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※BLのつもりはありません。恋愛感情ではなく友情物語です。
僕は、生まれたときは男子という性で生まれてきた。
けれど、それは書面上の事であって、自分の中には違和感しかなかった。違和感と言ってもそれを違和感と感じたのはいつだっただろう。
小学生、中学生と周りにいる男子の下世話な下ネタにはついていけなかったし、べつに戦隊モノや特撮にドキドキワクワクした事はなかったからだろうか。
どちらかというと、僕の家は三世代で暮らしていて、祖母が「陽斗〈ハルト〉くんは、本当に男の子らしくいられないのね」という口癖を聞く事に嫌気がさしていたからかもしれない。
とは言うもののそんな祖母も僕に「男らしく生きなさい!」と強要したわけではなかった。
今の子供ってこうなのかな?というくらいなもので、くどくどと文句を言われた事はなかった。自分の子供ではないからという事もあったんだと思う。
テレビやネットを見ていると、僕と同じような少し周りに違和感を感じている人達の苦悩は、この違和感を友達や家族にいつ伝えたらいいんだろう?と中学生時代に思うらしい。
もちろん僕も例外ではないのだが、中学3年生の夏に母にカミングアウトすると、血相を変えた母は僕を全寮制の男子校へと押し込むことを勝手に決めてしまった。周りに男の子しかいなかったら、自分も少しは男子な事を思い出すだろう。と、考えたかららしい。
というわけで、僕の高校生活は理解しがたい男子の巣窟へと送られた所から始まるのである。
四月になり高校生になった僕は、山の上の方にある全寮制の男子校へと通うことになった。
あまり勉強ができる方ではなかったので、学力としては県の中でも下の方だと思う。
周りを見渡すとガラの悪い集団がそこここに見受けられる。だからなのかは分からないけれど、この高校の登校時の制服はある程度の自由度を持っていた。
いわゆるヤンキーと言われる連中が、学ランを短くしたり、刺繍を入れたりするのは昔からありがちなので、そこまで驚くほどではないと思う。
今年の新入生として、そのヤンキーよりもひと際異彩を放っていたのは、男子校であるにもかかわらず腰まである黒髪をなびかせながら、上は学ランなのに下にセーラーのスカートをはいた生徒が僕の前を歩いていたことだろう。
その外見は、ほぼほぼ小柄な女子にしか見えない。けれど、ここは男子校なのだから性別は男子なのだろう。
いったいどんな顔をしているんだろう?という疑問がわいたけれど、それは柄の悪い連中からしても同じみたいで、その子はすぐに足止めをくらっていた。