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「お姉さん、可愛いですねっ!」
「え?」
そこへ、小学生の女の子がお母さんと一緒にやってきた。どうやら、クーナを女の子だと思ったみたいだ。
「ネイル無料で出来るけどやる?」
クーナが女の子の目線にしゃがみ込み問いかけると、女の子も笑顔になって答えてくれた。
「やるぅ!!」
教室に入ってくると、クーナの向かいに座って、女子トークが始まった。
「あのね!私ね!プリクゥアのリボンちゃんみたいになりたくてねっ」
女の子が自分の好きな物を説明してくれている。クーナは、プリクゥアとか分かるのかな…。
「うんうん。じゃあ、リボンちゃんになれるようにするね」
クーナが小学生の小さな手に、赤色とピンクとラメでキラキラにしていく。
僕も夏休みにやってもらった事を思い出す。マニキュアって魔法みたいだなって思う。
しばらくすると、女の子が大喜びしているみたいだ。
「ママぁ!見てみて!!」
「よかったら、お母さんこっちでお子さんと一緒に写真どうですかー?」
写真部の男子が、美術部のクラスメイトが作った背景スポットに誘導する。
「ありがとうございます」
僕達のクラス店にやってきた親子が、写真を手にニコニコで帰っていった。
「タカシーこれ、拡散してぇ」
クーナは、さっきの小学生のネイルの手元を写した画像をSNSに拡散しているみたいだ。どうやら、SNS広報担当の生徒もいるらしい。
「ボクのSNSでも綿菓子と飲み物拡散しちゃおう♫」
メインとなるクーナのネイル以外の食べ物もわりと人が並んでいるみたいだ。
僕はというと、クーナが作ったピアスやネイルという雑貨を販売する店員になっているのだが、クラス店という形でなんの違和感なく可愛い物に触れていられる時間が幸せに感じていた。
そんな所へ、クーナの知り合いがやってきたみたいだ。
「ちょっと、男子校に行ったくせに、まだ女装なんてしてるの?」
「やぁ、久しぶり」
それは、同い年くらいの男女だった。この人達がクーナの幼馴染さんなのかな。
「うわーリオのやりたい事させられてる皆も可哀想じゃん」
幼馴染の女の子が周りを見渡してそう言った。僕はなんだかカチンときてしまって、手近にあったヘアピンを掴むと、その女の子の所へ行った。
「可哀想なんかじゃないですよ。皆、楽しんでやってるんです。コレ、アナタに似合いそうなので、どうぞ」
「え…」
幼馴染の女の子に無理やり渡すと、僕はクーナの手を掴んで教室から走り出した。




