ー11ー
僕は、クーナの腕を掴んだまま廊下を走った。
「ハルくん!どこいくの?!」
どこへ行きたいわけでもなく、ズンズンと歩いてきてしまった。
なんとなく、教室にいたくなくて、誰かは分からないけれど、あのまま教室にいたらクーナが傷つけられてしまいそうで嫌だった。
少し静かな階段の踊り場でしゃがみ込んだ。
「どうかしたの?」
「あの人達だれ?」
なんとなく勝手な事をしている事は分かっていたから、クーナの顔を見ないように話しを始めた。
「あれが前に話をしていた幼馴染だよ」
「なんか、すごい感じ悪くない?」
「しょうがないよ。男子なのにメイド服とか着てるのがキモかったんじゃない?いつもあんな感じなんだよね」
たははっとクーナが苦笑してみせる。いまは、そんなに苦しそうに笑わないで欲しい。
「僕は、クーナが誰かに文句言われるの嫌だ………」
「どうしたの?今日」
なんだか、自分が泣きそうになってしまった。
クーナは、僕にとっての理想で…。クーナを否定されると、自分も社会から白い目で見られる思想の持ち主だって煙たがられているような気分になる。
「皆、嫌々クーナの出し物に付き合ってるとかじゃないから!」
「でも、ボク好みに好き勝手しすぎてるなーとは思ってたよ?」
今回のクラス店は、個人のそれぞれの性格とか良さがクーナによって作り出されている。
「僕は、高校生活が自分だけで精一杯で…今回のクラス店でクーナが、いろんな人に指示を出しているのを見てたら、クーナは普段の皆のことを良く見てるんだなぁって思って、まるでプロデューサーみたいだって思った」
「そんな大げさだよ」
謙遜するクーナに僕は首を振った。
「なのに、あの人達は入ってきて、すぐに文句ばっかり………クーナの幼馴染さんだけど、ちょっとヒドイなって…思っちゃって」
「だから、教室からひっぱり出してくれたの?」
僕は、クーナの問いに静かに頷いた。
「大丈夫だよ。ボク、そんなに傷ついてないよ?」
「本当に?」
「うん。ハルくんみたいな友達が出来て、この学校に来られてよかったって思ってる」
僕の取り越し苦労かもしれないけれど、クーナがそこまで悲しんではいないのならよかった。
「さぁ、戻ろう?」
「あ、うん」
クーナが立ち上がると、ボクに手を差し出してくれた。
傷ついたかも?なんて思ったのは、僕の勘違いだったのかもしれない。
僕が立ち上がるとクーナがひとこと、僕の目を見て言った。
「でも、ありがとう」
なにに感謝されたのかも分からないけれど、クーナの気持ちを聞けてよかった。
「おーい!どこ行ってたんだよっ」
「あれ?なんで?」
教室に戻ってくると、手伝わない!と言っていたヤンキーくんが戻ってきていた。
なんだか、教室の中がさっきよりも全然人が増えてしまっていた。
「お前のネイルの順番待ちエグイぞ?」
「え?!なんで??」
「俺様の呼び込みに感謝するんだな!」
「え?ありがとう!ゴメン!」
たった10分くらいクラスを離れていただけなのに、クーナのネイルに6人の人が並んでしまっていた。
クーナは急いで席に着く。
「さっき、妹来てたらしくてよぉ」
めずらしくヤンキーくんに話しかけられた。
「一番初めのプリクゥアの子?」
「おぉ、それ。なんか、めちゃ喜んでたわ」
ヤンキーくんが恥ずかしそうに目をそらした。
「そしたら、なんかヤル気でちゃったらしいよw」
ヤンキーくんの隣の友達が、僕に耳打ちしてくれた。
ヤンキーくんって意外と家族思いな一面があるのかな。文化祭って、クラスの人の知らない部分を知ることが出来て面白いかもって思った。




