンゴさんとクーナが笑い合っているのが見える。
「お前さ、昔こーゆーの好きじゃなかった?」
「確かにーぃ。あははw」
という声が聞こえている。
「あの2人、アナタにはどう見える?」
「はい?どう、とは?」
シンゴさんとクーナを遠目に見ながら、アイリさんが僕に問いかける。
「他人から見たとき、付き合ってるように見えるのかなって」
「質問の意図が…ちょっと」
突然、なにを聞かれているのか分からなくて本気で戸惑った。
「女の子みたいなリオと男子のシンゴ。でも、私達はどちらも男子なとこを知っているわけじゃない?でも、他人から見たら恋人に見えるのかなって事が聞きたくて」
「えっと…僕の主観は関係ないってことですよね?だとするなら、普通に男友達じゃないですか?」
「どうして?あんなに見た目が女の子なのに?」
今度は、アイリさんのほうから質問される。
「クーナは、女子に見えるかもしれないけど、声だって低いし、なんなら話し方だって男子そのものだから、他人から見ても男子だなって感じると思いますけど」
クーナが、女装は趣味だと言っていたように、べつにクーナ自身は女の子になりたいわけではない。だから、喋り方とか○○じゃなーい?とか、○○よね~と言った女子が話しそうな言い方をしたりはしない。
「…………私、男子なリオが好きだったのに」
アイリさんが、ボソッと呟いた。
「(好きっていうのは、幼馴染として?それとも、恋愛感情として?ってこと??なのかな」
「ある日、いきなりあんなになっちゃったんだよね…どうにかアナタが何か言って元のリオに戻せない?」
「え…」
やっぱりクーナから聞いていた通り、アイリさんはクーナの趣味を全否定なようだ。
どんな格好をしていても、クーナはクーナなのに…。シンゴさんのほうは、昔と変わってしまっても親友のままって感じなのに、アイリさんはあからさまな拒絶の色を見せていた。
もしかして、それが言いたくて僕を呼び出したんだろうか。
「………アイリさんは、髪の毛伸ばしたことはありますか?」
「え?小学校の頃は長かったけど?」
いきなりどうしたの?とでも言いたいよなキョトンとした顔をされる。
「じゃーもし、あの頃のほうが良かったのにって言われたら…嬉しいですか?」
僕は少し残酷な聞きた方をしてみた。
「え………」
「いまのショートカットを気に入っているアイリさんに向かって、昔の頃を懐かしむ人がいて、『ロングヘアの方が良かったから、また髪の毛伸ばせばいいのに』って言われたら、どうですか?」
「………。」
「もちろん、どちらのアイリさんも魅力的だと思います。アイリさんにとっての今は、色んな物事を経てこのショートカットに行き着いているわけですよね?」
「うん」
「でも、アイリさんの言い方だと、その色んな物事をまるで無駄だって言っているみたいじゃないですか?」
僕から例え話をされて、僕の言いたいことをなんとなく理解してくれたアイリさんは、少しだけ悲しそうな顔をした。
「私は……別にそんなつもりじゃ…」
「人には今日までにいろんな出来事があったと思うんです。それは、皆同じで……きっとクーナにとって、女装をするきっかけがなんだったのかは、僕にはわかりません。でも、今のクーナにとって無くてはならないものを否定してほしくはないんです…ごめんなさい。アイリさんを責めているわけではないんです。…僕がクーナに自分らしく生きてほしいってだけなんです」
僕は女装をするクーナから勇気をもらっているから、「あれを止めさせて」という幼馴染さんとは、真っ向から真逆の気持ちを持っているんだとは思う。
「アイリさんの気持ちに寄り添うことが出来なくて…すいません」
僕は、アイリさんに謝った。
それは僕が、親に自分の生き方を「普通じゃない」って否定されて苦しかったから、自分は出来るだけ他人の生き方に対して否定しないであげたいって思う。
でも、昔のクーナを知っている人からすると、複雑なのかもしれない。
そういう意味では、僕の親へのカミングアウトは、親からしたら同じようにビックリさせた出来事なのかもしれなかった。




